愛知県弁護士会トップページ> 愛知県弁護士会とは > 消費者委員会 > 消費者問題速報

消費者問題速報 VOL.113 (2013年5月)

1 貸付債権がアエルからNYメロンに信託譲渡された事案につき、NYメロンが過払金の返還義務を負うことを認めた判決(福岡地裁平成25年4月26日判決)

 本判決は、アエルからニューヨークメロン信託銀行(旧JPモルガン信託銀行)へ貸付債権が信託譲渡され、さらにNYメロンからNCキャピタルに貸付債権が譲渡された事案において、NYメロンが信託譲渡された貸金債権につきアエル等の回収受託者を通じて弁済を受けたことで、信託財産は、借主の完済後の支払という損失によって不当利得を生じたとしたうえで、信託法は、受託者を、信託財産上の債務につき負担のない連帯債務者類似の地位に置くものであるとの法解釈に基づき、受託者であるNYメロンは、信託財産上の不当利得につき、自己の固有財産をもって返還する義務を負うことを認め、NYメロンに過払金の返還を命じました。(同旨の判決として、大阪地裁平成25年3月29日判決)

 【名古屋消費者信用問題研究会HP

2 借主側に代理人弁護士がついた訴外和解を無効とした判決(名古屋地裁平成25年3月28日判決:控訴審)

 本判決は、借主が平成14年2月、弁護士を代理人としてプロミスとの間で行った訴外和解(30万円の支払義務の確認、その分割払いの合意、当事者間にその余の債権債務がないことを確認する清算合意を含むもの)について、和解当時にプロミスが取引履歴を開示したことを示す証拠がなく、利息制限法所定の制限利息で引き直し計算した結果と和解の内容の隔たりが大きいことなどから、この訴外和解では、取引履歴が開示されないまま、弁護士はプロミスから告げられた貸付残高に基づいて和解をした可能性が高く、取引状況を正しく認識したうえで合意したとは認められないとして、訴外和解を無効と判断し、清算合意にかかわらず過払金の返還を命じました。

 【名古屋消費者信用問題研究会HP

3 日本保証(旧武富士)が貸金訴訟を提訴した事案につき、旧武富士の本店所在地である東京簡裁には管轄がないとして、移送を認めた判決(東京高裁平成25年2月8日決定)

 本判決は、借主が旧武富士と締結した基本契約書上、管轄裁判所につき「会員の住所地」「武富士の本店所在地」と記載されているところ、これは基本契約締結当時ではなく、訴え提起時における「会員の住所地」及び「武富士の本店所在地」を管轄する裁判所を管轄裁判所とする合意とみるのが当事者の合理的意思に沿うとし、本件訴訟の管轄は、武富士から会社分割により貸主たる地位を承継した日本保証の訴え提起時における本店所在地である大阪簡裁か、訴え提起時の借主の住所地である水沢簡裁であると判断しました。そのうえで、大阪の日本保証の本店には本件取引の関係書類もなく担当者もいないことなどの事情から、水沢簡裁への移送を認めました。(同旨の判決として、訴え提起時における日本保証の本店所在地かつ借主の住所地である大阪簡裁への移送を認めた東京地裁平成24年12月28日決定)

 【名古屋消費者信用問題研究会HP

4 継続的な金銭消費貸借取引に係る基本契約が過払金充当合意を含む場合には、特段の事情がない限り、まず過払金について発生した民法704条前段所定の利息を新たな借入金債務に充当し、次いで過払金を新たな借入金債務の残額に充当すべきであるとした判決(最高裁第一小法廷平成25年4月11日判決)

 本判決は、原審(大阪高裁平成22年7月23日判決)が、過払金について法定利息が発生した場合に、この法定利息をその後に発生する新たな借入金債務に充当することはできないと判断したのに対し、過払金充当合意を含む基本契約に基づく継続的な金銭消費貸借取引においては、過払金について発生した法定利息を過払金とは別途清算するというのが当事者の合理的意思解釈であるとは解し難いとして、過払金について発生した法定利息の充当につき別段の合意があると評価できるような特段の事情がない限り、まずは当該法定利息を新たな借入金債務に充当し、次いで過払金を新たな借入金債務の残額に充当すべきものと解するのが相当であるとの判断を示しました。

 【最高裁判所HP

5 あかつき証券(旧黒川木徳証券)の日経225オプション取引の事案について、適合性原則違反、説明義務違反を肯定した判決(大阪地裁平成25年4月22日判決)

 判決は、被告が日経平均株価指数オプション取引の売り取引を行っていたところ、東日本大震災後の株価下落による多額の決済損が生じ、原告証券会社から立替金を請求されたという事案において、まず適合性原則違反の点につき、株価指数オプション取引の特性について、その仕組みを理解するのが必ずしも容易とはいえないうえ、特にオプションの売り取引は、利益がプレミアムの範囲に限定される一方で損失は無限大または相当に大きなものとなる可能性があり、さらに取引単位につき1000倍のレバレッジがかかっていること、プット・オプションの取引売買代金額及びこの内訳に照らし、主にプロの機関投資家を対象とするゼロサム取引であることからすると、極めてリスクの高い取引類型であると指摘し、被告は金融商品取引の知識も投資経験もなく、小遣い稼ぎがしたいという程度の投資意向しかなく、余裕資金もなかったにもかかわらず、上記のような危険性の高い取引に勧誘したことについて適合性原則から著しく逸脱するものであったと認めました。

 また、説明義務違反については、投資の適否について適格に判断し、自己責任で取引を行うために必要な情報である当該金融商品の仕組みやリスク等について、当該顧客がそれらを具体的に理解することができる程度の説明を、当該顧客の投資経験、知識、理解力に応じて行う義務を負うと述べたうえで、本件では、被告の上記のような属性からすれば、損失が無限大になりうるといった程度の説明では足りず、具体的な数値を用いて損益をシミュレーションするなどの方法を採るべき義務があったとして、説明義務違反も認めました。

 株価指数オプションの売り取引における適合性原則違反について判断を示した最高裁平成17年7月14日判決を前提に、適合性原則違反を認めた判決として参考になるものと思われます。

 【全国証券問題研究会HP