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消費者問題速報 VOL.112 (2013年4月)

1 第1取引と第2取引の間に5年3ヶ月の空白期間が存在する場合に被告の分断の主張を退けた判決(福岡高裁平成25年3月22日判決)

 福岡高等裁判所第2民事部は、オリコが第1取引に基づく過払い金請求について、消滅時効の援用を主張したのに対し、基本合意に基づく継続的な金銭消費貸借取引について、取引継続中は、過払金充当合意が法律上の障害となり、特段の事情が無い限り取引終了時から消滅時効が進行するとの一般論を示し、本件では第1取引の債務の完済から第2取引の開始まで約5年3ヶ月の中断期間があるが、第1取引完済の時点で、基本契約が解約されず、カードの失効手続も取られないまま、毎年年会費を定期的に支払い、いつでも新たな借入が可能な状態であったこと、第二取引開始時に新たな基本契約が締結されていないことからすれば、第1取引の完済後も新たな債務の発生が見込められなくなったと言えず、継続的取引も終了していないとして、分断の主張を退けた。

 【名古屋消費者信用問題研究会HP

2 商品CFD取引の違法性を認定した判決(東京地裁平成25年3月19日民事第25部判決)

 東京地裁は、本件CFD取引について、顧客の利益算定の基礎となる、ロンドン渡しの金の現物価格も、ドルの為替レートも、被告会社と顧客がその意思によって自由に支配できないものであることを根拠に、本件取引が賭博に該当し、公序良俗に反すると判断した。さらに被告会社が、顧客から集めた取引証拠金についてどのように運用したかを明らかにしておらず、被告が自認する預託金の残高すら返還していないことからすれば、本件CFD取引の実体があったとは容易に認めがたく、実体のない取引に顧客を勧誘することが詐欺に当たるとも判示している。

 東京地裁は、本件CFD取引が相対取引であり、顧客と被告会社が常に利益相反関係にあること、差金決済指標となるロンドン渡しの金言現物価格や、ドルの為替レートも被告会社が任意に設定できること、被告会社がリスクヘッジ措置も講じておらず、資金的な裏付けもないことから、本件CFD取引は顧客にとって極めて大きな危険を伴う取引であり、勧誘の際に取引の内容を十分に説明すべきであったとし、そのような説明を欠く本件取引は公序良俗違反や詐欺に該当するか否かにかかわらず違法なものであると判示した。

 

3 商品先物取引について内部統制システムを適切に構築・運用することを怠ったとして、役員の損害賠償責任を肯定した判例(名古屋高裁平成25年3月15日民事第3部判決)

 名古屋高裁は、控訴人会社の指導・助言義務違反を認め、控訴人会社役員の責任について、一方で法令遵守体制や紛議防止のための諸施策が実施され、教育管理体制及び内部統制システムの構築が形式上なされていたとしながらも、他方、控訴人会社が長年に渡り顧客との紛争を多数抱え、適合性原則違反等を認定する判決が多数出ており、行政当局からも過怠金の支払、受託業務停止処分の制裁を受けているにも関わらず、管理部の責任者が判決に不服がある場合には担当者にそれほどの指導はしておらず、これまで控訴人会社役員についても違法行為をしたとして繰り返し訴訟が提起されているなどの事情を総合的に考慮すれば、本件取引当時、被控訴人会社役員らは、従業員の適合性原則違反等の違法行為により委託者に損害を与える可能性を認識しながら、法令遵守、社員の違法行為の抑止、再発の防止等のための実効的な方策をとらず、内部統制システムを適切に構築・運用することを怠ったとして、会社法429条1個に基づく損害賠償責任を肯定した。

 

4 CO2排出権取引の違法性を肯定し、取引の管理担当者に対しても損害賠償責任を認めた判決(東京高裁平成25年4月11日第24民事部判決)

 東京高裁は、本件CO2排出権取引が顧客と控訴人会社との相対取引であり、顧客と控訴人会社の間で利害が対立し、しかも決済指標である為替レートや約定価格を控訴人会社が任意に設定するというものであり、その仕組を顧客に十分に説明し、かつ理解力、経験、財政的裏付けなど取引にふさわしい顧客との間での取引でない限り違法性を帯びるとし、リスク説明を欠き、被控訴人の意思に反し無断売買を行っていたなどの事情の下では本件取引は全体として違法性が高いものであるとして、不法行為責任を認めた。

 また、東京高裁は、本件取引について、控訴人会社の本社顧客サービス室の肩書を持ち、顧客からの苦情処理に当たっていた管理担当者についても、会社ぐるみで組織的に敢行されていた顧客からの金員領得システムに組み込まれていたとして、損害賠償責任を肯定した。

 

5 改正消費者安全法完全施行(平成25年4月1日)

 消費者安全法は、消費者庁の設置にともない制定された法律であり、消費者被害、消費者事故等に関する情報を集約し、消費者被害の発生又は拡大の防止のために必要な措置をとる事を目的としている。

 改正前は被害の防止を図るために実施しうる他の法律の規定に基づく措置がない場合(いわゆる「すき間事案」)で、且つ生命・身体等に関する重大事故等の場合に、内閣総理大臣が事業者に対し、必要な措置をとるように勧告し、正当な理由なく事業者が従わない場合は命令まで出来る。

 本改正により、内閣総理大臣が上記措置をとることが出来る事案に、消費者の財産上の利益を侵害することとなる不当な取引であって、事業者の示す内容・取引条件と実際のものが著しく異なる取引等が行われることによって、多数の消費者の財産に被害を生じさせ、又は生じさせる恐れのある事態(多数消費者財産被害事態)が追加された。

 同法による勧告する内容としては、取引の停止の他、今後同様の行為を行わない、勧誘に用いたパンフレットの破棄などが想定されている。

 参考:消費者庁HP「消費者安全法の解釈に関する考え方」

 http://www.caa.go.jp/safety/pdf/090901safety_7.pdf