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消費者問題速報 VOL.111 (2013年3月)

1 旧武富士からの借入れについて、旧武富士が貸金債務の時効消滅の中断を主張したのに対し、消滅時効の援用を認めた判決(浜松簡判平成25年1月17日)

 本判決は、旧武富士からの借入債務について、取引履歴には借主の債務の支払いが記載されているが、借主の当時の状況等からすると債務の支払いの事実を認めることはできず、時効は中断していないと判断しました。

 また、時効完成を目論んで、債権者に自分の住所を隠し続けていたとしても、直ちに消滅時効の援用が信義則に反するとまでは認定できないとしました。

 【名古屋消費者信用問題研究会HP

2 アイフルに対する過払金の訴訟外和解につき、詐欺取消を認めた判決(堺簡判平成25年1月23日)

 本判決は、原告が法律知識に乏しいことに乗じて、実際には50万5925円の過払金が発生しているのにもかかわらず、4万9000円が過払金であるかのように告げて原告を欺き、和解契約を成立させたとして、原告の詐欺取消を認めました。

 【名古屋消費者信用問題研究会HP

3 貸主の期限の利益の喪失の主張が信義則に反し認められないとされた判決(仙台高判平成24年12月7日)

 本判決は、借主が債務の支払いを遅滞した時点で期限の利益が喪失していると主張したのに対し、債務の支払いを遅滞した後も、借主が期限の利益を喪失しないものと誤信して分割金の弁済を継続しており、貸主から一括弁済を求められたことはないこと、貸主は分割金がどのように充当されたかを明らかにする18条書面を一度も交付せず、借主の誤信を解く行動もしていなかったこと等からすると、貸主が期限の利益の喪失を主張することは、貸主の従前の態度に相反する行動であることはもとより、借主の信頼を裏切るものであり、信義則に反し許されないとしました。

 【名古屋消費者信用問題研究会HP

4 精神疾患のある女性に対する為替連動債及び株価連動債(EB)の販売について、三菱UFJ証券に適合性原則違反及び説明義務違反を認めた判決(大阪地判平成25年2月15日)

 本判決は、為替連動債及び株価連動債について、いずれも証券取引の中でも極めてリスクの高い取引累計であり、その仕組みも複雑であることは否定できず、取引適合性の程度も相当に高度なものが要求されるところ、原告は本件取引につき投資判断をするだけの能力に乏しかったといえるとし、担当社員らが精神疾患に気が付かなかったことは信用できないことから、適合性原則違反を認めました。

 また、本件各債権は、仕組みが複雑であり、リスクが見えにくいといった難解な商品である上に、市場性や流通性に欠け、途中売却の可否や価格あるいは方法も明示されておらず不透明であるほか、原告が投資に関する知識や十分な理解力を有していないこと等からすると、原告の自己責任において自らの投資意向に沿うかどうかを見極めて適切な投資判断をすることができるよう、本件各債権の特徴やリスク等を十分に説明してその理解を得させるべき義務を負っていたといえるが、原告が即決に近い形で購入を承諾していること等からすると、仕組みや危険性等について顧客が具体的に理解できる程度の説明をしたとは認められないとして説明義務違反を認めました。

 【全国証券問題研究会HP

5 77歳の女性に対するノックイン型投資信託の販売について、中央三井信託銀行に適合性原則違反及び説明義務違反を認めた判決(大阪地判25年2月20日)

 本件ノックイン型投資信託は、期間を3年とし、日経平均株価の推移によっては早期償還され、早期償還されない場合には、償還日の日経平均株価によって償還金額が決まるという商品であるところ、商品の特性として、元本が保証されていないこと、元本が確保される場合にも利益に上限があること、解約申込日が限られており適時にリスクを回避する方途は大きく制限されていることからすると、購入者には、少なくとも、商品の特性を認識及び理解できるだけの能力、及び、日経平均株価の推移や動向をある程度把握及び理解できる能力が必要であるとした上で、原告の属性からするとこのような能力を備えていないため、一連の勧誘行為に適合性原則違反を認めました。

 また、原告の属性等からすると、本件商品の内容やその内包するリスクを原告が具体的に理解しうるように、少なくとも日経平均株価が大きく下落した場合には、投資元本を大きく下回る金額しか償還されない可能性があること等を、原告が理解できるまで十分に説明すべき必要があったが、本件事情からすると、十分が説明を行っていないことが推認できるとして説明義務違反を認めました。

 【全国証券問題研究会HP

6 成年後見開始の審判が取り消された直後の76歳の女性に対する投資信託・株価連動債(EB)・外債の販売について、岡三証券に適合性原則違反、説明義務違反、無意味な反復売買・乗換売買を認めた逆転勝訴判決(大阪高判平成25年2月22日)

 本件投資信・株価連動債(EB)・外債の販売については、いずれも相当なリスクがあり理解困難な商品であるとし、控訴人は76歳と高齢の女性であり、後見開始の審判が取り消されたとはいえ未だ回復途上である等の原告の属性から、本件商品の勧誘に行為に適合性原則違反を認めました。

 また、原告の属性に照らし、本件商品の内容、仕組み、リスクの質と程度、乗換売買を行う理由、メリット・デメリット等につき十分説明したものとはいえないとして説明義務違反を認めました。

 さらに、控訴人の知識・経験・投資目的・資金の量に照らして適合的取引といえず、合理性のない投資信託等の反復売買、乗換売買を繰り返し、その結果損失を被っている上、手数料が比較的高率であることを考え併せると、無意味な反復売買、乗換売買として不法行為を構成するとしました。

 【全国証券問題研究会HP

7 商品先物取引の不法行為に基づく損害賠償請求権の消滅時効の起算点についての逆転勝訴判決(名古屋高判平成25年2月27日)

 控訴人がグローバリーに対し、商品先物取引について不法行為に基づく損害賠償請求を提訴し、消滅時効の起算点が争われた事案につき、本判決は、民法724条前段の「損害及び加害者を知った時」とは、被害者において、加害者に対する損害賠償請求をすることが事実上可能な状況の下において、それが可能な程度に損害及び加害者を知った時を意味するというべきとし、本件取引は取引自体は適法であるが、控訴人の属性との関係で、勧誘行為等に違法性が生じ得るものであり、このような態様による不法行為に基づく損害賠償請求権については、従業員の勧誘行為が違法なものである可能性があることを認識することができた時をもって、事実上可能な程度に損害及び加害者を知ったものというべきであるところ、本件においては、弁護士から違法な商品先物取引による被害である可能性がある旨指摘されたことにより、損害及び加害者を知ったといえるため、この時点が時効の起算点であるとしました。

 【先物取引全国研究会HP】 

8 株式会社の新設分割について詐害行為取消を認めた判決(名古屋高平成25年1月31日)

 預託金返還義務を免れるためになされたゴルフ場経営会社の新設分割に関して、詐害行為となるか否かについては、たとえ計算上は一般財産が減少したとはいえないときでも、一般財産の共同担保としての価値を実質的に毀損しており、いわばそれが劣化したことによって一般債権者が自己の有する債権について弁済を受けることがより困難になったと認められる場合には、詐害行為に該当するとした上で、本件の事情からすると一般財産の共同担保としての価値を実質的に毀損したといえるため、詐害性を有するとしました。