愛知県弁護士会トップページ> 愛知県弁護士会とは > 消費者委員会 > 消費者問題速報

消費者問題速報 VOL.107 (2012年11月)

1 法定利率引き下げ後に発生した過払い金の取得についても悪意の受益者であることは否定できないとした2件の高裁判決(東京高裁平成24年9月25日判決、同平成24年9月27日判決)

 本件はいずれも,控訴人SMBCコンシューマー(旧プロミス)が、被控訴人との取引継続中において約定利率を法定利率に変更したから、それ以降は控訴人が悪意の受益者であるとの推定は働かず過払利息は発生しないと主張した事案です。

 本判決では,法定利率引き下げ以前に過払の状態となっていた場合、貸金債務は存在せず利息が発生する余地はないのであるから、利率が法定利率に変更されたとしても、控訴人がそれまでに発生した過払金の取得につき悪意の受益者である以上、法定利率引き下げ後に発生した過払金の取得についても悪意の受益者であることを否定することはできないと判断しました。

 【名古屋消費者信用問題研究会HP

2 消滅時効の起算点となる法律上の障害の有無は客観的に判断すべきとして、外部から客観的に認識可能とはいえない本件貸出中止措置をもって法律上の障害が解消されたと認めるに足りる特段の事情があったとはいえないとした判決(東京地裁平成24年8月31日判決(控訴審))

 本判決は、本件貸付中止措置以降、過払金返還請求権行使の法律上の障害が解消されたので消滅時効が進行するとの控訴人SMBCコンシューマー(旧プロミス)の主張に対し、本件貸付中止措置の具体的要件は控訴人の内部資料に記載されているだけであって、外部から客観的に認識可能であったとまでは認めるに足らないとして、「法律上の障害が解消されたものと認めるに足りる特段の事情があったとはいえない」と判断し、消滅時効の完成を否定しました。

 【名古屋消費者信用問題研究会HP

3 1回払い又は回数指定払いの貸付けに対する弁済における過払金充当合意の存在と5年7ヶ月の中断期間を介する前後の取引につき一連計算を認めた判決(名古屋地裁一宮支部平成24年10月18日判決)

 本件は、クレジットカード会社のオリコが、①1回払い又は回数指定払いの貸付けに対する弁済は、各貸付と返済に個別対応関係があり借入金全体に対する弁済ではないので個別計算すべきである、②前後の取引間に5年7ヶ月もの中断期間が存在するから、取引は一旦終了し充当合意もその時点で消滅しており、一連計算は認められないと主張した事案です。

 本判決は、①については、基本契約において極度額が定められていることからすれば、カードを用いて継続的に借入れと弁済を繰り返すことが想定されているとして、過払金の充当合意の存在を認め、オリコの主張を斥けました。また、②については、中断期間後の取引開始時において新たな基本契約を締結し直さなかった以上、異なる別個の基本契約に基づく取引であるとはいえないことを理由にオリコの分断の主張を斥け、一連計算を認めました。

 【名古屋消費者信用問題研究会HP

4 預金債権差押命令の申立てにおいて、預金額最大店舗指定方式による差押債権の表示が債権の特定に欠けることはないと認めた決定(名古屋高裁平成24年9月20日決定)

 原審決定は、第三債務者の預金債権につき、「複数の店舗に預金債権があるときは、預金債権額合計の最も大きな店舗の預金債権を対象とする」とした債権の表示方法(預金額最大店舗指定方式)が第三債務者に過度の負担が生じるので差押債権の特定を欠くとして申立を却下したため、抗告人が執行抗告をした。

 本決定は、銀行各店舗の残高照会をして預金額最大店舗を特定するにはさほどの時間と労力を要しないとして、差押債務者である相手方の氏名、読み仮名、住所、生年月日を特定すれば、預金額最大店舗指定方式でも差押債権の特定に欠けることはないと判断し、原決定を取り消した。

 【裁判所HP

5 農水・経産省が商品先物取引の営業における「説明」と「勧誘」の違いを明確にした具体例を提示(平成24年10月23日説明会)

 平成24年10月5日に農水・経産省が提示した商品先物取引法施行規則及び商品投資顧問業者の許可及び監督に関する省令改正案について、両主務省担当官が10月23日、東京証券会館において、日商協および先物協会の会員(商先業者)を対象に説明会を開催しました。

 現行法においては、個人に対し商品先物の仕組みの説明などはできるが、勧誘など営業行為は事前に要望がない限り一切禁じられており、商品先物業界から説明と勧誘の違いが不明であるとして質問書が提出されていました。

 説明会ではこれらの質問とそれに対する回答をまとめたQ&A集が配布され、例えば、

① 説明のみを希望した顧客に対し、先物取引のしくみを説明するに留まらず、取引の意向確認、契約締結目的の説明をすることは不招請勧誘に該当するが、

② 取引をやってみたいとの意思表示があった顧客には適合性を確認した上で勧誘することは不招請勧誘に該当しない

 など、「説明」と「勧誘」の区別が具体的に示されました。

 【2012年10月26日付商取ニュース】

 なお、上記のQ&A集における農水・経産省側の回答に関して、日弁連消費者問題対策委員会金融サービス部会において経産省に確認したところ、この回答例は、あくまで標準的な事例についてのものであって絶対的なものではなく、具体的事例の中では、個別に状況・態様に即して実質的に判断すべきものであるとのことでした。