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消費者問題速報 VOL.105 (2012年9月)

1 過払金が発生しているにもかかわらず,残債務を分割払いする内容の訴外和解につき,消費者契約法4条1項1号の重要事項の不実告知にあたるとし,取消を認めた判決(横浜地裁平成24年6月26日判決(控訴審))

 控訴人アイフルと被控訴人が平成21年2月25日付の和解契約により,貸金債務の存在及びそれ以外の債権債務の存在が無いことが確認していたが,実際には同日時点で過払金が発生していたという事案です。被控訴人は,和解契約の消費者契約法4条1項1号に基づく取消を主張しました。

 本判決では,個人である被控訴人は消費者,アイフルは事業者であるとしたうえで,アイフルの従業員が和解契約締結に当たり貸金債務が存在することを前提とした発言をし,和解契約書もアイフルが準備したものであったことから,アイフルが貸金債務が存在しないにも関わらず,貸金債務が存在する旨を告げたとし,『「重要事項について事実と異なることを告げ」たと認められる』として,消費者契約法4条1項1号に基づく取消を認めました。

 【名古屋消費者信用問題研究会HP

2 CFJについて,無担保取引と不動産担保取引の一連計算を認めた2件の高裁判決(仙台高裁平成23年7月13日判決,東京高裁平成23年6月30日判決)に対する上告不受理決定(2件とも最高裁平成24年8月8日決定)

 原審判決(仙台高裁平成23年7月13日判決と東京高裁平成23年6月30日判決)は,いずれも無担保取引と不動産担保取引について,一連計算を認め,CFJの無担保取引の過払金に関する消滅時効の完成を認めなかった判決です。これらの判決に対するCFJの上告受理申立てについて,いずれも不受理決定がされました。

 【名古屋消費者信用問題研究会HP

3 CFJ(旧ユニマット)の事業再編に伴う取り扱い支店の変更によって,変更前と後とで取引が分断されないとした判決(名古屋高裁平成23年7月3日)

 本判決は,CFJの取扱支店変更前の取引(第1取引)と変更後の取引(第2取引)は,別個の取引であり,一連計算されないという主張について,第1取引と初期の第2取引を「構成する個々の貸付は,従前の貸付けの切替え及び貸増しとして長年にわたり反復継続して行われており,第2取引開始時の貸付けも前回の返済から基幹的に接着し,前後の貸付けと同様の方法と貸付条件で行われたものであ」ることを理由に認めませんでした。

 【名古屋消費者信用問題研究会HP

4 取引履歴が開示されることなくした訴外和解が錯誤により無効となることを認め,免責決定後の過払い金請求は信義則に違反しないとした判決(宮崎地裁平成24年7月12日)

 本件は,平成14年12月20日に借主がアコムとの間で,取引履歴の開示を受けることなく,残債務の確認と分割払いを合意し,借主が,平成15年3月14日に破産宣告と同時廃止決定を受け,その後,免責決定を受けた後,上記借り入れについて過払金の支払を請求したという事案です。

 本判決は,免責後の過払金請求について,破産者が,アコムに対する過払金返還請求権の存在を認識していながら,本件破産手続による免責を得た後に請求する意図の下,同破産手続においてはことさらに同意図等を隠匿していたなど特段の事情がある場合には,「信義則違反,権利濫用により制限される可能性がないとはいえない」とはしましたが,本件でそのような特段の事情は認められないとしました。

 【名古屋消費者信用問題研究会HP

5 リース会社ついて提携販売店の従業員による契約締結の際の違法な勧誘行為がなかったかを確認すべき注意義務違反を理由として顧客に対する不法行為責任が認められ,また,クーリング・オフによるリース契約の解除が認められた事例(大阪地裁平成24年7月27日)

 本判決は,リース会社が提携販売店の違法行為を知り,又は,知り得たにもかかわらず漫然と顧客とリース契約を締結したという特段の事情が認められる場合には,リース会社は,提携販売店に違法な営業活動がないかを調査し,必要に応じて,両者の法律関係及び経済的影響力に応じた指導・監督をすべき注意義務があるとして,リース会社の注意義務違反による不法行為責任を認めました。また,リース会社も特商法2条1項1号の「販売会社」にあたるとして,リース契約について訪問販売のクーリング・オフによる解除を認めました。

6 特定商取引法改正

 特定商取引に関する法律の一部を改正する法律が,平成24年8月10日,成立しました。

 現行の商取引類型に第7番目の商品取引類型として「訪問購入」を追加し,政令で定める物品を除く物品の訪問購入について,

①訪問販売業者による不当な勧誘行為等の規制(不招請勧誘の禁止,不実告知の禁止等)

②書面の交付(物品の種類,物品の購入価格,売買契約の申込みの撤回,解除に関する事項等)

③クーリング・オフ

 といった規制が設けられました。

7 第68回先物取引被害全国研究会・静岡大会

 第68回先物取引被害全国研究会・静岡大会が下記の日時,場所で開催されます。先物取引被害に関心のある方は参加してみてはいかがでしょうか。愛知でのお問い合わせ先は当会の正木健司会員です。

 記

 日時 平成24年11月9日(金)・10日(土)

 場所 研究会 ツインメッセ静岡 北館4階 レセプションホール

 〒422-8006 静岡市駿河曲金3丁目1番10号

 懇親会 ホテルアソシア静岡 3階 「駿府Ⅰ」

 〒420-0851 静岡市葵区黒金町56番地