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消費者問題速報 VOL.104 (2012年7月)

1 旧武富士の第2回配当について

 旧武富士の第2回配当については,①更正すべき理由がない旨の通知処分の取消等請求事件,②配当金返還請求訴訟,③旧役員等に対する損害賠償請求等訴訟,④損害賠償請求事件(メリルリンチ外1名),の各訴訟が終了し,回収が完了した後に実施される予定とのことです。

 http://www.tfk-corp.jp/pdf/120622.pdf(旧武富士HP)

2 貸付停止措置のときから過払金返還請求権の消滅時効が進行するとのアコムの主張を否定した判決(名古屋地裁平成24年5月30日判決,東京高裁平成24年5月31日判決,大阪地裁平成24年3月12日判決)

 貸付停止措置後は新たな借入金債務が発生する見込みはないから,過払金返還請求権については,同措置を取ったときから直ちに消滅時効が進行するというアコムの主張に対し,本判決は,アコムにおいては,貸付停止措置を解除して貸付けを再開する運用を行っていたことを認定した上で,本件の借主について,信用状態が回復する見込みがなくなったとはいえず,新たな借入金債務が発生する見込みがなくなったとは認定できないとして,上記アコムの主張を否定しました。

 【名古屋消費者信用問題研究会HP

3 翌月1回払いもしくは回数指定払いであることを根拠に一連計算を否定すべきであるとのオリコの主張を否定した判決(仙台高裁平成24年5月24日判決)

 翌月1回払いもしくは回数指定払いは,各貸付ごとに個別的な対応関係をもって弁済が行われ,借入金全体に対する弁済ではないので過払金充当合意は存在せず,一連計算を否定すべきであるというオリコの主張に対して,基本契約に過払金充当合意が認められる以上は,これに基づく各取引にその合意の効力が及ばないとする理由はないと判示し,オリコの分断の主張を斥けました。

 【名古屋消費者信用問題研究会HP

4 適格機関投資家等特例業務の届出をした業者に対し,同届出では足りず無登録営業だとした上で,金商法171条の2の趣旨に鑑み,この業者の不法行為責任を認めた判決(京都地裁平成24年4月25日判決)

 本件は,匿名組合契約を締結して出資した被害者らが,同契約の勧誘を行った業者らに対し,損害賠償請求をなした事案です。

 本判決は,出資金の振込先口座には,123名の者から出資金と同様の口単位で振込がなされていること,本件振込口座への振込人の名義,人数やその出資金額等から,これらの振込人の大部分が適格機関投資家ではなく一般投資家であると推認されるとして,適格機関投資家等特例業務の届出では足りず,金商法29条に違反すると判示しました。

 その上で,金商法171条の2の趣旨が,投資対象の価値に関する情報が不十分で投資者が適切な投資判断ができないものにつき,不当な利益を得るおそれがある行為を防止することにあるという点に鑑みて,上記契約の勧誘を行った業者らの不法行為責任を認めました。

 また,本件振込口座の名義人についても,不法行為責任を認めました。

 ※ 適格機関投資家等特例業者…通常,ファンド業務を行う場合には,金融商品取引法の厳格な登録が必要ですが,一定の要件を満たすことにより,簡易な届出のみでファンドの業務が行える業者です。

 【全国証券問題研究会HP】

5 クオークローン→プロミスの「債権譲渡」事案において,過払金の承継を否定した判決(最高裁平成24年6月29日判決)

 クオークローン→プロミスのいわゆる「債権譲渡」事案において,最高裁は過払金返還債務の承継を否定しました。

 もっとも,本判決は「切替」事案については,本件と事案が異なると明示しており,「切替」事案については過払金返還債務の承継が認められています(最高裁平成23年9月30日判決)。

 【裁判所HP

6 株式会社クラヴィスにつき破産手続開始決定がなされました。

 株式会社クラヴィスは,平成24年7月5日,大阪地方裁判所へ破産手続開始の申立てを行い,同日破産手続開始決定がなされました。

 http://www.tsr-net.co.jp/news/flash/1220430_1588.html

7 au通信サービス契約における定期契約の解約金条項について,その使用の差し止めを認め,解約金の一部の返還を認めた判決(京都地判平成24年7月19日判決)

 本判決は,携帯電話の2年定期契約の解約金を一律に定める条項について,契約が期間満了まで継続していれば携帯電話会社が得られたであろう通信料収入を基礎にして平均的損害を算定し,定期契約が締結又は更新された日の属する月から数えて23か月目以降に解約した場合に解約金の支払いを定める部分は消費者契約法9条1項及び10条に反し無効であるとしました。そして,その条項の使用の差し止めを認めるとともに,一部の原告について,解約金の一部の返還を命じました。