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消費者問題速報 VOL.103 (2012年6月)

1 貸金業者が17条書面を改訂して、「返済期間・返済回数」の記載をした後も、悪意の受益者であることを認めた判決(東京地裁平成24年4月20日判決、東京地裁平成24年5月16日判決)

 アコムが借入金額に応じて変動する返済金額を記載した17条書面を交付した事案において、本判決は、「各回の返済期日ごとの返済額の具体的な記載がなければ」借主は返済計画が立てられず、貸金業法17条の趣旨・目的に沿わないから、17条書面たり得る書面を交付したとは認められないと判示しました。

 プロミスが従前の取引にみなし弁済の適用があるとの前提の充当計算をした返済期間等を記載した17条書面を交付した事案において、本判決は、「本来の充当計算に従って算出される返済期間等との間にはかなりの違いがあるもの」であり、かかる内容では「正しい金額を記載したことにならないことを容易に理解できたはずである」として、特段の事情も認められないと判示しました。

2 過払金返還請求権の消滅時効の起算点である取引の終了日をクレジットカード年会費の支払日であると認定して、貸金業者の過払金債権時効消滅の主張を否定した判決(名古屋地裁平成24年3月28日判決)

 オリエントーポレーションに対し、キャッシングの最終弁済日以降にクレジットカードの年会費を支払った後、取引が行われなくなった事案において、本判決は、年会費がカードを保有する会員としての地位を保持するために支払うべき金銭であり、キャッシング機能を含むクレジットカードの年会費を支払うことによりカード契約に基づく新たな借入金債務の発生が見込まれる状態にあったと認められることから、キャッシング取引は終了しておらず、消滅時効は年会費の支払日から進行すると判示しました。

名古屋消費者信用問題研究会HP

3 過払金に発生する法定利息はその後発生する新たな借入金に充当することなく別途精算すべきであるとする、貸金業者の過払利息別立計算の主張を否定した判決(大阪高裁平成24年4月25日判決、東京高裁平成24年4月26日判決)

 本判決は、過払金返還債務の元金と元金に対する法定利息がある場合において、当事者間に特段の充当合意が無いときは、過払金返還債務の元金のみならず元金に対する法定利息についても、その後発生する貸付金債務に充当して「全体を一括精算することが当事者の合理的意思に合致する」と判示して、過払利息別立計算の主張を否定しました。

4 貸付と返済に個別対応関係のある翌月一回払いには過払金充当合意は存在しないというオリエントコーポレーションの主張を否定した判決(名古屋高裁平成24年5月25日判決)

 弁済方法が「1回払」又は「回数指定分割払」の場合には、借入金全体に対する弁済ではないから過払金充当合意が存在しないとの主張に対して、本判決は、最高裁平成19年6月7日判決が「1回払」の弁済方法も選択できる契約において「借主が実際にどの返済方法を選択したかを問わず、過払金充当合意の存在を認めている」として、過払金充当合意の存在を認めました。

名古屋消費者信用問題研究会HP

5 複数の株価連動型仕組債の勧誘をした証券会社に対する損害賠償請求について、顧客側全面敗訴の第一審を覆し、証券会社の説明義務違反を認めた判決(大阪高裁平成24年5月22日判決)

 保有有価証券が5億円以上あり、多数の取引経験を有する株式会社に対し、証券会社社員が、複数の種類の株価連動型仕組債につき「リスク回避」「株式より有利」等と勧誘し、2億円以上の損失が生じた事案において、本判決は、「本件各商品は、その仕組みが複雑であり、専門的に分析すると場合によっては株式より不利な面やリターンよりリスクが大きい面がある」等と本件各商品の特性に深く踏み込んで問題点を指摘し、顧客の属性についてもこれまで概ね証券会社の推奨銘柄を購入してきたこと、本件商品のように複雑な商品の取引は初めてであったこと等諸事情を慎重に検討し、本件各商品の特徴やリスク等を十分に説明して、その理解を得させるべきとして説明義務違反を認めました(過失相殺5割)。

6 学校法人に対してデリバティブ取引の勧誘をした証券会社に、説明義務違反を認めた判決(大阪地裁平成24年2月24日判決)

 デリバティブ取引を中途解約する際、解約料として証券会社に11億円以上を支払った事案において、本判決は、基本契約書や説明資料での解約料の説明は、一括精算の内容が抽象的に記載されているのみであって、具体的算定方法や概算額が全く推測できず、担当社員自身、解約料の具体的な算定方法が分からず「大きな損失」が10億円なのか100億円なのかすら理解していなかったことから解約料の詳細な説明をしたとは考えられないと認定し、解約料についての説明義務違反を認めました(過失相殺8割)。

7 「CO2排出権取引」の訪問販売業者に対する業務停止命令

 消費者庁は、平成24年6月19日、「CO2排出権取引」と称するCO2排出権の店頭デリバティブ取引を行っていた訪問販売業者であるやよいトレード株式会社に対し、書面記載不備、不実告知、重要事実の不告知、判断力不足便乗による契約の締結を内容とする特定商取引法違反を理由として,12か月の業務停止命令の行政処分をしました。