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消費者問題速報 VOL.100 (2012年3月)

1 建築基準法上の指定確認検査機関に対して国賠法上の損害賠償責任を認めた判決(横浜地裁平成24年1月31日)

 本判決は,指定確認検査機関の従業員が構造計算書の改善を指摘し,同指摘に基づき修正がなされたにもかかわらず,当該修正に誤りがあったという事案につき,当該修正が誤りであることは構造設計の基本ともいうべき事項であって,通常,構造設計者がこのような誤りをすることはあり得ないことから,当該修正が適正なものかどうかを確認しないまま建築確認を行った点に過失があるとし,指定確認検査機関の損害賠償責任を認めました。

 また,指定確認検査機関は自ら設定した手数料を収受して,自己の判断で建築確認業務を行っていること,その交付した建築確認済証は,建築主事が交付した確認済証とみなされること等から,同検査機関は公権力の行使である建築確認業務を行っているとして,同検査機関が負う責任につき国賠法上の損害賠償責任であると判示しました。

 【 ウェストロージャパン 】

2 サービサー法違反を認めた最高裁決定(最高裁平成24年2月6日)

 最高裁判所は,サービサー法3条に定められた法務大臣の許可を受けずに消費者金融業者から不良債権を譲り受け,その管理回収を行うことを業としていた業者に対し,サービサー法33条1号の罪が成立するとしました。

 当該業者が譲り受けた債権は,長期間支払が遅滞し,譲渡元の消費者金融業者において全て貸倒れ処理がされていた上,その多くが利息制限法にのっとって元利金の再計算を行えば減額され又は債務者が過払いとなっており,債務者が援用すれば時効消滅となるものもあったなど,通常の状態では満足を得るのが困難な債権であるとし,当該業者の本件債権の管理回収に関する営業は同法2条2項後段に該当する旨判断されました。

 【 裁判所HP 】

3 高齢者に対するRC5の投資信託の勧誘・販売につき,適合性原則違反を認めた判決(横浜地裁平成24年1月25日)

 本判決は,RC5の投資信託の勧誘につき,狭義の適合性原則違反は否定しましたが,76歳という高齢で継続的な高額収入がなく,資産の安定性,安全性という面に配慮が必要である顧客に対し,新規の商品で,かつ,リスクが相当程度高い商品について,いきなり1100万円,僅か3か月後には約103万円と合計1200万円を超える投資を勧めた点は不相当であるとし,適合性原則違反(広義)を認めました。

 【 全国証券問題研究会HP 】

4 投資信託の購入につき,意思無能力による無効を認めた判決(神戸地裁姫路支部平成24年2月16日)

 本判決は,まず,意思能力の有無についての判断は,どのような取引を行うかによって違いうるとしました。

 その上で,顧客がトラック運転手として投資信託とは無縁の人生を過ごしてきたこと,平成18年頃からは意識障害・見当識障害も見られはじめ,退院時の事情に照らしてこれらが治癒したと認めるに足りる証拠はなく,退院後も顧客は妻の顔が分かる程度であって,本件契約(平成19年)が成立した後すぐに再入院の余儀なきに至ったこと,本件勧誘時に説明を受けたのは主に妻であって,顧客が本件各投資信託の特徴や投資対象等を理解していたとは認められず,顧客はこれらをまったく理解することなく申込書に署名押印したことを認定し,契約締結時に顧客に意思能力があったとは到底解すことができないとし,不当利得返還請求を認めました。

 【 全国証券問題研究会HP 】

5 冠婚葬祭の互助契約等における解約金条項の一部無効を認めた判決(京都地裁平成23年12月13日)

 本件は,所定の月掛金を前払いで積み立てる方式の冠婚葬祭互助契約及び旅行等利用契約に関し,契約期間中に消費者が当該契約を解除した場合,支払済み金額から所定の解約手数料を差し引くことが消費者契約法9条1号及び10条に違反するかが争われた事案です。

 本判決は,冠婚葬祭互助契約につき,消費者から請求があってはじめて,当該消費者のために冠婚葬祭の施行に向けた具体的な施行準備を始めるものであるとし,消費者から冠婚葬祭の施行の請求があるまでになされた解約によって生じる平均的な損害は,月掛金の振替費用58円であると認定し,当該費用を超えた部分の解約金条項は,同法9条1号により無効であると判断しました。また,旅行等利用契約については,解約手数料を徴収することを定める解約金条項全体を同法9条1号により無効としました。

 【 裁判所HP 】