愛知県弁護士会トップページ> 愛知県弁護士会とは > 消費者委員会 > 消費者問題速報

消費者問題速報 VOL.99 (2012年2月)

1 詐欺の実行者らに携帯電話を貸した携帯電話レンタル会社にも共同不法行為責任を認めた判決

 平成24年1月25日,東京地裁は,実際には価値のない株式を購入希望者が多い価値の高いものであるなどと虚偽の事実を申し向け昭和6年生まれの高齢者に300万円で売りつけた詐欺事案において,詐欺の実行者らだけでなく,実行者らに携帯電話を貸した携帯電話レンタル会社にも共同不法行為責任を認める判決を出しました。同判決は,携帯電話不正利用防止法を詳細に引用し,携帯電話のレンタル会社には貸与契約時の運転免許証等の確認において高度の注意義務が課されているとしました。その上で,本件では提示された運転免許証に架空の住所地や矛盾する免許の取得日が記載されていること等の事情から,簡易な調査をすれば偽造の事実が容易に判明したものであると結論づけ,過失による共同不法行為の幇助という法律構成により不法行為責任を認めました。

 

2 顧客が返済方法として翌月1回払いを選択した場合には過払金充当合意は存在しないとのオリコの主張を斥けた判決

 平成23年3月25日,顧客が借入金の返済方法として翌月「1回払い」を選択した場合には不当利得返還請求権が生じるとしてもその後に生じた貸付元本に充当する旨の合意は存在しないとのオリエントコーポレーションの主張に対し,名古屋高裁はこれを斥ける判決を出しました。同判決は,「顧客が借入金の返済方法として「1回払い」を選択した場合であっても,(中略)本件契約1は,その性質上,1つの借入れを行う際に,次の借入れを行うことを想定しているものということができる。そして,本件契約1に基づく借入れと弁済が,長年にわたって恒常的に多数回反復継続して行われているという事情がある場合であって,1回の貸付けとその直前の弁済とが時間的に接着しており,複数回にわたる貸付けが同一の方法,同一の条件で行われている場合は,借主において,次の借入れをすることを想定して,1つの借入れに対する弁済をするという状況にあるものと評価することができる」としました。そして,このような状況において行われた返済について,当該返済により過払金が発生したときには次月以降の借入れによる借入金返還債務に充当する旨の合意があるとし,一連計算を認めました。

 【名古屋消費者信用問題研究会HP

3 三菱UFJニコスが廃棄したと主張する過去の取引履歴の提出を命じた文書提出命令

 平成23年12月21日,郡山簡易裁判所は,過払金返還請求訴訟において,三菱UFJニコスが廃棄したと主張する過去の取引履歴の提出を命じる文章提出命令を出しました。三菱UFJニコスは,社内の文書管理規定により取引履歴の保存期間を10年間と定め,同保存期間を経過した資料につき専門業者に委託して順次廃棄しているため,平成6年12月以前の取引履歴は存在しないと主張していました。しかし,同判決は「過去10年以前の取引履歴を消去等した合理的理由やその時期にについて具体的にどのような方法で消去等されたのかが明確にされない限り,当該情報等が存在するものと認めるのが相当」とし,本件ではそのような具体的な証拠が提出されていないと判断しました。

 【名古屋消費者信用問題研究会HP

4 CFJからの過払金の一方的一部振込支払いについて弁済の効力を否定した判決

 平成23年12月21日,名古屋地裁は,過払い金返還請求訴訟の提起後,被告であるCFJが原告代理人の口座に一方的に振り込んできた180万円について,「債務の弁済の提供は,債務の本旨に従って現実にしなければならず(民法493条),債務の一部のみの提供は,債権者がこれを承諾したなどの特段の事情がない限り,有効な弁済の提供とはならず,これに弁済の効力を認めることはできない」としました。

 【名古屋消費者信用問題研究会HP

 

5 「建物としての基本的な安全性を損なう瑕疵」を具体的に認定した判決

 事案は,9階建て共同住宅・店舗として建築された建物を建築主から購入した元所有者らが,本件建物のひび割れ,鉄筋の耐力低下等の瑕疵を主張して,建築設計及び工事監理をした設計事務所並びに施工をした建築会社に対し,損害賠償等を求めたものです。平成23年7月21日の第二次上告審判決では,本件建物の瑕疵が「建物としての基本的な安全性を損なう瑕疵」に該当するか否かにつき審理する必要があるとして審理が福岡高裁に差し戻されました。その差し戻し審で,平成24年1月10日,福岡高裁は,「建物としての基本的な安全性を損なう瑕疵」を具体的に認定し,設計事務所及び建築会社に対する賠償請求を一部認容しました。

 【ウェストロージャパン】

6 先物取引被害全国研究会

 第67回先物取引被害全国研究会岡山大会が下記の通り開催されます。先物取引被害に関心のある方,参加してみてはいかがでしょうか。愛知でのお問い合わせ先は当会の正木健司会員です。

 日 時 : 平成24年4月13日(金)、14日(土)

 場 所 : 〈大会会場・懇親会会場〉

 岡山ロイヤルホテル

 〒700-0028 岡山県岡山市北区絵図町2-4