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消費者問題速報 VOL.98 (2012年1月)

1 ①建築基準法等の法令の規定に適合しない建物の建築を目的とする請負契約が公序良俗に反し無効とされた事例。②建築基準法等の法令の規定に適合しない建物の建築を目的とする請負契約が締結されこれに基づく本工事の施工が開始された後に施工された追加変更工事の施工の合意が公序良俗に反しないとされた事例(最高裁H23.12.16)。

 違法建物の建築を目的とする請負契約に基づく本工事及び違法部分の是正工事を含む追加変更工事に係る請負契約が公序良俗に反するかが争点となった事案において,最高裁は,本工事部分については,計画が極めて悪質であること,違法の程度が軽微ではないこと,請負人が注文者に比して明らかに従属的な立場にあったとはいえないことから,本件各建物の建築は著しく反社会性の強い行為であり,これを目的とする本件各契約は,公序良俗に反し無効であるとしながらも,追加変更工事部分については,違法建築部分を是正する工事も含まれており,基本的には本件本工事の一環と見ることはできず,反社会性の強い行為であるとはいえないから,その施工の合意が公序良俗に反することはないとして,事件を東京高裁に差し戻しました。

 【 裁判所HP 】

2 アエル→JPモルガンの信託譲渡契約書の提出を命じた決定(名古屋地裁一宮支部H23.12.27)

 基本事件において,アエル→JPモルガン→NCキャピタルという債権譲渡とともに,NCキャピタルが契約上の地位を譲り受けたかどうかが争点となっているときに,契約上の地位がNCキャピタルに移転したことを証すべき事実として,信託譲渡契約書が民訴法220条3号後段の規定する法律関係文書,又は同条4号及び同法221条2項の規定する必要文書に該当するかどうかが争われた事案において,名古屋地方裁判所一宮支部は,アエルとJPモルガンの債権譲渡、信託の内容が明らかにならなければ、事実関係が確定できないとして、NCキャピタルに対して、信託譲渡契約書の提出を命じました。

 【名古屋消費者信用問題研究会HP

3 貸金業者の過払利息別立て計算(過払利息は,新たな借入金債務に充当されず,別立てで積算する)の主張を認めなかった判決(福岡高裁宮崎支部H23.2.28(CFJ),大阪地裁堺支部H23.8.23(プロミス),大阪地裁H23.10.24(CFJ))

 上記福岡高裁宮崎支部判決は,「過払金充当合意が認められる以上、それに付随する性質を有する過払金の利息についても、これを借入金債務に充当するとの合意があると推定されること」を理由に,上記大阪地裁堺支部判決及び大阪地裁判決は,「過払金充当合意が認められる場合には、借主は総債務額の減少を望み、当事者は複数の権利関係が発生するような事態が生ずることを望まないのが通常であることから、充当合意の内容として借入金債務に過払金及び法定利息を充当する合意があったと推認できること」を理由に,貸金業者の過払利息別立て計算の主張を認めませんでした。

 【名古屋消費者信用問題研究会HP

4 100万円を貸し付けた時点で、適用利率が15%となることを認めた判決(大阪地裁H23.10.21)

 継続的な金銭消費貸借契約に関する基本契約に基づいて取引が行われた結果,過払金が発生しているときに,貸金業者(アイフル)が債務者に対し,100万円を貸し付けた場合,利息制限法所定の制限利率は,引き直し計算をした元本残高で計算すべきかどうかが争われた事案において,大阪地裁は,①法律的には個々の貸付が1つの消費貸借契約であること,②過払金の元本への充当は新たな貸付金の存在を論理的な前提とするものであること,③貸金業者は債務者に対し,現実に100万円を交付していることを理由に,利息制限法第1条1項にいう「元本」は,過払金を充当して計算した後の元本残高ではなく,新たな借入金額(本件の場合,100万円)によって定まると判断しました。

 【名古屋消費者信用問題研究会HP

5 全国証券問題研究会神戸大会のご案内

 平成24年3月16日(金),17日(土),神戸国際会議場において,第45回全国証券問題研究会神戸大会が行われます。

 今回は,大阪の村本武志弁護士によるFINRA(米金融取引業規制機構)の自主規制内容についての講義,同じく大阪の三木俊博弁護士のPIABA(アメリカの一般投資家仲裁弁護士協会)研究大会についての報告,実務面では,日本証券業協会の担当者による自主規制規則についての解説が予定されています。

 さらに恒例の初心者向け入門講座や勝訴判決・和解報告など,具体的な事件に役立つ企画もありますので,興味のある方は,名古屋先物証券問題研究会の事務局(正木健司会員(電話052-961-3071))あるいは会員の方にお尋ね下さい(応募締め切り 平成24年2月15日)。

6 未公開株等詐欺的事犯の全国一斉刑事告訴が行われました。

 平成23年12月14日,実体のない会社の未公開株や社債を「値上がりが確実」などと言って売りつけたのは詐欺に当たるとして、全国の被害者が、各地の警察に一斉に刑事告訴しました。