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消費者問題速報 VOL.96 (2011年11月)

1 個別クレジットの抗弁の範囲〔最高裁H23.10.25〕

 平成20年改正後の抗弁の規定は、包括クレジットは割賦販売法30条の4、個別クレジットは同法35条の3の19、ローン提携販売は同法29条の4です。これらにより将来の支払いを拒絶できることには争いはありません。

 本件は平成20年改正前の個別クレジットについて、既払金の返還請求ができるかが問題となった事案です。本判決は割賦販売法30条の4に基づく既払金返還請求を認めた原審を破棄し、これを創設規定とした最高裁平成2年2月20日判決を確認し、その上であっせん業者との立替払い契約が公序良俗に反して無効とされるのは特段の事情がある場合に限定されるとして、立替払い契約の無効を理由とした既払金の返還請求を否定しました。また、消費者契約法による取消を理由とした既払金返還請求については、取消権を追認することができるときから6か月以内に取消権を行使したとはいえないとして、同法7条により取消を認めませんでした。         【裁判所HP・金融商事判例】

2 マルフク→CFJへの過払金の承継〔名古屋地裁半田支部H23.8.11〕

 同種事案について最高裁平成23年3月22日判決は資産譲渡契約の解釈として過払金返還債務を承継することはなく、資産譲渡契約が営業譲渡であるとしても直ちに契約上の地位が移転するわけではないとしましたが、他の論点についての最高裁の判断はありません。本判決は地裁判決ですがその後に信義則違反で過払金返還債務の承継を認めたことに意義があります。

 

3 株価連動型の仕組債の説明義務違反〔東京高裁H23.10.19〕

 本判決は、株価連動型の仕組債について適合性違反の主張は認めなかったものの、説明義務違反については詳細な判示をして認めています。ただし、被害者は雑貨の輸入販売を業とする株式会社の代表者であり、過失相殺は7割とされています。【セレクト41掲載予定】

 

4 金融機関の不特定支店への執行を認めた高裁決定〔東京高裁H23.10.26〕

 同種事案で最高裁平成23年9月20日【裁判所HP】は、送達を受けた第三債務者が速やかにその債権を識別できるものではないなどの理由を述べ(補足意見でさらに理由を補強)、否定しました。

 本件はそのすぐ後の決定で、差し押さえるべき債権を「複数の店舗に預金債権があるときは、預金債権額合計の最も大きな店舗の預金債権を対象とする。なお、預金債権額合計の最も大きな店舗が複数あるときは,そのうち支店番号の最も若い店舗の預金債権を対象とする」と表示した申立てについて、勝訴判決後の権利実現のため第三債務者が弁護士法23条の2に基づく照会に正当な理由なく応じなかった場合には、これが認められるとしました。

 【金融商事判例】

5 CFD取引業者・役員・従業員に対する不法行為責任を認めた判決〔東京地裁H23.11.22〕

 本判決は、本件CFD取引が公序良俗に反する違法なものであり、また、従業員が行った本件取引に係る勧誘行為も違法なものであるとし、CFD取引業者・役員・勧誘に関わった従業員に対し、不法行為が成立するとして、損害賠償を認めました。

 

6 安愚楽牧場、再生手続廃止。破産へ

 和牛オーナー制度が行き詰まり、民事再生手続が進められていた安愚楽牧場について、東京地裁は11月4日に管財人による管理を命じる決定をし、同月8日に再生手続を廃止する決定をし、財産の保全管理命令を出しました。この決定が覆らない限り、破産手続に移行する見込みです。