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消費者問題速報 VOL.94 (2011年9月)

1 建物の瑕疵の判断基準〔最高裁H23.7.21〕

 最高裁(第一小法廷)は、平成23年7月21日、店舗兼共同住宅を購入した者が建物にひび割れや鉄筋の耐力低下等の瑕疵があるとして補修費用の支払いを求めた事件において「第1次上告審判決にいう「建物としての基本的な安全性を損なう瑕疵」とは居住者等の生命,身体又は財産を危険にさらすような瑕疵をいい,建物の瑕疵が,居住者等の生命,身体又は財産に対する現実的な危険をもたらしている場合に限らず,当該瑕疵の性質に鑑み,これを放置するといずれは居住者等の生命,身体,又は財産に対する危険が現実化することになる場合には,当該瑕疵は,建物としての基本的な安全性を損なう瑕疵に該当すると解するのが相当である」と判示し、問題となる瑕疵の具体例についても言及した上で、原判決を破棄して事件を福岡高裁へ差し戻しました。

 

2 専門学校の授業料返還〔名古屋高裁H23.7.22〕

 専門学校に合格して入学金、授業料等を納入した者が、入学辞退して在学契約を解除したとして支払い済みの授業料等の返還を求めた事件について、名古屋高裁(民事2部)は、平成23年7月22日、最高裁判決(平成18年11月27日第二小法廷)の枠組みの中で「専願入試等」に当たるか否かを実質的に検討して授業料不返還特約を消費者契約法で無効と判示し、原判決を破棄して授業料等の返還請求を認めました。

 

3 出会い系サイト被害者の勝訴判決〔さいたま地裁越谷支部H23.8.8〕

 出会い系サイトの被害者がサイト運営会社と代表者を訴えた不法行為損害賠償請求事件において、さいたま地裁越谷支部は平成23年8月8日、消費者センターへ寄せられたPIO-NET情報などから、サイト運営会社は利用者の交信相手にサクラ(架空人物)を使用し、サクラに多数の相手方の人格を使い分けさせて、利用者に多額のポイントを消費させて多額の利益を得ていたことを認定し、被害者が支払ったサイト利用料相当額及び弁護士費用の損害賠償請求を認めました。

 

4 FX業者関連会社の監査役責任〔名古屋高裁H23.8.25〕

 FX取引業者の関連会社と匿名組合契約を締結して損害を被った者が既に勝訴した代表取締役の責任追及訴訟とは別に、関連会社と匿名組合の各監査役に対して損害賠償を求めた事件について、名古屋高裁(民事1部)は、平成23年8月25日、原告敗訴の第一審判決を取り消し、「取締役の不正行為を防止するためのチェック権限が監査役に付与されていることからすれば、会社の財産が損なわれ、それによって会社債権者に差し迫った被害の発生が予見されるような特段の事情がある場合には、監査役は調査の権限を行使して、その結果に基づいて取締役に違法行為を中止することを求める権利と義務が生ずるというべきであり、監査役が取締役の違法行為を放置することはそれ自体違法性を帯びる」と判示して、監査役の責任を認めました。

 

5 質取引と利息制限法〔名古屋地裁半田支部H23.8.11・H23.8.22〕

 名古屋地裁半田支部は、質屋の質取引に利息制限法が適用されるかが争われた事案で、平成23年8月11日、利息制限法1条1項の適用を認め、同法所定の利息を超える質料を元本に充当し完済して生じた過払金の返還請求を認めました。また、同月22日になされた追加判決は、流質期限前に被担保債権たる貸金債権が消滅していたとして、質物の返還請求も認めました。

 

6 SFコーポレーションが自己破産を申立てました

 消費者金融準大手のSFコーポレーション(旧三和ファイナンス)は、平成23年8月26日、東京地裁に自己破産を申し立てた。新聞報道等によると、同社の負債総額約1897億円のうち1865億円は過払金返還債務といわれています。

 なお、この件に関して、同社に対して過去に二度の債権者破産を申し立てた三和ファイナンス対策弁護団は「徹底的な資産の流れの解明と役員他関係者の厳正な責任追及を行ったうえ、過払金債権者に対する公平な配当を実現すべきである」との声明を出しています。

7 悪意の受益者の論点について最高裁が弁論を開きます

 最高裁(第一小法廷)は、貸金業者の悪意が論点となって争われた2つの事件について、平成23年11月10日に弁論を開くことが決まりました。

 2つの上告事件は、いずれも控訴審で消費者金融の悪意が否定されていた事件であり、その判決が注目されるところです。

8 クオークローン・プロミス切替事案について一連計算を認めた最高裁判決〔最高裁平成23年9月30日〕

 最高裁(第二小法廷)は、平成23年9月30日、クオークローン・プロミス間の債務切替事案について、顧客のクオークローン及びプロミス間の取引を一連のものとして過払金を計算すべきであると判示し、これを認めなかった原判決を破棄し、事件を東京高裁へ差し戻しました。

 

 以上