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消費者問題速報 VOL.93 (2011年7月)

1 不動産担保ローンへの切替について一連計算を認めた判決(東京高裁平成23年6月30日判決)

 東京高等裁判所第21民事部は、リボルビング契約に基づく無担保の取引を証書貸付契約に基づく不動産担保ローンへの切替について、同一の会員番号で管理したこと、第2取引の与信審査において第1取引における実績が良好であることを考慮したこと、第2取引が第1取引の返済窮する顧客について担保に供することのできる不動産の存在を知り取引拡大を図ったものと認められること、第1取引と第2取引との間には空白期間がないことから一連計算を認めました。なお、本件は上告されました。

2 ユニマット当時の取引、ディック当時の取引について、CFJに対して悪意の受益者を認めた判決(大阪地方裁判所堺支部平成23年2月15日判決)

 大阪地方裁判所堺支部は、ユニマット当時の取引、ディック当時の取引について、取引のすべてについて17条書面及び18条書面の交付の有無を個別具体的に立証するまでの必要はないとしつつ、少なくとも取引の態様に応じ、各取引ごとに17条書面又は18条書面を交付していたものと推認できる程度の具体的な立証は必要だとして、CFJが悪意の受益者だと認定しました。

3 CFJに対して悪意の受益者を認めた判決(大阪高等裁判所第5民事部平成23年6月24日判決)

 大阪高等裁判所第5民事部は、ユニマット当時の取引について、借主のプライバシーへの配慮から18条書面を希望者以外には送付しないという取り扱いについて、貸金業法43条1項の適用が受けられないのが当時の学説、判例上の多数説であったとして、悪意の受益者に関する特段の事情があったと認めることはできないとし、ディック当時の取引について、「返済期間及び返済回数」の記載が困難である「元利定額残高スライドリボルビング返済方式」について、みなし弁済が認められるための要件を遵守することが難しい取引形態を採用したのはディック自身であるとして、なんらの工夫もしなかった以上、みなし弁済の適用があると認識をするについてやむを得ない特段の事情があるとはいえないと判断しました。

4 未公開株式の売却をブローカーに依頼してその代金を受領した発行会社及び代表者に責任を認めた判決の控訴審判決(東京高等裁判所平成23年6月8日判決)

 東京高等裁判所第11民事部(岡久幸治,三代川俊一郎,杉原則彦)は、未公開株式の発行会社及び代表者が、同自社株をブローカーに譲渡した行為について、未公開株商法の幇助に当たると判示した原審判決(消費者問題速報3月号vol.89掲載)を維持し、控訴を棄却しました。

5 金利スワップのデリバティブ取引について銀行の説明義務違反を認めた判決(福岡高等裁判所平成23年4月27日判決、同日付で同趣旨の判決が2件)

 福岡高等裁判所は、プレーン・バニラ・金利スワップ取引(デリバティブ取引の一種)について、一方で金利スワップ契約の基本構造や原理自体は単純で、その理解は一般的にも困難ではなく、当該顧客もその原理ないし構造自体については理解していたとしつつ、①中途解約時に必要とされるかもしれない清算金額については極めて抽象的な説明しかなされていない。②変動金利のリスクをいつからスタートさせるかの選択するための説明が全くなかった。③加算されるる銀行の利益などによっては、金利スワップ契約の機能たるリスクヘッジ機能が十分に果たせなくなることについての説明がなかった。④当該契約が銀行に一方的に有利で、顧客に事実上一方的に不利益をもたらすものであると認定し、銀行に説明義務違反による不法行為を認定した。

6 出会い系サイト被害事案についてカード会社を提訴

 出会い系サイト被害弁護団は、いわゆる出会い系サイトで被害を受けた事案において、6月24日に名古屋地方裁判所に対して、サイト関係者に加えて国内の信販会社4社を被告に加えて、共同不法行為を理由として、損害賠償請求訴訟を提起しました。

7 仮想空間詐欺事件で社長逮捕

 「日本中の街を再現した仮想空間を開発する」「空間内の『土地』を先行取得すれば転売や賃貸で必ずもうかる」などといったネット上の仮想空間ビジネスをめぐる事件において、インターネット関連会社「ビズインターナショナル」の社長石原茂男容疑者(49)虚偽の説明で会員を勧誘したとして、特定商取引法違反(不実の告知)の疑いで埼玉県警によって逮捕されました。【平成23年7月5日付報道】

8 全国証券問題研究会(札幌大会)開催のご案内

 平成23年9月2日~3日、札幌市で全国証券問題研究会が開催されます。大会では、新保恵志教授(東海大学)のご講演「仕組み商品の問題点~意見書を書く立場から(仮題)」が、金融庁担当者による「金融商品取引業者等向けの監督指針」について、店頭デリバティブに関する部分を中心としたご解説が行われるほか、各種証券事件に関する勝訴判決報告などが予定されています。