愛知県弁護士会トップページ> 愛知県弁護士会とは > 消費者委員会 > 消費者問題速報

消費者問題速報 VOL.92 (2011年6月)

1 地方裁判所へ提起された過払金返還請求訴訟において、貸金業者がなした簡易裁判所への移送申立を却下した決定(最高裁平成23年5月18日決定)

 最高裁第二小法廷は、貸金業者3社に対する過払金返還請求訴訟において、原告の各被告に対する請求額は、いずれも140万円を超えないが、これらを合算した額は140万円を超えるため、地方裁判所へ提起された訴えに対し、貸金業者が管轄違い(民事訴訟法16条1項)として、当該業者の住所地を管轄する簡易裁判所への移送を申し立てた事案につき、本件は同38条後段の共同訴訟であって、いずれの共同訴訟人に係る部分も受訴裁判所が土地管轄権を有しているものであるから、併合請求の管轄について同38条前段の場合に限ると定めた同7条ただし書により、併合請求の場合に価額の算定を認めた同9条の適用が排除されることはないというべきであるとして、移送申立を却下しました。【最高裁HP

2 クオークローンからプロミスへの債務の承継を認めた判決(名古屋高裁平成23年5月12日判決)

 名古屋高裁民事第4部は、クオークローン・プロミス間の債務承継事案につき、プロミスが債務引受条項の無効を主張することは信義則違反であるとして、プロミスに対する債務の承継を認めました。

 この判決により、クオークローン・プロミス承継事案については、名古屋高裁は4か部とも承継を認めることとなりました。

3 パチンコ必勝法を販売したKO企画に対して会社及び歴代役員の退任後の責任も認めた判決(名古屋地裁平成23年5月19日判決)

 名古屋地裁民事第4部は、KO企画によるパチンコ必勝法の複数回に及ぶ販売契約が違法であるとして、同社及び、原告が購入した当時役員であった者らに対して損害賠償等を請求した事案につき、会社に対する請求を認め、さらに、当時の役員に対する請求のうち、当該役員の在任中はもちろん、退任した後に締結された契約についても、同社従業員らの行為を是正し、被害の拡大防止に努めたとは認められないとして、全ての損害につき責任を認めました。

4 本店所在地に専属的合意管轄があるとして移送申立を認めた地裁の決定を取り消して、移送申立を却下した決定(東京高裁平成23年6月1日決定)

 東京高裁第4民事部は、ロコロンドン取引の東京支店担当者らが、千葉において原告と契約を締結したが、既に東京支店が福岡に移転していることから、東京地裁から福岡地裁への移送申立をしたところ、原審がこれを認めた事案につき、管轄違い(民事訴訟法16条)の主張に対し、専属的管轄を被告の本店所在地とする約諾書等は存在するが、原告が内容を十分理解していたかは疑問の余地があることから、専属的管轄合意が成立したとは認めず、契約だけでなく、電話での勧誘を含む一連の行為が不法行為を構成することがありうるから東京支店所在地は不法行為地であると認め、また、当事者間の衡平(同17条)の主張に対し、犯罪的な取引行為によって独居老人に多大な損害を与えた可能性があることは管轄裁判所を決定する上でも斟酌されるべきであり、当事者の衡平の観点からも事件を東京から福岡に移送する必要はないとして原決定を取消して業者らの移送申立を却下しました。

5 匿名組合に対する出資金名下に金銭を交付させた商法につき、損害賠償請求を認め、過失相殺をしなかった判決(東京地裁平成23年5月31日判決)

 東京地裁民事第24部は、東京プリンシパル・セキュリティーズ・ホールディングス㈱の社員による勧誘行為が違法であるとして、当該社員、会社、会社役員に対し不法行為に基づく損害賠償を求めた事案につき、当該社員による勧誘行為は、高齢で理解力の不十分な専業主婦に対して、その有する流動資産のほとんどを対象として行われたものであって、適合性の原則に違反し、かつ、匿名組合への出資の危険性等についての説明義務を尽くさない説明義務違反があると認定し、当該社員、会社、会社役員に対する損害賠償請求を認め、過失相殺をしませんでした。

6 無登録業者による未公開株式等の販売は、原則として無効

 資本市場及び金融業の基盤強化のための金融商品取引法等の一部を改正する法律が平成23年5月17日に成立し、6か月以内に施行されます。同法によれば、無登録業者が未公開株式を販売した場合には、原則として無効となります(法171条の2)。

 詳しい内容は金融庁のホームページでご確認ください。

 (http://www.fsa.go.jp/common/diet/177/index.html