愛知県弁護士会トップページ> 愛知県弁護士会とは > 消費者委員会 > 消費者問題速報

消費者問題速報 VOL.91 (2011年5月)

1 アイフルに悪意の受益者性を認めた判決(名古屋地裁平成23年3月17日判決)

 本判決は、①最高裁平成18年1月13日判決後でも、債務者が上記判決を認識・理解する場合はまれで、その意味を理解できる債務者がなお制限超過利息を支払う可能性は著しく低いとした上で、アイフルは上記事情を認識し得たので任意性の要件を満たすと認識したことにやむを得ない事情はない。②リボルビング方式の貸付であっても、「返済期間及び返済回数」及び「各回の返済期日及び返済金額」の記載に準ずる記載として、個別貸付の時点での残元利金につき、最低返済額及び経過利息を毎月の返済期日に返済する場合の返済期間、返済金額等の記載が必要であるとして、これを緩和する解釈が妥当であると認識したことにやむを得ない事情はない。③弁済金受領時に交付する書面に「契約番号」しか記載されていない場合には、債務者が充当関係を把握するのに支障が生じ、特にリボルビング返済方式の契約では、弁済の対象となった貸付を特定できず、充当関係の把握が困難になるため、法律に明記された記載事項について緩和する解釈が妥当であると認識したことにやむを得ない事情はないとしました。                 

2 賃料の保証委託契約を消費者契約法10条により無効とし、退去勧告などを不法行為とした判決(名古屋地裁平成23年4月27日判決)

 本判決は、賃貸住宅の賃借等の保証会社が、賃借人との間で賃借人が賃料の支払を1回でも滞納すれば、保証委託契約を無催告で債務不履行解除した上、自動的に同一条件で更新するとの特約を付した保証委託契約を締結し、同契約に基づいて更新料を受領した上、賃借人が賃料の支払を数回遅滞した後は、賃借人に建物を退去するよう働きかけた事案につき、①上記保証委託契約は、継続的契約である賃貸借契約から生じる債務を保証するものであるのに、賃料を1回滞納しただけで自動的に債務不履行解除されるのでは、明らかに契約の趣旨に反しており、消費者の権利を制限しかつ消費者の義務を加重し、信義誠実の原則に反して消費者の利益を一方的に害するものであるから、消費者契約法10条により無効である。②保証会社は上記保証委託契約が消費者契約法10条により無効であることを知っていたと推認されるとして、更新料受領の不当利得について悪意の受益者性を認定。③保証会社は、消費者契約法10条により無効であることを知りながら上記保証委託契約を賃借人に締結させた上、不当な請求や退去の勧告を組織的に行っており、不法行為に該当するとして、賃借人の損害賠償請求を認めました。

 

3 金貨を販売し換金する形で現金を提供する、いわゆる「金貨金融」は実質上金銭消費貸借契約であり、暴利行為であって公序良俗に反し、無効であるとした(札幌簡裁平成23年1月14日判決)【判例時報2105号103頁】

 本判決は、業者が、消費者に対し、金貨を代金後払いで販売し、買取先を紹介して換金させた上、代金として、換金額を上回る金員の支払を求めた事案につき、上記取引は、全体的にみると業者が金融を得ることが困難な消費者を誘い込み、交付した金貨の換金を名目として被告に一定額を融資し、その数日後に売買代金の名目で融資額よりも高額の金員の回収を得ようとするものであり、実質上は金銭消費貸借契約であるとした上で、実質的に年率約2000%の割合の利息が付された金銭消費貸借である上記取引は、暴利行為に該当するため、公序良俗に反して無効であると判示しました。

4 建物の賃借人が契約満了前に退去した場合の、未使用期間に対応する礼金の返還請求が認められた判決(大阪簡裁平成23年3月18日判決)

 本判決は、賃貸住宅を契約満了前に退去した賃借人が、賃貸人に対し、礼金の返還を求めた事案につき、礼金の主な性質は賃料の前払いであり、建物使用の対価にあたるとした上で、賃借人が契約満了前に退去した場合には未使用期間に対応する礼金を返還することは当然であり、中途解約でも礼金を返還しないとの契約内容は、消費者利益を一方的に害するものであり無効であると判示しました。                【平成23年4月14日付報道】

5 丸和商事㈱の民事再生手続について

 丸和商事㈱が、平成23年4月8日、東京地方裁判所に民事再生手続を申し立て、同年4月14日、民事再生手続開始決定がなされました。

 係属部:東京地方裁判所民事第20部

 再生債権の届出期間:平成23年6月30日まで

 再生債権の一般調査機関:平成23年8月5日から同8月12日まで

 報告書等(民再法124、125条)の提出期限:平成23年6月14日

 再生計画案の提出期限:平成23年8月19日