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消費者問題速報 VOL.89 (2011年3月)

1 証券会社の従業員の勧誘を受け,投資信託をした原告への不法行為責任を認めた事例(東京地裁平成23年2月28日判決)

 いわゆるノックイン型投資信託の勧誘に関する事例です。被害者は81歳の独居老人です。判決は、①「本件投資信託に関する一応の説明をしたことがうかがわれる」としながらも,②リスク性の高い投資商品である,③原告が積極的な投資意向を有していたとはいえない,③本件投資信託の仕組みやリスクについては理解が容易なものであったとはいえない,④日経平均株価が株価観測期間中にワンタッチ水準を下回る可能性が具体的にどの程度の確率で存在するかについては何ら説明していない,⑤上司である支店長が原告の息子の承諾をとるよう指示したにもかかわらず,担当者が息子に具体的な投資信託の内容・金額を説明したとは考え難い,⑥「原告の投資経験,知識,理解力に応じ,原告が自己責任で本件投資信託の取引を行うことができる程度に十分に説明しなかったし,被告内部において高齢者との取引を慎重に行うべきものとしているにもかかわらず,本件投資信託の取引においてはそれが履践されていなかったものと推認することができる」として不法行為の成立を肯定しました。なお,⑦過去にノックイン型投資信託を購入しており,検討の機会があったなどとして,4割過失相殺が認められています。

2 ①未公開の自社株式の売却及び預金口座の開設が,第三者による詐欺的行為(未公開株商法)への積極的加担であるとして,株式発行会社の不法行為責任が認められた事例。②株式発行会社が第三者の詐欺的行為に積極的に加担していたと推認するのが合理的であるとして,株式発行会社の不法行為責任を肯定した事例(東京地裁平成23年2月24日)。

 本判決は,いずれも未公開株商法について株式発行会社の不法行為責任を肯定した事例です。①では,ランサーテクノロジーの代表者が未公開株販売業者に出入りしていたことから詐欺的行為を容易に予見できたのに株式を販売したとしたうえで,口座開設者に印鑑証明を交付し,銀行からの在籍確認に応じ,カードを受け取ったことを認定し,自社株式の売却及び預金口座の開設によって詐欺的行為に積極的に加担したものと判示しています。②では,ヒューマンユニテックが多数の一般投資家に対し上場の見込みがないのに客観的価値を上回る価格で同社の未公開株を販売し続けることができたのは,ブローカーによる詐欺行為があったからであるとしました。そのうえで,販売代金がヒューマンユニテックの管理口座に入金され,直ちに払い戻されるという不自然な行為が繰り返されたこと,当該口座が口座凍結されたことなどを認定し,ブローカーと共謀のうえ詐欺的行為をしたものと推認するのが相当と判断しました。

3 届出のない再生債権である過払金返還請求権について,届出があった再生債権と同じ条件で弁済する旨を定める再生計画がある場合,上記過払金返還請求権は再生計画認可決定の確定により権利の変更を生ずるとした事例(最高裁平成23年3月1日判決)

 クレディアの再生計画には,①「届出のない再生債権である過払金返還請求権について,請求があれば再生債権の確定を行った上で,届出があった再生債権と同じ条件で弁済する」とされており,権利変更の一般的基準として,②「届出のない再生債権である過払金返還請求権については,その債権者により請求がされ,再生債権が確定した時(訴訟等の手続がされている場合には,その手続によって債権が確定する。)」に「権利の変更を受け,その時から3か月以内に」変更後の金額を弁済する旨記載されていました。

 上記事実関係の下,原審は,届出のない再生債権である過払金返還請求権は,判決の確定等によってはじめて確定するから,口頭弁論終結の時点で権利の変更はいまだ生じておらず,再生計画を根拠として弁済期の未到来をいうクレディアの主張は失当であるとして,請求を一部認容しました。

 これに対し,本判決は,上記①②を,「過払金返還請求権については,届出のない再生債権についても一律に民事再生法181条1項1号所定の再生債権として扱う趣旨」と解し,「上記過払金返還請求権は,本件再生計画認可決定が確定することにより,本件再生計画による権利の変更の一般的基準に従い変更され」るものと判示しました。その上で,判決の確定等を条件として,権利の変更されたところに従ってその支払いを受けられるから,口頭弁論終結時にはいまだ弁済期が到来していないとして,原審を破棄しています。

4 消費者相談事例検討会の実施について

 平成23年4月から同年9月までの間,愛知県弁護士会5階ホールにて,下記のとおり消費者相談事例検討会を試行的に実施します。同年10月からは相談員に対して年間数回の出席を義務付けることを検討していますので,ご協力の程よろしくお願いします。

 記

 平成23年4月27日(水)午後3時~午後5時

 平成23年5月27日(金)午後3時~午後5時

 平成23年6月28日(火)午後3時~午後5時

 平成23年7月27日(水)午後3時~午後5時

 平成23年8月29日(月)午後3時~午後5時

 平成23年9月27日(火)午後3時~午後5時

 以上