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消費者問題速報 VOL.88 (2011年2月)

 愛知県弁護士会消費者対策特別委員会

1 商品CFD取引について,適合性原則違反を認め,業者(株式会社)と従業員の不法行為責任及び取締役の第三者責任を認めた事例(東京高裁平成23年1月20日判決)

 本判決は,口座開設申込書の記載から,取引開始当時満75歳,年収及び金融資産とも最低区分である300万円未満で,「株式及び投資信託は10年位,商品先物は1年位」の投資経験を有したと認められる女性(故人)に対する商品CFD取引の勧誘・実施行為について,商品特性,本人の投資経験,知識,投資意向及び財産状態等を総合考慮し,適合性原則違反を認めました。なお,「この度,貴社での業務管理規則に適合しない事を確認しましたが,担当者に説明を受け是非取引を行いたいと思いますのでよろしくお願いします」という本人自筆の申出書が徴求されている点については,定型的形式的な記載内容であり適格性を裏付けるものとは言えない旨判示しています。  

 

2 未公開株商法について,①ブローカーに株券を交付した発行会社(ランサーテクノロジー株式会社),②勧誘に使用されたレンタル携帯電話の契約名義人に,各々不法行為の幇助責任(民法719条2項)を認めた事例(東京地裁平成22年12月22日判決=確定)

①につき,判決は,「ブローカーに株式を譲渡すれば,譲渡した株式が未公開株商法に利用されることは容易に予見できたのであるから,ブローカーに株券を交付した行為は,上記未公開株商法の幇助に当たる」と判示しました。

 また,②につき,契約名義人が「儲け話があると持ちかけられ,運転免許証の写しを知人Aに渡した。免許証写しが携帯電話のレンタル契約に無断で利用されてしまったようだが,自分はレンタル携帯電話を利用しておらず,未公開株商法に関与していない。また,譲渡した免許証写しが携帯電話のレンタル契約に利用されることや,その電話が未公開株商法に悪用されることまでは全く予見できなかった。」旨主張したのに対し,判決は「運転免許証の写しを渡したことによって,受領者に携帯電話のレンタル契約を締結させ,同電話番号を利用した未公開株商法を容易にさせているから,免許証写しを渡した行為が未公開株商法の幇助に当たる」とした上で,「免許証写しを渡すことによって,その受領者等が免許証写しを利用することは予見できたのであるから,その結果,携帯電話のレンタル契約が締結され,未公開株商法が行われたことにつき少なくとも過失があった」と判示して,過失による幇助責任を認めました。

 【証券取引被害判例セレクト38号】

3 先行する投資被害の回復名下にイラク通貨(ディナール)を時価の50倍以上の金額で購入させた取引について,業者(合同会社)の名目的業務執行社員の第三者責任を認めた事例(名古屋地裁平成23年1月21日判決)

 判決は「名目的な業務執行社員であっても,会社法上,従業員らの会社業務執行に対する監視,監督業務を負うものであって,その責任の程度が実質的な業務執行社員に比べて軽減されるものではないと解される。しかるに,被告は,本件会社の業務執行社員に就任しながら,業務執行社員としての職務に何ら従事しなかったのであるから,職務懈怠があり,かつ,そのこと自体は認識していたものと認められる,仮に,被告が,法律を誤解し,名目的な業務執行社員には職務を果たす責任がないと認識していたとしても,そのような認識が誤りであることは,業務執行社員への就任を承諾しようとする者にとっては容易に調査可能であるというべきであるから,そのような調査を怠った点については重大な過失がある」と判示しました。

 

4 出会い系サイト被害について

 出会い系サイト被害弁護団では,平成23年2月4日,サイト運営会社に対して損害賠償を求める訴えを提起しました。原告は,岐阜県内の30代男性。事案は,原告が,「ちほ」と名乗る女性とのメール交換で高額なポイント料を請求され,また,ちほの母,サイト事務局から情報開示料を要求されるなどした結果,合計1090万円をサイト運営会社に振り込んでしまったが,一度も会えていないこと,あまりにも暴利であることなどから詐欺被害だとしか考えられない,というものです。

 なお,出会い系サイト被害弁護団では,弁護士会と共催で,平成23年3月7日(月)午前10時~午後4時に,出会い系サイト被害110番を実施します(電話:052-223-2355)。ご協力をお願いします。