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消費者問題速報 VOL.87 (2011年1月)

1 業者に信義則上の取引履歴保管義務違反を認め、推定計算の真実擬制を認めた判決

 東京高等裁判所は、平成22年12月15日、新生フィナンシャルの「平成5年9月以前の取引履歴を廃棄した」という主張を認めながらも、同記録に対する信義則上の保存義務を認定し、これに違反する廃棄は「過払金の返還を免れるという確固たる目的が併存していたものと推認できる」として、立証妨害の目的を認定しました。そのうえで、借主の推定計算を真実と擬制した判決を出しました(民訴法224条2項、同3項)。

 なお、原審裁判所では、文書提出命令が却下されていました。

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2 タンポートからプロミスへの過払金返還債務の承継を認めた判決

(1)平成22年12月22日 東京高等裁判所判決

 東京高等裁判所は、プロミスによるクオークローンの過払金返還債務の承継に関して、プロミスグループによる組織再編の経過を認定し、その中で行われた借主に対する説明及び残高確認書兼振込代行申込書の徴収等の経緯を踏まえて、再編手続は貸金業者の内部的問題であって、借主は、「これによって格別不利益を被ることがないとの認識の下に」切替手続を受け入れてきたものであると認定しました。そして、プロミスが、過払金返還債務の負担を否定することは、「契約切替えに同意した顧客の信頼を損なうものであり,信義則に違反し,許されない」と判示しました。

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(2)平成22年12月21日 大阪高等裁判所判決

 大阪高等裁判所は、プロミスによるクオークローン(当時はタンポート)の過払金返還債務の承継に関して、同社らが借主に提出を求めた残高確認書兼振込代行申込書に、借主が所定事項を記入し提出したことをもって、併存的債務引受における受益の意思表示と認め、過払金返還債務の承継を認める判示をしました。

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3 預金債権差押において、差押債権に関し、取扱支店の具体的明示がなくても差押債権の特定を欠くものではないとした決定

 東京高等裁判所は、平成23年1月12日、三菱東京UFJ銀行に対する預金債権を対象とする債権差押命令申立事件で、差押債権の範囲につき、預金の間には順序を付しつつも、取扱支店に関して「複数店舗に預金債権があるときは、支店番号の若い順序による」とするのみで、具体的な取扱支店名を特定しなかった事案で、差押えの対象が特定されていないとして申立を却下した原決定を取り消す決定をしました。

 東京高裁は、債権の特定を欠くと解すべき場合とは、「第三債務者において、通常想定される業務内容等に照らし、社会通念上合理的と認められる時間と負担の範囲内で、差押えの目的物となる債権を確定することが困難であると認められる場合」であるとしたうえで、金融機関における顧客情報管理システムが更新されている社会状況等を踏まえて、同行は、「顧客の氏名又は照合等に基づき、特定顧客が有している全店舗の預金を速やかに検索できる機能を備えた顧客情報管理システム又は名寄せシステムを有している金融機関」であり、具体的な取り扱い支店名を特定せずとも、差押えの目的物となる債権の特定を欠くとはいえないと判断したものです。

 

4 全国証券問題研究会(広島大会)開催のご案内 

 平成23年2月18日~19日,広島市で全国証券問題研究会が開催されます。大会では、松原正至教授(広島大学大学院社会科学研究科)のご講演「金融商品取引法上の投資家保護(仮題)」が、中嶋弘弁護士のご講義「証券訴訟における立証のノウハウ,工夫について(仮題)」が行われるほか、各種証券事件に関する勝訴判決報告などが予定されています。詳細のお問い合わせ,参加のご希望は,石川真司会員(052-950-5355)までご連絡をお願いします。

5 先物取引被害全国研究会(沖縄大会)開催のご案内 

 平成23年4月1日~2日,沖縄県那覇市で先物取引被害全国研究会が開催されます。大会では、山本顯治教授(神戸大学大学院法学研究科・民法担当で、行動経済学におけるプロスペクト理論という切り口から業者の勧誘行為について違法性評価を行う研究等をなさっています)のご講演が予定されています。詳細のお問い合わせ,参加のご希望は,事務局長の石川真司会員(052-950-5355)までご連絡をお願いします。