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消費者問題速報 VOL.86 (2010年12月)

1 不動産投資ファンドへの出資の媒介をした証券会社に、リスクについての説明義務違反による不法行為を認めた判決

 大阪地方裁判所第13民事部平成22年10月28日判決は、投資家の出資金に銀行からの借入金(出資金の400%)を加えることで5倍のレバレッジを効かせた住居用不動産を信託財産とする信託受益権を中心に投資するファンドについて、「投資対象の不動産が1割値下がりすると、出資金は約半分になること」や「不動産が2割値下がりすると、出資金はほとんど0円になる可能性があること」などを説明する義務があったとして、説明義務違反による不法行為を認めた。

 

2 株式の信用取引において適合性原則違反、説明義務違反、過当取引を認めて9割の損害賠償を認めた判決

 大阪高裁第4民事部平成22年10月29日判決は、属性として昭和47年生まれの男性で、身体に障害があり、取引当時は無職、収入は月額約8万円の障害年金のみで、金融資産は800万円程度の預金のみという被害者が、現物株取引を2年4か月ほど続けた後、途中から信用取引を開始した取引について、「初回の信用取引からいきなり757万円という、それまでの現物株式の購入総額をも上回る買建てを行っていること」や、「信用取引開始のための諸手続の全てが勧誘が行われたその日になされたこと」などを認め、原審と同じく信用取引に関する適合性原則違反、説明義務違反、過当取引を認め、過失相殺については原審が2割としていたのを1割に変更する旨の判示をした。

 

3 貸金業法施行日以後に基本契約書を書き替えた契約について、みなし弁済の適用を受けるための脱法行為とも言えるとしてみなし弁済規定の適用自体を排除し、その帰結として悪意の受益者性を認めた判決(アコム控訴中)

 神戸地裁尼崎支部第2民事部平成22年9月6日判決は、アコムに対する過払金返還請求事件において、当初借入は昭和55年であるが、昭和62年に新たに基本契約が締結されたことから少なくとも同基本契約日以降についてはみなし弁済規定の適用が認められるべきとの被告の主張に対して、同基本契約が単なる借換えにすぎない、あるいは、旧貸金業法附則6条1項を免れるための脱法行為とも窺われるなどとしてみなし弁済規定の適用自体を排除し、その帰結として悪意の受益者性を認める旨の判示をした。

 

4 平成5年4月以降の個別明細書の抽出データが提出されたが、それ以前の18条書面の提出がないなどとして、全取引について悪意の受益者性を認めた判決

 大阪地裁第25民事部平成22年7月15日判決は、アコムに対する過払金返還請求事件において、当初借入が平成3年と平成4年の取引(原告は2名)について、被告が、17条書面と18条書面のひな形および平成5年4月以降の分について、原告らに交付した個別明細書の1取引ごとに抽出したデータを証拠として提出したが、多数の振込や提携ATM取引があり個別明細書のデータが存在しないことや、平成5年4月より前の18条書面の提出がなく、原告にどのような書面が交付されたかは不明であることを理由として、全取引について悪意の受益者性を認める旨の判示をした。