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消費者問題速報 VOL.85 (2010年11月)

1 取引期間に1年1ヶ月と2年9ヶ月の空白期間があり証書貸付の部分もあるが、全体として一連一体の取引とした判決

 名古屋高等裁判所民事第3部平成22年10月7日判決は、武富士に対する過払金返還請求事件において、取引期間に1年1ヶ月と2年9ヶ月の空白期間があり、証書貸付の部分もあるが、取引の通算期間が19年6ヶ月に比して空白期間が長すぎることはないとして、全体を一連一体の取引と認め、原判決を変更する判示をした。

 【名古屋消費者信用問題研究会HP

2 アエル(株)とJPモルガン信託銀行(株)の貸金債権譲渡及びJPモルガン信託銀行とエヌシーキャピタル(株)間の貸金債権譲渡においてアエルの営業権の譲渡があったことを認めた判決

 名古屋地方裁判所民事第4部平成22年10月14日判決は、アエルがJPモルガンに原告に対する貸金債権を譲渡し(信託譲渡)、JPモルガンはエヌシーキャピタル(被告)に原告に対する貸金債権を譲渡したところ、被告エヌシーキャピタルは、JPモルガンから単純に貸金債権を譲り受けただけでアエルの貸金業に関する営業権は譲渡されていないと主張したが、アエルとJPモルガンとの譲渡契約書又はJPモルガンと被告との譲渡契約書を提出せず、債権譲渡契約の内容を明らかにしないので、営業権が譲渡されていないとは認められない、として原告の過払い金返還請求を認めた。

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3 極度額及び担保付きの有無等の契約条件に変更があっても1個の連続した取引と認めた判決

 名古屋地方裁判所民事第6部平成22年10月27日判決は、継続的な金銭消費貸借取引による過払金返還請求事件において、平成4年4月8日から平成15年5月6日迄約11年1ヶ月は極度額50万円、無担保の取引が、同日、極度額500万円、根抵当権及び連帯保証人付きの取引に変更され、利率も第1取引の最後の29.2%が第2取引の最初の年17.5%に変更されたが、契約番号に変更がないこと、第2取引の契約書に第1取引の残元金及び利息遅延損害金が含まれている旨の記載があること及び第1取引のカードが第2取引でもそのまま使われていること等から、第1取引と第2取引とは1個の連続した取引であり、一連計算ができると判示した。

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4 一部分の取引履歴のみを開示した資料を基に特定調停が成立しているとき、借主に要素の錯誤があり、その錯誤に重過失があるといえないので、調停は無効とした判決

 名古屋高等裁判所民事第二部平成22年10月28日判決は、過払金返還請求に関して、貸金業者が正確な取引履歴を開示せず、一部分の取引履歴のみを開示した資料を基に特定調停が成立しているとき、その調停は、借主に要素の錯誤があり、その錯誤について借主に重過失があるといえないので、調停は無効と解されると判示した。【名古屋消費者信用問題研究会HP

 

5 2件の過払金請求事件を併合、訴額140万円以上として地裁に提訴、地裁は事件を分離してそれぞれ簡裁へ移送する決定をしたが、高裁がその移送決定を法令解釈の誤りとして取消した決定

 名古屋高等裁判所民事第二部平成22年11月9日決定は、2名の原告が、訴額を合計すると140万円以上となるため一つの訴えで名古屋地裁に提訴したところ、地裁は、民訴法7条の解釈として併合請求による管轄が生じない、併合請求が可能であることを前提とした法9条は適用されないので併合請求の場合の訴額の算定方法は適用されない、としてそれぞれ簡裁に移送した決定について、法7条は事物管轄の規定ではなく、土地管轄の特則であるとして訴額合算による事物管轄を認め、原決定を取り消す決定をした。