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消費者問題速報 VOL.84 (2010年10月)

 愛知県弁護士会消費者対策特別委員会

1 「クオークローン」(→「タンポート」→現商号「クラヴィス」)からプロミスへの承継を認めた判決(会社名については原文ママを記載)

① 名古屋高等裁判所民事第2部は、平成22年10月14日、クラヴィスとプロミスとの間の併存的に債務引受する旨の債務引受条項のある譲渡契約は、譲渡通知後、控訴人においてプロミスに対する返済に応じてきた経過により、控訴人に対して効力を生じ、その後のクラヴィスとプロミス間の併存的債務引受の解除を含む変更契約に対しては、控訴人の承諾はなく、効力は生じないとして、クラヴィスからプロミスへの過払金債務の承継を認めなかった原審を変更した。

 【名古屋消費者信用問題研究会HP】

② 大阪高等裁判所第1民事部は、平成22年9月14日、タンポートとプロミスとの間の併存的に債務引受する旨の債務引受条項のある譲渡契約は、第三者のための契約であり、被控訴人による「残高確認書兼振込代行申込書」の作成・提出により受益の意思表示が認められるとして、被控訴人に対して効力を生じ、その後のクラヴィスとプロミス間の併存的債務引受の解除を含む変更契約は、民法538条に従い効力は生じないとして原審を維持した。

 【名古屋消費者信用問題研究会HP】

2 ハイリスク型投資信託につき適合性原則違反を認め、過失相殺なしとした判決

 名古屋地方裁判所は、平成22年9月8日、精神疾患に罹患していた顧客が野村證券に対し、投資信託や外債などの証券取引による損失について、不法行為に基づく損害賠償を求めた事案につき、担当社員らにおいて、概ね顧客の精神疾患を把握しながら、かかる精神疾患のほか、本来的に証券投資に関する知識経験が十分ではなく、営業担当者に依存する傾向が強い顧客に対し、思うがままに取引を勧誘した行為に適合性原則違反を認め、顧客及び顧客の親族における顧客の財産管理への落ち度を理由とする過失相殺の主張を排斥し、損害賠償請求を認めた。

3 証券業の登録ない業者の行為につき不法行為責任を認めた判決

 名古屋地方裁判所半田支部は、平成22年10月6日、投資組合に入会した顧客に対して行った証券業の登録のないエイシャンドリーム社による旧証券取引法2条及び28条に違反する行為に関し、被告会社において積極的に株式の購入等を勧める内容の文書を送付した行為等について、エイシャンドリーム社の違法行為を共同実行した、少なくとも、違法行為を幇助したとして不法行為責任を認めるとともに、被告会社においてサンラ・コーヒー組合の出資に関し、被告会社自身に出資法1条(出資金の受入の制限)の違反行為につき不法行為責任を認め、合わせて、被告会社の代表取締役につき旧商法266条の3第1項に基づき、被告会社の実質的意思決定者に対して民法709条に基づき、不法行為責任を認めた。

 

4 為替連動型仕組債の購入に関し、顧客の錯誤無効を認めた判決

 大阪高等裁判所平成22年10月12日、証券会社から為替連動型の仕組債購入の勧誘を受けて、顧客が一旦は電話で承諾したものの同日の夕方にキャンセルを申し出たところ、証券会社はキャンセルには応じず、顧客から預託を受けていたMRFなどを購入代金に充当し、さらに不足する購入代金を請求した事案につき、顧客の錯誤無効の主張を認めました。

 仕組債の償還期限が30年とあまりにも遠い将来であること、購入代金が5000万円と高額であること、仕組債は市場での売却が著しく困難であること、長期の償還期限までの為替相場及び金利相場の変動状況、発行会社や保証会社の存続可能性を見越して仕組債に組み込まれた償還条件や利子の条件が有利であるか否かの判断は個人の一般投資家に著しく困難であること、証券会社による説明が不十分であったことなどから、仕組債を購入する上で重要な事項について錯誤に陥っていたと判断しました。

5 株式や投資信託の取引を委託した証券会社に不法行為責任が認められた判決

 大阪高等裁判所第3民事部は、平成22年9月16日、顧客から委託を受け、株式や投資信託の取引をおこなった証券会社の担当者において、顧客に対し著しく過大な危険を伴う取引を積極的に勧誘した点で不法行為が成立するとともに、顧客につき7割の過失相殺を適用した原審につき、顧客において①取引経験を積みながら取引態様を変えていること、②消極的投資以降から脱却し、より積極的な投資以降を有するようになったこと③証券会社担当者の訪問、協議等が顧客の投資判断に支障を生じさせていないことなどを理由に不法行為責任を争った証券会社の主張を退け、原審の判断を維持した。