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消費者問題速報 VOL.83 (2010年9月)

1 タンポートからプロミスへの過払金の承継を認めた判決

 名古屋高裁平成22年7月22日判決は,タンポートからプロミスへの切替手続(書類上はプロミスからの借入によりタンポートに返済)について実態・背景を詳細に事実認定し,契約上の地位の承継及び過払金返還債務の併存的引受を認めました。併せて,プロミスが,顧客がプロミス・タンポート間の業務提携契約における併存的債務引受条項の存在を知らないとか,同条項が変更合意によって消滅した旨主張して過払金債務の履行を拒否することは信義則に反する,と判示しました。

 【名古屋消費者信用問題研究会HP】  

2 武富士の悪意の受益者性を肯定した判決

 名古屋地裁平成22年8月19日判決は,武富士が証拠として大量の「ATMお取引明細書(領収書)」を提出して悪意の受益者性を争った事案において,同書面は「返済期間及び返済回数」「各回の返済期日及び返済金額」の点で17条書面の記載としては不正確であると認定のうえ,武富士がみなし弁済規定の適用があると認識するに至ったことについてはやむを得ない特段の事情はないとして,武富士を悪意の受益者としました。

 【名古屋消費者信用問題研究会HP】  

3 池田銀行(現・池田泉州銀行)の高齢者に対するノックイン型投資信託販売について,適合性原則違反及び説明義務違反を理由として損害賠償を認めた判決

 大阪地裁平成22年8月26日判決は,池田銀行が,みずほ投信投資顧問㈱の代理人として,一人暮らしの高齢女性(取引当時79歳)に対し,7か月間のうちに4回合計2000万円分のノックイン型投資信託(償還期間中に日経平均株価が基準価格を下回らなければ分配金が入るが,一度でも下回れば元本割れの損失が生じるもの)を販売した事案について,池田銀行の不法行為(適合性原則違反及び説明義務違反)を認め,損害賠償(保有中のものについては口頭弁論終結時の時価と購入価格の差額が損害)を命じました(過失相殺2割)。

 【全国証券問題研究会】  

4 ㈱オフネルによる「商品CFD取引」と称する取引について,それ自体賭博であり違法として,同社及び役員に対し損害賠償を命じた判決

 東京地裁平成22年8月25日判決は,㈱オフネルが「商品CFD取引」と称して顧客との間で行っていた相対取引について,それ自体賭博行為である,仮にCFD取引が一般的に適法なものだとしても,同社における預託金,取引等の管理の仕組みや実態が明らかでないことに照らすと,本件取引を他のCFD取引と同様に適法なものと認めることは困難である,として同社及び役員の不法行為責任を認め,損害賠償を命じました(過失相殺なし)。

  

5 商品先物取引を扱う大起産業㈱に対し,不当勧誘,断定的判断の提供(勧誘時),説明義務違反,実質一任売買,過当取引を理由として,損害賠償を命じた判決

 岡山地裁平成22年8月27日は,商品先物取引において,大起産業㈱が,顧客である34歳男性(大卒・リフォーム会社支店長)に対して,不当勧誘,勧誘時の断定的判断の提供,説明義務違反,実質一任売買及び過当取引をしたとして,同社の不法行為責任を認め,損害賠償を命じました(過失相殺2割)。 

  

6 先物取引被害全国研究会(新潟大会)開催のご案内

 平成22年10月29日~30日に,新潟市で先物取引被害全国研究会が開催されます。「ブラッシュアップセミナー-断片的ノウハウの提供」(講師:大植伸先生),「投資取引における適合性原則と説明義務を巡る日独法の比較」(講師:川地宏行明治大学教授)の他,主務省の担当者による法改正を巡り現状解説,未公開株被害事案の現状報告・対策研究報告が予定されています。詳細のお問い合わせ,参加のご希望は,事務局長の石川真司会員(052-950-5355)までご連絡をお願いします。