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消費者問題速報 VOL.82 (2010年7月)

1 商品先物取引に関する和解金が所得税法の非課税所得に当たるとされた判決

 名古屋高等裁判所民事第3部は,平成22年6月24日,商品先物取引に関し商品取引員である三晃商事から不法行為に基づく損害賠償金として受け取った和解金が,所得税法9条1項16号,所得税法施行令30条2号の非課税所得に当たるとし,処分行政庁がした所得税の更正処分の取消請求を全部認容した1審名古屋地裁判決を支持し,国側の控訴を棄却しました。

2 未公開株式の販売について退任後の役員に対する責任も認めた判決

 東京地方裁判所は,平成22年6月28日,上場予定もない未公開株式を近日中に上場予定と偽り販売した不法行為につき,共謀があったと認められる者のうち,①取引開始の約5ヶ月前に取締役を辞任した者と,②取引開始時期の3ヶ月前に取締役を辞任した者に対し,販売スキームの構築に関与し辞任の際にその後の被害の拡大防止について措置をとっていないことから,共謀関係が消滅したとはいえないとし,①②両者の責任を認めました。

 (先物取引裁判例集に掲載予定)

3 海外先物取引業者が報告を拒んだことにつき不法行為責任を認めた判決

 東京地方裁判所は,平成22年6月18日,海外商品先物取引業者に対し,継続的委託取引終了に伴い,受託した事務に係る経過及び結果を遅滞なく報告すべき義務を負うものとし(商法552条2項,民法645条),報告すべき事項の内容からすれば,その報告は書面によることが相当と認められ,報告を拒み続けている業者の対応に正当な理由はなく、不法行為を構成するとして,業者に対し損害賠償の支払いを命じました。(先物取引裁判例集に掲載予定)

4 出会い系サイト被害弁護団の結成について

 7月12日に実施された出会い系サイト被害110番では,31件もの多数の相談が寄せられました。そこで,被害救済のため,出会い系サイト被害弁護団が結成されました。弁護団長は平井宏和会員,事務局長は鵜飼雅成会員(052-529-6155)です。

5 マルフクからCFJ(ディック)への過払金返還債務の承継を認めた判決

 名古屋高等裁判所民事第2部は,平成22年7月8日,①資産譲渡契約によりCFJとマルフクは営業譲渡契約を締結したもので,契約上の地位も移転している,②貸金債権の譲渡につきなされた借主の異議なき承諾は,金銭消費貸借契約上の地位の移転についての承諾の趣旨を含む,③資産譲渡契約締結時点で,借主において,利害得失を理解し,これを承知の上で契約上の地位の移転を承諾したなどの特段の事情がなければ,借主の通常の意思が,みなし弁済の成否から生じる法律関係を含む趣旨において承諾をしたものと解するのが自然かつ合理的であるとし,過払金の承継を認めました。  

 【名古屋消費者信用問題研究会HP】

6 タンポートからプロミスへの切替を認定した判決

 名古屋高等裁判所民事第2部は,平成22年5月27日,借主は、タンポートの廃業後は従前と同様の継続的な金銭消費貸借関係がプロミスとの間において維持されるとの認識を前提として「切替契約」の締結に応じたものと推認され,本件貸付けは,タンポートからプロミスに対し契約内容の一部変更を伴う契約上の地位の譲渡が行われ,「残高確認書兼振込代行申込書」と題する書面を提出してこれに同意したことにより,契約上の地位の譲渡が効力を生じたものとし,不当利得返還請求を認容した原判決を支持しました。

 【名古屋消費者信用問題研究会HP】

7 取引経過未開示部分に調停に代わる決定の効力は及ばないとした判決

 名古屋高等裁判所民事第2部は,平成22年5月13日,民事調停法17条による調停に変わる決定に基づく支払が完了している事例について,本件特定調停の対象は取引履歴開示部分に限られ,それより前の取引によって生じた過払金の有無等については決定の効力は及ばないとしました。

 【名古屋消費者信用問題研究会HP】

8 基本契約書がなく個別的に契約書を作成して行われた取引について過払金充当合意を認めた判決

 東京高等裁判所は,平成22年6月2日,最高裁平成21年12月1日判決の差戻審において,仮に基本契約書は作成されていなくとも,取引開始当初,借主が約定どおり返済すれば,完済前であっても,前貸付の元金と利息を新貸付の元金に組入れる方法により,それまでの弁済額を考慮して,新たな貸付をする旨の基本的な合意が成立していたものと推認され,また,各貸付に際し,前貸付の残元利金を新元金に組入れて旧貸付を清算することを予定していたものと認められるから,基本合意には,仮に過払金があればそれを新たな貸付金債務に充当する旨の合意も含まれているとし,ネットカードに過払金の支払いを命じました。 【ベル法律事務所ホームページhttp://www.bell-law.jp/hp_hanrei 】