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消費者問題速報 VOL.81 (2010年6月)

1 FX取引業者らの監査役に責任を認めた判決

 東京地方裁判所民事第17部は,平成22年4月19日,FX取引業者の区分管理義務違反について,FX取引業者の取締役・監査役,当該FX取引業者に証拠金を委託せずに取引を行っていた関連会社の監査役に対して,会社法429条1項,同430条の責任を認めて,毀損された証拠金相当損害金等の損害賠償を命じました。(先物取引裁判例集に掲載予定) 

2 呉服販売業者従業員への商品売りつけを公序良俗違反で無効とした判決

 名古屋地方裁判所民事第7部は,平成22年4月22日,呉服販売業者に対して,自社営業社員との間の自社商品の売買契約は,上司から購入を強要されたことによりやむを得ず購入したものであったところ,上司による自社商品の購入の強要は販売業者における売り上げ目標達成に向けた厳しい管理体制のもと,上司が人事権などを背景に,人事異動や処遇上不利益をちらつかせながら,従業員の弱い立場につけこんで行われたものであったと推認されるものであり,かかる強要による売買契約は,公序良俗に反し無効であるとして,従業員がクレジット契約によって支払った金額の返還を命じました。

3 パチンコ攻略法被害に関する判決

 大阪地方裁判所第23民事部は,平成22年5月12日,パチンコ攻略法雑誌広告の雑誌発行元会社及び広告代理店に対して,広告に対する読者の信頼は,雑誌や発行者に対する信頼と全く無関係ではない,雑誌社や広告代理店は読者に不測の損害を及ぼすことを予見した場合には真実性を調査確認する義務があるとして,打ち子募集広告に関し真実性に疑念を抱くべき特別の事情があったとして,パチンコ攻略法の雑誌広告を見て購入した情報が虚偽で被害を受けたとする雑誌購入者に損害賠償の支払いを認めました。  【最高裁判所HP】

4 耐震強度に関し錯誤を認めた判決

 札幌地方裁判所民事第3部は,平成22年4月22日,新築マンションにあっては,耐震強度に関する錯誤は,錯誤を主張する者に契約関係から離脱することを許容すべき程度に重大なものというべきであり,民法95条の錯誤に該当するものと認めるのが相当であるとして,購入者における買受けの意思表示は無効であり,販売者は,購入者に対し,売買代金を返還する責任を負うとしました。                        

5 欠陥住宅建替えで居住利益控除論,耐用年数伸長論を否定した最高裁判決

 最高裁判所第一小法廷は,平成22年6月17日,売買の目的物である新築建物に重大な瑕疵がありこれを建て替えざるを得ない場合において,当該瑕疵が構造耐力上の安全性にかかわるものであるため建物が倒壊する具体的なおそれがあるなど,社会通念上,建物自体が社会経済的な価値を有しないと評価すべきものであるときには,上記建物の買主がこれに居住していたという利益については,当該買主からの工事施工者等に対する建て替え費用相当額の損害賠償請求において損益相殺ないし損益相殺的な調整の対象として損害額から控除することはできないと解するのが相当である,社会経済的な価値を有しない本件建物を建て替えることによって,当初から瑕疵のない建物の引き渡しを受けていた場合に比べて結果的に耐用年数の伸長した新築建物を取得することになったとしても,これを利益と見ることはできず,そのことを理由に損益相殺ないし損益相殺的な調整をすべきものと解することはできないとして,損害賠償額の減額を求めた業者側の上告を棄却しました。

 

6 更生会社に対する過払金返還請求に関する判決

 最高裁判所第二小法廷は,平成22年6月4日,更生会社であった貸金業者において、届出期間内に届出がされなかった更生債権である過払金返還請求権につきその責めを免れる旨主張することが信義則に反しないとしました。

 (関連判例)平成21年12月4日 最高裁第二小法廷判決 不当利得返還等請求事件

7 マンション更新料は無効とした判決

 大阪高等裁判所は,平成22年5月27日,賃貸マンションの家主が,更新料を支払わない借り主に10万6000円の支払いを求めた訴訟につき,「更新料は賃貸人や管理業者の利益確保を優先した不合理な制度で,消費者契約法により無効」として,請求を棄却した1審京都地裁判決を支持,家主側の控訴を棄却しました。高裁が更新料を無効と判断したのは3例目で,有効とした判決も1例あり,判断が分かれています。

8 平成22年6月18日から改正貸金業法が完全施行されました。

 詳しい内容は金融庁のホームページでご確認下さい。