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消費者問題速報 VOL.80 (2010年4月)

1 利息制限法1条1項の「元本」は引直し計算後のものをいい、その後に元本の額が減少しても、適用される制限利率は変更されないとした判決 

 最高裁判所第三小法廷平成22年4月20日判決は、継続的金銭消費貸借取引に関して利息制限法1条1項にいう元本を引直し計算後の額を基準とするとした原審を肯定し、引直し計算後の元本がその後減少しても、いったん無効となった利息の約定が有効になることはなく、制限利率が変更されることはないと判示しました。                  【最高裁判所HP

2 マルフクからCFJへの過払い金の承継を認めた判決

 名古屋高裁平成22年4月15日判決は、資産譲渡契約によって、CFJは、マルフクから有機的一体としての物的・人的営業資産を引き継がせることを目的とする営業譲渡契約を締結したものと解するのが相当であり、契約上の地位も移転している。資産譲渡において過払金返還債務を承継の対象から除外することは理論上は不可能でないが、過払金債務額の減少という不利益を甘受してもなお貸主と取引を継続する旨の借主の承諾がなければならない、と判示し過払い金の承継を認めました。      

 【名古屋消費者信用問題研究会HP

3 タンポートからプロミスへの切替に一連計算を認めた判決

 名古屋地裁一宮支部平成22年4月8日判決は、タンポートからプロミスへの切替手続を詳細に事実認定した上で、「(切替手続は、)三者の債権債務関係を整理、清算しようとするものであると認められるから、顧客とタンポートとの間の取引と切替手続による顧客とプロミスとの間の借入れ及び返済に係る取引とは、事実上1個の連続した貸付取引として引き直し計算するのが当事者の意思に合致する」として、一連計算を認めました。

 【名古屋消費者信用問題研究会HP】 

4 ビューローベリタスジャパン㈱の建築確認処分を取り消す旨の裁決

 建築基準法第56条の2第1項による日影規制に反するとして建築確認処分の取り消しを求めた審査請求において、審査請求がなされた後、処分庁から日影図の記載内容に誤記があったとして軽微変更報告書が提出された事案で、名古屋市建築審査会は、影倍率の記載の誤りは当初の確認申請を違法なものとする重大な誤りであって、これをもって当初の確認申請の瑕疵は治癒されないと指摘し、申請された緯度における影倍率を用いて日影規制への該当性を検討し建築確認処分を取り消しました。         

5 株式会社とその代表者の仕組債取引について、説明義務違反を認めた判決

 大阪地裁平成22年3月26日判決は、株価連動債の問題性を詳細に検討し、また株式会社とその代表者たる顧客の投資意向や投資に関する知識経験等を具体的内容に踏み込んで認定したうえで、証券会社の説明義務違反(過失相殺2割)を認めました。                

6 仕組債取引(為替連動債)について、説明義務違反・錯誤無効とした判決

 大阪地裁平成22年3月30日判決は、原告が、資金の長期拘束可能性ないし元本毀損リスクという投資判断にとって決定的に重要な事実を認識せず、かえって、証券会社担当社員による誤導的な言辞により、本件仕組債は元本毀損リスクなしに年15パーセントの利回りを相当程度の確実さで期待できると誤信していたとして、証券会社担当社員らの勧誘に説明義務違反があったことを認め、かつ錯誤無効の主張を認めました。      

7 定額補修分担金条項を消費者契約法10条違反により無効とした判決

 大阪高裁平成22年3月26日判決は、適格消費者団体である特定非営利活動法人京都消費者契約ネットワークが、不動産賃貸業者である長栄に対し、消費者との間で建物賃貸借契約を締結し又は合意更新するに際し、定額補修分担金条項を含む意思表示をすることの差止め等を求めた消費者団体訴訟で、「定額補修分担金条項」の違法無効を認めた1審判決の判断を支持しました。消費者庁は消費者契約法第39条第1項の規定に基づきこの判決の内容を公表しています。

8 家賃滞納による「追い出し屋」被害で名古屋地裁に提訴等

 アパート等の賃料を支払えない貸借人を司法手続きを踏まずに追い出し、無断で貸借人の私物を処分する「追い出し屋」の被害につき慰謝料等を求めて業者を提訴しました。また弁護士・司法書士有志が「追い出し屋対策会議あいち」を結成し、毎週金曜日の午後1時~午後4時まで電話相談を行っています(電話番号:052-911-9290)。

9 ACネットが消費者団体訴訟制度の適格消費者団体に認定

 非営利活動法人(NPO法人)あいち消費者被害防止ネットワーク(通称:ACネット)が、消費者団体訴訟制度の適格消費者団体として、内閣総理大臣により適格消費者団体に認定されました。今後は、不当な勧誘行為や不当な契約条項の改善の申入れを行ってもその事業者が自ら改善しない場合に、ACネットが原告となって事業者に対し差止請求訴訟を提起すること等ができます(http://www.a-c-net.com/index.html)。