愛知県弁護士会トップページ> 愛知県弁護士会とは > 消費者委員会 > 消費者問題速報

消費者問題速報 VOL.79 (2010年3月)

1 17条書面、18条書面のサンプルによる主張を認めなかった判決

 名古屋地裁平成22年2月4日判決は、被告が原告とは異なる借主に関しての17条書面、18条書面を書証として提出しようとした(被告が不出頭のため実際には提出されず)事案において、なお「貸金業法17条及び18条が定める書面が提出されたことを認めるに足りる証拠はない」として、被告の悪意が認定した。

 【名古屋消費者信用問題研究会HP

2 更新料条項と定額補修分担金条項を無効とした判決

 大阪高裁平成22年2月24日判決は、更新料条項と定額補修分担金条項をいずれも消費者契約法10条に該当し無効であると判断しました。

 更新料条項については、「目的物の使用収益の対価」たる賃料の補充又は一部として定めていたと解することはできず、本件更新料条項に、賃料の補充又は一部という性質があるとは認められないとし、定額補修分担金条項については、このリスク分散は賃貸人につき妥当すること、賃借人は通常の使用の範囲内であれば原状回復費用は発生しないこと、本件の分担金が月額賃料の3倍以上であることなどから無効としました。なお、原審は京都地裁平成21年9月25日判決です。

 【京都敷金・保証金弁護団HP

3 取引空白期間中の交渉記録につき、文書提出命令を認めた判決

 広島高裁平成21年11月17日判決は、取引中の交渉記録は19条帳簿であるから貸金業者であれば作成・保存している。取引空白期間中の交渉記録は19号帳簿にはあたらないが、貸金業者の側で空白期間中の交渉記録を作成する必要性や必然性がないという特段の事情を主張・立証しない限り、空白期間中に交渉記録を作成・保存しているものと推認するのが相当であるとして、取引空白期間中のものも含む取引終了までの全ての交渉記録の提出を命じました。

 【消費者法ニュース82号82頁】

4 商品先物取引業者と従業員らに過失相殺なしの賠償義務を認めた判決

 東京高裁平成22年3月17日判決は、電話及び自宅訪問により取引を開始した先物取引経験のない年収60万円の主婦との取引で、取引開始から68日間に毎日(営業日以外を除く)取引を行い、合計1077枚もの建玉をし、1792万7990万円の損害を生じさせた事案において、過失相殺を認めた原判決を変更し、先物取引業者とその従業員に過失相殺なしの損害賠償責任を認めました。                

5 クロージングによる契約上の地位の承継、悪意の受益者、過払後の請求の不法行為などを認めた判決

 名古屋地裁平成22年2月24日判決は、クロージング契約による債権の移転につき、契約上の地位や過払金返還債務の承継を認め、被告を悪意の受益者と認定し、引直し前残額が100万円を超過した以後の引直し利率を15%であるとし、最高裁平成18年1月13日判決以後に過払であることを認識しえた状況で弁済を請求したことを「不正の手段を用いて架空の債権を取り立てる行為」であるとして慰謝料、弁護士費用の支払いを認めました。

 

6 クオークローン(その後タンポート)からプロミスへの切替による承継を認めた判決

 名古屋地裁平成21年12月1日判決は、同平成22年2月24日判決は、クオークローンの指導により、プロミスからの借入金でクオークローンへの債務を完済する切替がなされた事案において、法人格は別であっても、一連の取引として評価すべきであるとして債務の承継を認めました。後者は、「被告を信用して本件借換手続に異議なく応じた原告の信頼を著しく裏切るものであり、金銭消費貸借取引上の信義に反するといっても過言ではなく、顧客からの信用信頼を重視する被告の真意にも全く沿わない」と述べています。

 

7 アフリカントラスト、アフリカンパートナー名の社債について

 国民生活センターは、商号変更後・会社解散後も旧社名で社債を発行しているなどとして、上記社債につき注意を呼びかけています。

 問題点は、解散により消滅した会社の社債であること、株式転換社債と表示されていながら新株発行の登記がないこと、勧誘時に元本保証をうたい、大使館業務を行っているなどの不実告知をしていること、クーリングオフに基づく返金に応じないケースが複数見られることなどです。

 【国民生活センターHP

8 電話機リース名古屋高裁判決が確定

 事実上廃業状態の印刷画工が締結させられた電話機提携リース契約に特商法を適用しクーリングオフを肯定した名古屋高裁平成19年11月19日判決(判時・2010号74頁)にリース会社が上告していたところ,最高裁は平成22年2月25日上告棄却,上告受理申立不受理の決定をしました。