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消費者問題速報 VOL.78 (2010年2月)

1 ゼロスタート計算を認めた判決

 名古屋高裁金沢支部は,平成21年6月15日,貸金業者に取引履歴開示義務違反があり,その結果,借主が貸金業者の借主に対する貸付け(貸付年月日,貸付金額,弁済期,利息の約定を含む)の事実を主張立証できない場合には,借主は,貸金業者に対する不当利得返還請求の要件事実として,借主から貸金業者への金員の交付(弁済)のみを主張立証すれば足り,これを争う貸金業者において,抗弁として,貸金業者の借主に対する貸付け及びこの貸付けに基づく弁済として金員の交付が行われたことを主張立証しなければならず,それがなされていない本件では,借主の最初の弁済時の貸付残高は0円とすべきだとしました(いわゆるゼロスタート)。

 【判例タイムズ1310号157頁】

2 過払金の悪意の受益者に関する判決①

 東京高裁は,平成21年11月26日,最高裁平成21年7月14日第三小法廷判決の差戻審判決において,本件では貸金業法17条書面及び18条書面交付の要件は充足しておらず,かつ,17条書面及び18条書面の各交付要件の欠缺について貸金業者は当然に認識し得たものであるし,仮にみなし弁済の適用があると認識していたとしても,交付要件の欠缺の性質及び態様に照らせば,そのような認識に至ったことにやむを得ない特段の事情はないとして,貸金業者を悪意の受益者と認めました。

 【消費者法ニュース82号85頁】

3 過払金の悪意の受益者に関する判決②

 東京高裁は,平成22年2月4日,過払金返還訴訟について,貸金業者が17条書面として提出した証拠は到底17条書面とは認められないものであってみなし弁済は成立せず,みなし弁済の適用があると認識するに至ったことについてもやむを得ない特段の事情はないとして,貸金業者を悪意の受益者と認めました。                                             

4 軟弱な地盤の瑕疵担保責任を認めた判決

 名古屋高裁民事第1部は,平成22年1月20日,宅地分譲の方式で団地の土地を購入した購入者が土地の地盤が軟弱であるために地盤改良工事が必要になったとして損害賠償を求めた訴訟において,土地に地盤改良を要する瑕疵があったとして瑕疵担保責任を認め,改良工事費用相当額の損害賠償を命じました。

5 資産譲渡に伴いクロージング日以前の過払金債務も承継されるとした判決

 名古屋地裁民事第7部は,平成21年10月22日,CFJ合同会社に対し,過払金約360万円の支払を命じました。判決では,タイヘイからCFJへの資産譲渡契約に関し,当該契約条項中にCFJの承継義務として「譲渡対象資産に含まれる契約に基づき生じる義務のすべて(クロージング日以降に発生し,かつクロージング日以降に開始する期間に関するものに限る。)」との条項があっても,CFJはクロージング日(資産の譲渡を受けた日)以前の借主とタイヘイの取引により発生した過払金債務を承継すると判断しました。なお,本件は現在控訴審の最中であり,名古屋高裁には同種案件が約4件係属しているようです。

6 商品先物取引業者と外務員に過失相殺せずに損害賠償責任を認めた判決

 名古屋地裁民事第10部は,平成22年1月22日,顧客が先物取引業者とその外務員に対して損害賠償を求めた訴訟において,適合性原則違反,実質的一任売買を認め,先物取引によって被った損失全額について過失相殺せずに損害賠償を命じました。なお,外務員については現在控訴審が進行中です。

7 民事法律扶助制度 生活保護受給者は原則償還猶予・免除へ

 2010年(平成22年)1月より,民事法律扶助制度の利用に際して,生活保護受給者であることが確認できた場合には,立替金の償還が原則として猶予・免除されることになりました。今後申込みがなされる新規案件については,援助決定の段階で償還猶予がなされ,援助終結とともに,利用者からの申請に基づき,原則として償還が免除されます。既存案件についても申請により原則として償還が免除されます。