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消費者問題速報 VOL.76 (2009年12月)

1 地裁への過払金返還請求訴訟の併合提起を分離し簡裁へ移送した決定を違法とした決定

 名古屋高裁は、平成21年11月30日、同一被告への3名の過払金返還請求訴訟について、名古屋地裁が民訴法16条1項に基づいて、職権により簡易裁判所へ移送した決定について、請求を併合提起する場合の事物管轄については同法9条により訴額が算定されるところ、同条には同法7条とは異なり、同法38条後段の場合につきその適用を排除すべき旨の文言はないから、同法38条後段の場合についても、同法9条の適用があるものと解するのが相当である、として名古屋地裁には基本事件につき管轄権があり、訴え提起後に基本事件が分離されてもその管轄権が影響を受けるものではないことから、上記移送決定は違法であるとして取り消した。

 

2 追い出し屋の家賃取立てが夜9時以降は違法とされた判決

 滞納家賃の支払いを長時間にわたって強要されたとして、福岡市内の30代男性が家賃保証会社「フォーシーズ」(東京)と同社従業員らに慰謝料など計110万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決が12月3日、福岡地裁であり、「心身の安全や生活の平穏を脅かした」とし、午後9時以降の取り立てなどを不法行為と認定し、一審の福岡簡裁判決が午後10時以降の取り立てに限って命じた慰謝料5万円を変更し、慰謝料を含む22万円に増額した。

 

3 過去に取引経験のある者の取引(ストラドル取引)の勧誘について業者の違法性を認めた判決

 過去に10社で商品先物取引で多額の損失を被った経験を有するものの、ストラドル取引という取引手法に魅力を感じて商品先物取引業社に同取引を委託した者が、同社の外務員の違法な取引勧誘等により多額の損失を被ったとして、外務員及び業者(岡地)に対して損害賠償を求めた事件について、名古屋地裁は、実質一任売買の違法を認め、さらに、ストラドル取引で勧誘されて始めた取引であることにつき、ストラドル取引を行うのと並行して単品取引を行うのはストラドル取引の趣旨に添わないものであり、委託者の意思に反するから信義則上の義務に反するとして外交員及び業者に対し、7割を過失相殺の上で、連帯して2152万円余りの賠償を命じた。

 

4 更生債権である過払金返還請求権の失権について、信義則違反等の主張が認められなかった判決

 最高裁判所は、12月4日、更生会社であった貸金業者(ライフ)に対して、更生債権である過払金返還請求権に基づいて請求したところ、当該債権が届出期間内に届出がされなかったため上記業者が免責を主張した事案について、その責めを免れる旨主張することが、信義則に反せず、権利の濫用にも当たらないと判断した。                【裁判所HP

5 ロコロンドン取引について賭博性を認めた判決

 被害者が、最初商品先物取引に勧誘され取引をしている途中で、担当外務員がロコロンドンの業者(第一アセットマネジメント)に移ったことから、被害者もそのままロコロンドン取引を始めた事案で、名古屋地裁は11月27日、相対取引であることに関する説明義務違反を認めた上で、本件取引は当初から投機のための商品として考案され販売されているものと考えられ、売り又は買いの建玉を建ててこれを決済する一連の行為より、利益又は損失が生じてこれを決済することが、その本質的な内容であるというべきであって、まさに偶然の事情によって利益の得喪を争うものに他ならないとして、本件取引の違法性を阻却する事由を認めるに足りる証拠はないとし、過失相殺に関しては、本件取引は賭博行為に該当するとも解しうるものであり、しかも外務員が、原告に本件取引を勧誘する際、本件取引が相対取引であることを明確に説明しておらず、違法性は極めて高いというべきであるとして、過失相殺を否定し、4183万円余りの賠償を命じた。

 

6 ゼロスタート計算を肯定した判決

 貸金業者に対する過払金返還請求事件で、名古屋地裁は、上記業者が昭和63年8月1日以降の取引履歴しか開示しなかったため、原告がいわゆるゼロスタート計算により請求した点について、弁論の全趣旨によれば相当古くから取引が存したものと解することができ、当時の約定利率が相当高いものであったことからすると、取引当初から利息引き直し計算をすれば、業者が開示した取引履歴の開始時点で既に貸付金残高はゼロとなり、むしろ過払いとなっていた可能性が高いものと推認される、として、ゼロスタート計算を正当として、359万円余りの請求を認容した。