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消費者問題速報 VOL.75 (2009年11月)

1 ロプロが会社更生法の適用を申請

 商工ローン大手で経営再建中のロプロ(旧「日栄」)は,11月2日,東京地裁に会社更生法の適用を申請し,受理されたと発表しました。負債総額218億円。ロプロ側はスポンサーを探して再建を図る意向を表明していますが,関係者からは「破産は避けられないのではないか」との声も上がっています。

2 「早期完済違約金条項」は消費者契約法により無効とした判決

 借金の返済期限前に完済した借り主に違約金を負担させる「早期完済違約金条項」の適否等が争われた訴訟の控訴審判決で大阪高裁は10月23日,一審の京都地裁に続き当該条項を無効と認定し貸金業者の「ニューファイナンス」(大津市)にこの条項を含む契約の差止や契約書の廃棄を命じました。差し止めを求めていたのは,特定非営利活動法人(NPO法人)「消費者支援機構関西」(大阪市)で,消費者団体訴訟制度に基づき提訴していました。

 ニューファイナンスは,借り主が弁済期日前に完済する場合,早期完済違約金として,償還する元金残額に対し3%を負担することを契約書に定めていました。

 本判決は,「条項は貸し付け内容によっては消費者の義務を加重する場合があり,信義則に反して消費者の利益を一方的に害する」と指摘し,一審判決同様に,早期完済違約金条項は消費者契約法10条により無効と判断しま

 した。

 【消費者支援機構関西HP

3 債権譲渡に伴い貸金債権とともに過払金債務も承継されるとした判決

 8月27日,東京地方裁判所は,CFJ合同会社に過払金など約372万円の支払いを命じる判決を出しました。判決では,マルフクからCFJの前身であるディックに対する債権譲渡に関し,CFJ側が開示義務を果たしていないことやその他の事情を総合的に考慮し譲渡時点で残高0円の推定計算を認めたほか,ディックがマルフクから原告に対する貸金債権を譲り受けたことにより同貸金債権と表裏一体の関係にある過払金債務も承継したものと認めました。

4 郵便局の簡易保険から民間の終身保険へ乗り換えさせられた事案について慰謝料と弁護士費用を認めた判決

 保険代理店によりそれまで加入していた郵便局の簡易保険を解約させられて民間会社の終身保険に加入させられた高齢の女性が,生命保険会社2社・保険代理店(法人)・その従業員の4者を訴えていた事案で,大阪地裁は9月30日,既払い保険料に加え,慰謝料と弁護士費用を支払うよう命じる判決を出しました。

 事案の具体的内容は,71歳の女性が郵便局の入院特約付簡易保険に加入していたところ,その女性に簡易保険を勧めた郵便局員が郵便局を退職して保険代理店に勤めるようになったので,その郵便局時代の顧客である女性を訪問して,自分が加入させた簡易保険を解約させて民間の保険会社2社の終身保険に加入させたというものです。判決の認定によれば,乗り換え後の民間の保険はすべてこの女性の息子を被保険者としていたにもかかわらず,その息子の同意を得ずにその女性に被保険者欄の署名をさせていたとのことです。

 判決は,息子の同意を得ずに契約させたこと,乗り換えに伴う利害得失を説明しなかったこと,為替リスクなどを説明しなかったことなど,この女性の主張を認め,2年分の既払い保険料約137万円,慰謝料30万円,弁護士費用17万円の賠償を認めました。

5 生命保険約款のいわゆる「無催告失効条項」を消費者契約法10条により無効とした判決

 東京高裁は,9月30日,生命保険約款において,保険料を猶予期間末日までにに支払わないときは保険契約が同日の経過により当然に効力を失う旨を定めたいわゆる「無催告失効条項」は,消費者契約法10条の規定により無効であるとする判決を出しました。原審の横浜地裁判決は,長めの猶予期間が認められていること,保険料自動振替貸付制度や復活条項によって保険契約の継続への配慮がなされていること等を理由として消費者契約法10条により無効とはならないとしていましたが,本判決は必ずしも当該契約者が被る不利益は小さいということはできないと判断しました。保険の実務に対する影響は大きいと思われます。なお,保険会社側は上告受理申立をしています。

 【金融法務事情1882号82頁以下,NBL916号4頁に掲載】