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消費者問題速報 VOL.74 (2009年10月)

1 貸金業者が借主に貸金支払を請求し弁済を受ける行為が不法行為を構成する場合を判示した最高裁判決

 最高裁第二小法廷(平成21年9月4日判決)は、貸金業者が借主に貸金支払を請求する場合に、貸金業者が当該貸金債権が事実的、法律的根拠を欠くものであることを知りながら、又は通常の貸金業者であれば容易にそのことを知り得たのに、あえてその請求をしたりした場合など、その行為の態様が社会通念に照らして著しく相当性を欠く場合は不法行為にあたるとして、不法行為を構成する場合を具体的に判示しました。

 

2 過払金充当合意を含む消費貸借契約でも、過払い利息の発生時期を過払い金発生時から生ずるとした最高裁判決

 最高歳第二小法廷(平成21年9月4日判決)は、いわゆる過払金充当合意を含む基本契約に基づく金銭消費貸借契約の借主が、利息制限法所定の制限を超える利息の支払いを継続したことにより過払金が発生した場合でも、民法704条前段所定の利息は過払金発生時から発生すると判示しました。

 

3 貸金業者において、特約に基づき借主が期限の利益を喪失した旨を主張することが信義則に反し許されないとした最高裁判決

 最高裁第二小法廷(平成21年9月11日判決)は、貸金業者の期限の利益喪失の主張について、期限の利益を喪失していないとの誤信を招いた貸金業者の対応のために、期限の利益を喪失していないものと信じて支払を継続してきた借主の信頼を裏切るとして、信義則に反し許されないと判示しました。

 

4 約定完済から12年11ヶ月経過した過払い金請求につき取引の継続を理由に消滅時効の進行を認めず、貸金業者の時効援用を退けた判決

 名古屋地方裁判所一宮支部(平成21年8月28日判決)は、約定完済から12年11ヶ月経過した過払い金請求について、基本契約に基づく継続的な金銭消費貸借取引においては、同取引継続中は過払い金充当合意が法律上の障害になると言えるとして貸金業者の時効援用を退けました。約定完済時を取引終了時と捉えていない点で意義のある判決です。

 

5 消費者団体訴訟で条項の使用差止を認めた判決

 京都地方裁判所(平成21年9月30日判決)は、賃貸住宅の契約をする際、退居後の補修費として「定額補修分担金」を負担させるのは消費者契約法に違反するとして消費者団体が契約条項の使用差し止めを求めた消費者団体訴訟につき、「消費者の利益を一方的に害する」として違法性を認め、条項の使用差止を認めました。消費者団体訴訟の差止請求を認めた判決は2例目となります。

 

6 分譲マンションによるシックハウス症候群を認めた判決

 東京地裁民事第22部(平成21年10月1日判決)は、分譲マンションの居住者がシックハウス症候群に罹患した損害賠償請求事件につき、開発業者は、設計者及び施工者と同様、買主等に対する関係において、その生命、身体及び重要な財産を侵害しないような基本的安全性を確保する義務を負うとした上で、原告の症状をシックハウス症候群から化学物質過敏症に移行したものであると認定し、損害賠償を命じました。

 

7 パチンコ攻略法の情報提供会社と役員の責任を認めた高裁判決

 名古屋高等裁判所(平成21年9月9日)は、パチンコ攻略法の提供契約を消費者契約法に基づき取消・契約代金の返還等を求めた訴訟(名古屋地裁平成21年4月24日判決、消費者問題速報VOL.70)の控訴審において、一審どおりKO企画と代表者取締役の責任を認め、控訴を棄却しました。

 

8 生活保護のみなし却下処分に対する全面救済裁決

 埼玉県知事(平成21年9月3日裁決)は、2回に渡り生活保護の申請に行ったものの、保護申請書の提出に至らなかった事例について、相談記録票を記載する義務を前提に、相談及び助言の内容と申請意思の確認結果、申請に至らなかった理由等を相談記録票に記載したり、保護の申請を躊躇する者に対しては、保護申請書等、申請に必要な書類を渡した上で検討を促したりするなど、申請権の侵害はもとより、申請権が侵害されていると疑われるような行為もないことを明らかにしておく責務があると判示し、みなし却下処分を取り消しました。