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消費者問題速報 VOL.73 (2009年9月)

1 賃貸マンションの更新料支払条項を無効として、家主側に更新料の返還を命じた高裁判決

 大阪高裁(平成21年8月27日判決)は、賃貸借契約における更新料支払条項が無効であるとして過去に支払った更新料の返還が求められた訴訟で、原審(京都地裁平成20年1月30日判決)を取り消し、更新料支払条項が消費者契約法10条違反により無効であるとして、消費者契約法施行後に支払われた過去の更新料(40万円)の返還を命じる判決をしました。

 また、上記高裁判決に先立って、京都地裁(平成21年7月23日判決)は、賃貸マンションにおける敷引特約及び更新料支払条項が消費者契約法10条違反により無効であるとして、敷金及び更新料(計46万6000円)の返還を命じる判決をしています。

 

2 過払い利息の発生時期を過払い金発生時から生ずるとした最高裁判決

 最高裁第二小法廷(平成21年7月17日判決)は、過払金返還請求権の消滅時効は、特段の事情がない限り、同取引が終了した時点から進行すると解するのが相当であるとする判例を前提に、貸主が悪意の受益者である場合における民法704条所定の利息は、過払い金発生時から発生するとして、過払い金発生時からの利息を支払うよう判示しました。

 【金融法務事情1875号に掲載】

3 マンション建設の建築確認を取り消した判決

 大阪地裁(平成21年9月9日判決)は、大阪狭間山市のマンション建設について「開発許可不要証明」取消及び「建築確認」取消が求められた訴訟で、開発許可が必要であるにもかかわらず建築確認を行ったとして、建築確認を取り消す判決をしました。開発許可不要証明については処分性を認めずに却下しています。なお、本件では、口頭弁論終結後、判決言い渡しまでの間に完了検査済証が出されていますが、裁判所は「本件訴訟の内容及び経緯にかんがみて、…訴えの利益について判断するより、本案についての判断を示すのが相当」として、取り消しの判決を行っています。

 

4 差玉向かいについての説明義務・通知義務を認めた最高裁判決

 最高裁第一小法廷(平成21年7月16日判決)は、商品先物の商品取引員の説明義務違反があったとして、商品取引員に対する商品先物取引委託契約上の債務不履行に基づく損害賠償を求めた訴訟で、商品取引員に差玉向かいの説明義務・通知義務があるとして債務不履行責任を認め、説明義務違反を否定して請求を棄却した原審判決を破棄して東京高裁に差し戻す判決をしました。判決は、商品取引員について、差玉向かいを行っている商品先物取引の受託前に、差玉向かいを行っていること、差玉向かいが委託者と商品取引員との間に利益相反関係が生ずる可能性が高いことの説明義務を負い、上記取引受託後も自己玉を建てる都度、委託玉が自己玉と対当する結果となったことの通知義務を負うとしたもので、かなり踏み込んだ判断を行う画期的内容となっています。

 

5 FX取引について高レバレッジを規制する内閣府令が公布

 内閣府は、平成21年8月3日、「金融商品取引業等に関する内閣府令の一部を改正する内閣府令」を公布、来年8月1日施行となりました。その内容は、個人顧客を相手とするFX取引(通貨関連デリバティブ取引である外国為替証拠金取引)におけるレバレッジについて、想定元本の4%以上の証拠金の預託を受けずに業者が取引を行うことを禁止するものです。これによって、証拠金率は、内閣府令施行から1年後までは2%(50倍)、その後は4%(25倍)に規制されます。この内閣府令改正に先立つパブリックコメントの募集に対し、日弁連では、①高レバレッジについて、投機性・賭博性・射倖性の助長、市場の公正への悪影響、取引関係者破綻のおそれなどから規制に賛成であること、②証拠金率を少なくとも想定元本の4%以上とすべきことなどを内容とする意見を金融庁に提出していました。

6 投資被害110番が行われました。

 平成21年8月7日、愛知県弁護士会と名古屋先物証券問題研究会との共催で投資被害110番を実施しました。海外先物業者による被害が目立ち、規制実施前の駆け込み的被害が予想されることから、企画・実施されました。相談件数は24件、半数以上が60歳代以上の高齢者、年金生活者が高割合でした。取引の種類は、海外商品関係、未公開株が多く、被害金額は100~1000万円、なかには3000万円台の高額被害者もありました。集計結果からは、特定業者による被害の集中というよりは、様々な業者がそれぞれに被害を発生させている状況が浮かび上がってきています。

7 第62回 先物取引被害全国研究会(神戸大会)開催されます。

 平成21年10月2日~3日、神戸ポートピアホテルにおいて、先物取引被害全国研究会が開催されます。初心者セミナー兼ブラッシュアップセミナー、早稲田大学大学院法務研究科尾崎安央教授らを講師とした「商品取引所法の改正」の講演、その他「最高裁判例平成21年7月16日報告」、「CFD取引の現状と問題点」など多彩なラインアップです。是非、ご参加ください。お問い合わせは、全国研究会名古屋事務局:加藤了嗣会員(052-973―2531)まで。