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消費者問題速報 VOL.72 (2009年7月)

1 過払いに関する最高裁判決

 最高裁第二小法廷(平成21年7月10日判決),及び,最高裁第三小法廷(平成21年7月14日判決)は,期限の利益喪失特約の下での利息制限法所定の制限を超える利息の支払の任意性を否定した最高裁判所の判決(最高裁第二小法廷・平成18年1月13日判決)以前の支払部分においては,貸金業者が同特約の下で制限超過部分を受領したことのみを理由に,当該貸金業者を民法704条の「悪意の受益者」と推定することはできない,と判示しました。

 【裁判所HP判例検索システムに掲載】

2 海外商品取引業者ののみ行為を認めた判決

 東京地裁(平成21年6月25日判決)は,海外先物取引業者の従業員らに対する損害賠償請求事件について,過去にのみ行為で業務停止処分を受けたことも考慮して、「本件会社及びその従業員である被告らは,組織的に,海外市場に取り次ぐとの虚偽の事実を告げて,原告を欺罔して合計2700万円を交付させた」として,海外先物取引業者のいわゆるのみ行為を認定し,原告の請求を認容しました(慰謝料部分については一部認容)。

3 商品先物業者との訴訟上の和解金に対する国の課税処分を取り消した判決

 大分地裁(平成21年7月6日判決)は,商品先物取引による損害をめぐり訴訟上の和解によって商品先物業者から損害賠償金などとして受けとった和解金が,雑所得にあたるとして所得税を課した処分について,和解金の実質は不法行為に基づく損害賠償金及び遅延損害金であり,損害賠償金部分については非課税所得に該当するとして,国の課税処分を取り消す判決をしました(和解金のうち遅延損害金相当部分については,非課税所得には該当しないとされました)。

4 信販会社との間の立替払い契約を消費者契約法5条を前提として同法4条2項の不実告知で取り消した判決

 東京地裁(平成21年6月19日判決)は,包茎手術等の治療費の立替金の支払を信販会社が請求した事件について,包茎手術等の施術をした医院が信販会社の委託を受けて立替払契約をしたことを前提として,医院が不利益事実(亀頭コラーゲン注入術が医学的に一般に承認されたものとはいえないこと)を告げなかったことを理由に消費者と信販会社との立替払契約を消費者契約法4条2項により取り消しました。

5 改正商品取引所法の成立

 平成21年7月3日,改正商品取引所法(商品取引所法及び商品投資に係る事業の規制に関する法律の一部を改正する法律案)が成立しました。海外先物取引等においても事業者の許可制度を導入するなど重要な改正がなされました。また,衆参両院の付帯決議で,国内公設先物取引においても,不招請勧誘禁止が及ぶ可能性が出てきました。