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消費者問題速報 VOL.69 (2009年4月)

1 預金債権について、差押命令送達日を含む3営業日内に入金された預金に対し包括的差押命令が発せられた事例

 奈良地裁は、平成21年3月5日、預金債権の執行について、「差し押さえる普通預金の時的範囲」として、「本命令送達の時から3営業日以内に上記口座にかかる普通預金債権となる部分(本命令送達の時に存在する預金及び同日を含む3営業日が経過するまでに受入れた金員によって構成される部分)」とした債権差押命令を発令した。

 同様の決定は、高松地裁観音寺支部でも発令されており(平成21年3月25日、同庁平成21年(ル)第23号)、今後、預金債権に対する執行の奏功可能性が飛躍的に高まることが期待される。            

2 LPガス供給のための消費設備に関する合意が争われた判決

(1) LPガス消費設備をガス供給契約解除時に残存価格で買い取る旨の合意はないとした判決

 名古屋地裁一宮支部は、平成21年3月12日、LPガス販売会社と利用者との間に、LPガス供給契約締結時に、利用者の都合で契約解除する場合には利用者がLPガス消費設備を残存価格で買い取る旨の停止条件付売買契約が成立したかどうかについて、LPガス販売会社が利用者に対し、利用者がガス供給契約解除時に買い取って所有権を取得することになる設備及びその価格を明確に説明しその理解を得たとは認められない、として、LPガス消費設備を買い取るという合意の成立を否定した。         

(2) 中途解約時に補償費を支払う旨の合意が消費者契約法に反し無効であるとした判決

 東京高裁は、平成20年12月17日、LPガス消費設備及び給湯器の利用について、LPガス販売会社と利用者は、同設備の貸与を合意したものであるとし、所定の期間経過前に契約を解除する場合には所定の補償費の支払いをする旨の合意については「貸与契約に付随する利益調整合意」であると認定した上で、補償費の定めについて「本件貸与契約を解除したときには何の対価もなく当然に」「(利用者)側に発生する金銭支払義務を定めたもので、その実体を直視する限りは、解約を原因として金銭の支払義務が一方的に発生するもの、すなわち解約に伴う違約金の定めと解すべき」であるとした。その上で、貸与契約の中途解約によりLPガス販売会社に生ずべき損害は認められないとして、補償費全額が消費者契約法9条1号の規定により無効であるとした。

 

3 過払金返還請求事件で、一連計算(空白期間2週間)及び残高ゼロ計算を認めた判決

 名古屋高裁(民事4部)は、平成21年4月7日、2週間の空白期間で取引の分断を認め時効消滅を認めた第1審判決(名古屋地裁民事5部平成20年10月14日)を変更し、一連計算を認めた上、取引履歴の一部不開示部分について残高ゼロ計算を認め、過払金返還請求権の消滅時効は取引終了時から進行する(最判平成21年3月3日)として消滅時効も否定した。

 

4 ロコ・ロンドン取引に関する判決

 あさひアセットマネジメント株式会社(業務停止命令後に破産決定、役員は逮捕され刑事公判中)に対する損害賠償請求訴訟について、相次いで以下の判決を下した。

(1) 東京地裁平成21年3月25日判決

 ロコ・ロンドン取引を「偶然の事情によって利益の得喪を争うものであり、賭博行為に該当し、違法」と明確に認定し、さらに、取引が特商法2条4項にいう「指定役務」に該当するとしても、そのことをもって法令又は正当な業務行為として違法性阻却事由になると解することはできない、として、過失相殺も否定した。                          

(2) 東京地裁平成21年4月10日判決

 ロコ・ロンドン取引について、「その実態は詐欺的な犯罪行為そのもの」として取引自体の違法性を認定した上、原告について「いわば犯罪の被害者というべきもの」として過失相殺も否定した。            

5 投資被害に関する判決

 名古屋地裁は、平成21年3月17日、丸八証券が顧客との間で行った取引について、①一任勘定取引中であっても、証券会社が顧客に対して負担する誠実公正義務に違反する過当取引を行い顧客に損害を与えれば損害賠償義務を負う、とした上で、売買回転率、手数料率、取引回数、顧客に対し一任勘定取引が違法であるという説明をしなかったこと等の要素を考慮して過当取引に該当するとして不法行為の成立を認め、②無断売買に支出した預託金の返還請求も認めた。

 もっとも、過当取引分の損害については、原告の職業、取引経験、一任勘定取引の違法性を認識していた点等を考慮し、8割の過失相殺を認めた。

 

6 文書提出命令に対する即時抗告事件の決定に対する再抗告事件で差し戻し決定

 名古屋高裁は、平成21年3月27日、継続的金銭消費貸借取引に関し、契約番号により管理されている取引については他の取引と混同するおそれはないことを理由として、取引開始日以降の取引履歴及び基本契約書について、取引開始日及び契約締結日が特定されていないからといって文書の特定に欠けるところはない、として抗告審への差し戻し決定を下した。

 原審:名古屋簡決20.8.26(文書提出命令)、抗告審:名古屋地決20.11.26(一部却下) 

7  富士ハウス被害に関する集団提訴

 富士ハウス倒産被害に関し,富士ハウス被害対策静岡県弁護団は,平成21年4月13日、静岡地裁に、富士ハウスの旧経営陣に対する代表者責任追及訴訟を提起した。今後,二次提訴も予定しており,愛知県弁護団においても,静岡県弁護団と連携して参加する予定で原告を募集中である。なお,融資金融機関との特定調停申立も検討中である(愛知県弁護団団長柘植直也会員,事務局長石川真司会員)。