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消費者問題速報 VOL.68 (2009年3月)

1 デート商法に関する判決

 名古屋高裁(平成21年2月19日判決)は、異性に好意を抱かせて高額商品を契約させるいわゆるデート商法の被害者が、クレジット契約を結んだ信販会社に対して既払金の返還等を求めた事件につき、公序良俗に反するとして売買契約の無効を認定し、信販会社による未払金請求につき、割賦販売法30条の4第1項に基づき代金支払いを拒否できると判示した上で、売買契約が公序良俗に反し無効、それゆえ売買代金の支払いを目的とするクレジット契約も目的を失って失効すると判示し、信販会社に対して既払金の返還を請求できると判示しました。

2 パチンコ攻略法の情報会社に対する損害賠償請求事件判決

 神戸地裁尼崎支部(平成21年2月27日判決)は、パチンコ攻略法の契約金に関する損害賠償請求事件につき、「パチンコは偶然性が高く、確実に利益を生むように誤信させる宣伝、勧誘は消費者契約法違反なうえ、契約全体も社会的相当性を逸脱していて無効」として、全額(約700万円)返還命令の判決をしました。

3 過払い金返還請求権の消滅時効についての最高裁判決

 最高裁第三小法廷(平成21年3月3日判決)は、消滅時効の起算点について、原審(名古屋高等裁判所 平成19年12月27日判決)が判示した個別進行を否定し、過払い金充当合意と異なる合意が存在するなど特段の事情がない限り、同取引が終了した時点から進行するとして、最高裁第一小法廷平成21年1月22日判決を踏襲し、原審を破棄し、借主の上告を認める判決を下しました。最高裁第二小法廷(平成21年3月6日判決)も同様に消滅時効の起算点につき、取引終了時から進行するとしています。

 【裁判所HP判例検索システムに掲載】

4 オリコに対する文書提出命令

 オリコに対する過去の取引履歴に関する文書提出命令申立事件につき、申立却下とした原決定に対して、即時抗告を申し立てた事件につき、本決定は、オリコは顧客との取引履歴に関する情報をコンピューターで管理、保存しているほか、マイクロフィルム、CD-ROM等の記録媒体でも保存していること、過去にも一定期日以前の取引履歴に係る文書につき、存在しないと主張していたにもかかわらず、その後に開示したことがあることとの事実を認定した上で、「記録媒体作成から最初に到来する4月1日から起算して10年を経過した後に一律に廃棄していた」するオリコの主張につき、10年を超える継続的取引がある顧客に関して、履歴を保存・管理する必要性は高く一律廃棄につき合理性のないこと、データの保管が負担でなかったこと、文書管理に関する社内規定や保存年限一覧表の存在自体に疑義を述べ信用性を否定し、原決定を取り消し、文書提出命令を行いました。

 

5 耐震偽装事件判決

 耐震強度を偽装していたことが発覚して社会問題となった元一級建築士が構造担当した建築物に関して、建設主である原告が被告県及び原告に対し建築計画も含めて経営指導をしていたコンサルタント業者及び代表取締役に対して損害賠償金の支払いを求めた事案につき、名古屋地裁(平成21年2月24日判決)は、被告県の建築主事が行う建築確認審査事務を、「申請に係る建築計画について建築基準関係規定適合性を確保し,危険な建築物を出現させないための最後の砦」と位置づけた上で、建築主事に調査義務を認め、本件建築主事は、耐震壁の評価等及び本件建築物がピロティ型建築物(耐震壁が全く存在しない構造)であることによる設計上の問題に関して、設計者に問い合わせてその真意(設計意図)を確認するなどの調査義務を怠ったとして損害賠償請求を認容するとともに、コンサルタント業者及び代表取締役に対して原告に不測の損害を被らせないようにすべき注意義務を怠ったと判示して損害賠償請求を認容しました。

6 あめましば高裁判決

 名古屋高裁(平成21年2月26日判決)は被控訴人の主張を退け、あまめしばを摂取した後に閉塞性細気管支炎を発症した消費者につき食品の摂取と同疾病との間に因果関係があると判断した原審(名古屋地裁平成19年11月30日判決)の判断を正当であると判示しました。

 

7 投資被害に関する判決

 大阪地裁(平成21年3月4日判決)は、株取引における証券会社に対する損害賠償請求事件につき、証券会社から株購入の勧誘を受けた原告が自ら購入株数を決定したという前提の下で、取引日記帳から原告の購入株数は突出して多かったことを指摘した上で、過大な危険を伴う取引であったと判示し、「原告においてその取引の危険性を認識しているかどうかを確認し、購入株数が過大であることを指摘して再考を促す等の指導、助言をする信義則上の義務を負っていたものというべきであり、同義務を果たさずに行われた勧誘行為は、明らかに過大な危険を伴う取引を積極的に勧誘する行為と同視することができ、証券取引における適合性の原則から著しく逸脱したものであって、不法行為法上違法となるというべきである」と判示し、原告の請求を一部認容しました(原告の過失割合を7割と認定)。

 【全国証券問題研究会HPに掲載】