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消費者問題速報 VOL.65 (2008年12月)

1 過払金の消滅時効の起算点

(1)最高裁上告受理決定・判決期日の指定

 過払金の消滅時効の起算点につき、最高裁第一小法廷は、個別進行説を否定した原審東京高判平成19年12月13日(上告受理申立人・東日本信販)につき、上告受理申立を受理し、弁論を開かず判決期日を平成21年1月22日と指定した。       

(2)最高裁上告受理決定・弁論期日の指定

 また、消滅時効の起算点につき個別進行説に立った原審名古屋高判平成19年12月27日(相手方プロミス)につき、上告受理され(第三小法廷)、弁論期日が平成21年1月20日と指定された。                 

 同様に、同趣旨の広島高裁松江支判平成20年4月16日についても上告受理され(第二小法廷)、平成21年1月19日が弁論期日として指定されている。

(3)予想される判断

 これらによれば、消滅時効の起算点については、①権利の性質上、現実に権利の行使を期待しうるとき(最大判昭和45年7月15日)、②客観的状況に照らし、権利の行使が現実に期待できない特段の事情が失われたとき(最一判平成15年12月11日)を基準として、過払金の性質上、過払金債権の発生と同時には、現実に権利の行使は期待できない、取引が継続されていることは権利の行使を現実に期待できない特段の事情に該当するという内容の判断が予想され、最高裁が個別進行説に立たないことはほぼ確定的と思われる。

2 取引開示がなされず誤った債務額を前提に締結された和解が公序良俗違反として無効とされた裁判例

 11月19日、長野地方裁判所は、利息制限法に引き直した場合の残債務額が564万円余であるにもかかわらず、業者が取引開示請求に応じなかったため2350万円の債務があることを前提に締結された和解契約につき(同和解契約によりその後3年余に亘り弁済を続け過払金が894万円余生じていた。)、同和解契約は公序良俗に違反して無効であると判示した。                

3 展示会商法(宝石のありもと)で立替金請求が棄却された裁判例

 北海道を中心に,ホテルなどを利用して展示会商法を行なっていた(株)宝石貴金属の店「ありもと」の展示会で,商品を購入した者に対して(株)ジャックスが立替金の請求をした事案につき,10月28日,釧路地裁で,立替金請求を棄却する判決が出た(原審は網走簡裁)。

 同裁判では、①特定商取引法の訪問販売にあたり,同法の適用があるか(特商法規則1条4号の店舗に類する場所にあたるか)、②同法のクーリングオフが認められるかが争点となったが、①につき、店舗に類する場所というためには,「少なくとも一定の期間にわたって販売が行われる場所であって,かつ,購入者が自由な意思で商品を選択できる客観的な状況にあることが必要であると解するのが相当である。」ということを前提に、「ありもと」の販売態様は,消費者が自由に商品を選択できる状況にあるということはできないと判断され、②につき、交付書面に商品の引渡時期や販売業者の代表者の氏名、商品の数量などの記載がなかったことから不備書面であるとしてクーリングオフは有効と判断した。                     

4 欠陥住宅に関する裁判例(部材供給業者の責任を認めた例)

 防蟻措置の不備によりシロアリ被害が発生した等として建物補修費用等の損害賠償を求めた事案で,名古屋高裁は平成20年4月21日,請負契約を締結して施工にあたった工務店のみならず,同工務店を加盟工務店として,オーエムソーラーシステム等の部材を供給した㈱オーエムソーラー協会についても,同システムにより住宅を建築しようとする消費者に対するシロアリ発生のリスクを伝える義務及び加盟工務店に対するシロアリ進入を防ぐ方法等について徹底した指導を施す義務を怠った過失があるとして,損害賠償責任を認めた(原審:岐阜地裁平成19年6月22日判決はオーエムソーラー協会に対する請求を棄却していた)。                    

5 貸金業者「レオン」、サービサー法違反の疑いで摘発

 サービサー法上の許可を受けず無許可で債権回収業務を行っていたとして、貸金業「レオン」(大阪市中央区)の社長比嘉尚之氏らが、債権管理回収業特別措置法(サービサー法)違反の疑いで任意同行後、逮捕された。同社は、他の金融機関が持っていた債権を額面の数%で買い取った上で悪質な取り立て行為をするなどしていた。

6 クレディア、総額233億円を弁済。今後判明分も同条件で弁済予定。

 民事再生法の適用を受けた消費者金融クレディアが17日までに金融機関や過払い債権を持つ個人などの債権者へ総額223億円の弁済を行った。クレディアが示した支払内容は、(1)弁済率は40%、(2)過払い債権を含む30万円以下の少額債権については全額返還というもの。なお、今後債権が判明した個人などについては、クレディアの業務を引き継いだ株式会社フロックスが同条件で弁済する方針。