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消費者問題速報 VOL.64 (2008年11月)

1 割賦販売法30条の4による抗弁権の接続を認めた判決

 9月10日、名古屋高裁(民事第3部)は、ソーラーシステム及び電化製品のローン提携販売において、信販会社(ジャックス)から消費者に対し保証委託契約に基づく求償金請求がなされた事案で、販売業者等が交付した特商法4、5条の法定書面に記載事項の不備を認め、期間の進行を否定してクーリングオフ解除を認めた上で、割販法30条の4によりクーリングオフ解除をもって信販会社にも対抗することができるとした。             

 (兵庫県弁護士会HP

2 ロコ・ロンドン貴金属取引の賭博行為性を明確に認定

 10月30日、東京高裁(第14民事部)は、ロコ・ロンドン貴金属取引について、「…『ロンドン渡しの金の現物価格』も『ドルの為替レート』も、控訴人会社及び顧客には予見することができないものであり、また、その意思によって自由に支配することができないものであるから、本件取引は、偶然の事情によって利益の得喪を争うものというべきであり、賭博行為に該当する。」とし、仮に被害者が取引の仕組みやリスクを理解して取引を行ったとしても、このような取引に勧誘してこれに引き入れた従業員・役員らは共同不法行為責任を負うとして損害の全部賠償を命じた。                 

 (兵庫県弁護士会HP

3 外国為替証拠金取引に関する判決

(1) ロスカットルールの義務性

 7月16日、東京地裁は、FX取引においてロスカット手続きを行うことは業者の義務であるとして、ロスカットルールが適切に行われた場合に確保されたであろう証拠金について賠償を命じた。 

(2) 顧客獲得行為の違法性

 10月16日、東京地裁(民事41部)は、FX業者が直接に開設したHP等においてではなく、顧客誘引を委託した相手が行った「顧客誘引活動」についても関与の態様によっては取引業者の顧客獲得行為の問題となることを認め、取引による損害の賠償責任を肯定した。

 (兵庫県弁護士会HP

4 過払金返還請求に関する問題

(1) 三菱UFJニコスに対する文書提出命令を維持した決定

 5月28日、名古屋高裁(民事第3部)は、顧客との取引履歴は10年で機械的に廃棄してきたとのニコスの主張について、自ら平成19年11月30日に平成3年9月までの履歴の存在を認め4万6000件以上の開示漏れを自ら報道機関に発表したことも示してその合理性、信用性を否定して即時抗告を棄却、文書提出命令を維持した。 

(2) 残高ゼロ計算を採用

 9月11日、名古屋地裁(民事第4部)は、公平の理念から、返済を受領する法律上の原因となる貸付債務残高が存在する(存在した)ことについての主張立証責任は貸金業者にあるとし、貸付債務残高の有無及びその金額が明らかでない以上、貸付債務残高は存在しないものとして充当計算すべきとした。

(3) 取引の一体性を認定

 10月22日、大阪高裁(第2民事部)は、完済後3年5か月を経過して取引を再開した事案につき、契約書の返還及びカード失効手続がとられていないこと等を認定して、1個の連続した取引と認定し、消滅時効の起算点については、取引終了時とした。       (兵庫県弁護士会HP

(4) アークライフに対しサービサー法違反を認定

 10月29日、東京高裁(第22民事部)は、「被上告人会社は、本件債権を含む多数の債権を大和ファイナンスから債権残高よりも安価で買い入れた上、その取立てを行うことによって収益を上げる目的をもって、上記債権を譲り受けた上、上告人に対し本件催告をしたものと推認されるから、たとえ、上記債権の譲受けが1回の契約で行われたとしても、債権回収を業として行う意図であったと解するのが相当であり、本件債権の譲受け及びその取立行為は、サービサー法3条、弁護士法73条に違反するものと解するのが相当である。」と判示した(ただし、本件催告の不法行為性は否定。)            

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5 欠陥住宅に関する判決

(1) 「建物の基本的な安全性」に関する具体例

 1月25日、東京地裁(民事第22部)は、建物が備えるべき「建物の基本的な安全性」(最判平成19年7月6日)について、「およそ住宅の性能として欠くべからざる事項は、構造的欠陥がないことと漏水のないことであり、こうした事項に関する瑕疵は、構造的欠陥による倒壊の可能性や漏水による水損を生じさせることになるから、原則として、建物としての基本的な安全性を損なうものと解するべきである。また防蟻処理に関する瑕疵も、蟻被害により構造部分の朽廃を進行させ建物の倒壊の可能性を生じさせるものであるから、原則として、同様に建物としての基本的な安全性を損なうものと解するべきである。」と具体的に判示した。

(2) 建売事案で品確法に基づく取壊し・建替え請求が認められた判決

 11月6日、名古屋地裁(民事第7部)は、「品確法88条1項により、売主においても請負人と同様に民法634条2項の担保責任を負うこととされている以上、瑕疵の修補のために建物の建替えを要する場合には、建替費用の全額を賠償する責任を負うべき」とし、建売業者の建物取得額を超える新築費用を認めた。