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消費者問題速報 VOL.63 (2008年10月)

1 大和都市管財国賠事件の控訴審判決

 大和都市管財グループによる巨額詐欺事件の被害者らが、近畿財務局が抵当証券業登録更新を拒否しなかった点に被害拡大の原因があるとして国家賠償を求めていた事件で、9月26日、大阪高裁は一審判決(賠償額6億7443万9081円)を変更し、国に15億5880万円の損害賠償責任を認めた。国は上告を断念し、この判決は確定した。

2 三和ファイナンス債権者破産申立の顛末

 サラ金準大手の三和ファイナンス株式会社に対する過払金債権者598名が三和ファイナンス対策弁護団(団長:宇都宮健児弁護士)を結成し、9月12日東京地裁へ債権者破産を申し立てた。

 消費者金融準大手に対する債権者破産の申立ては全国初のケースとして動向が注目されていたところ、かざかファイナンスが三和救済に名乗りを上げた。審尋期日前日、三和ファイナンスは有債務名義債権総額1億3758万3520円を一方的に弁護団団長名義の銀行口座へ振り込み、翌10月1日審尋期日で裁判所から支払不能でない旨の疎明資料を求められて残高9億6000万円余りの預金口座写しを即日提出し、さらに2億1417万1747円を前記口座へ振り込んだ。振込額合計3億5175万5267円は同弁護団が主張する過払金債権額に1割を付加した金額である。その後、三和ファイナンスとかざかファイナンスが東京地裁へ「今後は申立外を含めた過払金債務も利息制限法に従って順次支払っていく」という内容の誓約書を提出したことから、同弁護団は10月17日破産申し立てを取り下げた。 

3 ライフに対する会社更生手続開始決定前の過払金返還請求

(1) 更生決定も充当合意を妨げない

 8月21日神戸地裁(第6民事部)は「充当合意は過払金生成過程の計算方法に関する合意であり相殺合意と同視できない」「基本契約の一体性は更生手続で中断終了しない」として原告の請求を全部認容した。

 兵庫県弁護士会HP http://www.hyogoben.or.jp/hanrei/hanreihtml/080821.html

(2) 更生手続による全額失権は信義則違反

 8月27日、大阪地裁(第17民事部)は原審(大阪簡裁平成19年(ハ)第1225号)を変更し、更生手続で全額失権したとの抗弁は他の一般更生債権弁済率54.298%を超えない範囲では信義則違反と判示した。

 兵庫県弁護士会HP http://www.hyogoben.or.jp/hanrei/hanreihtml/080827.html

 また、9月25日大阪高裁(第1民事部)も同様に原審(神戸地裁平成19年(ワ)第875号)を変更し、54.298%を超えた部分でのみ失権を認めた。

4 制限利率の基準となる「元本」

 名古屋地裁(民事第10部)は、9月3日、利限法1条1項「元本」は「当事者が想定していた取引規模をもって判断すべきである」として、基本契約で定めた貸付極度額を基準に年15%の制限利率を適用した。

5 期限の利益喪失の主張は権利濫用

 9月4日、名古屋高裁(民事第2部)は、借主が約定期日に遅れて返済し、その後も約定通りに分割金の支払いを続けた事案の上告審において、期限の利益喪失を前提とした請求をすることは、権利の濫用ないし信義則違反に該当するとした原審(津地裁平成18年(レ)第26号)の判断を是認し上告を棄却した。

6 取引の一体性と消滅時効の問題

(1) 相殺により消滅時効を否定

 9月5日、横浜地裁(第6民事部)は、取引の一連性を否定しながら、第1取引の過払金を、各返済によって消滅した第2取引の貸付金との相殺に供することができるとして結論的に一連計算した場合と同一の結果を認め、消滅時効の抗弁を排斥した。

 兵庫県弁護士会HP http://www.hyogoben.or.jp/hanrei/hanreihtml/080905.html

(2) 充当により消滅時効を否定

 9月8日、東京簡裁(民事第1室)は、途中の空白期間が15年以上ある事案において、制限超過利息への充当指定が無意味となる場合には過払金他の貸付に充当指定したと推定できるとの合理的意思解釈により、第1取引の過払金は、取引一体性の有無や中断の長短を問わず、第2取引の貸付金に充当されるから、消滅時効の成立する余地はないと判示した。

7 取引履歴開示の間接強制で1日15万円

 私募ファンドへの投資金名下に高齢者から金を集めた業者(東京プリンシパル・セキュリティ・ホールディング)が取引履歴の開示を求められた基本事件(東京地裁平成20年(ワ)第15584号)で認諾しながら任意の開示を行わなかったため事案で、「5日以内に履行しないときは履行済みまで1日あたり15万円を支払え」との間接強制を求めた申立に対し、9月12日東京地裁(民事第21部)は同趣旨の決定を下した。

 兵庫県弁護士会HP http://www.hyogoben.or.jp/hanrei/hanreihtml/080912.html

8 消費者金融代表者の個人責任

 民事再生手続中クレディアの代表者が、取締役として法令を遵守すべき措置をとらなかった点に重過失があるとして、広島地裁(民事第1部)は、9月26日株式会社クレディアの代表取締役個人に対して会社法429条1項の責任を認めた。