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消費者問題速報 VOL.62 (2008年9月)

1 五菱会ヤミ金被害回復手続に関する弁護団結成

 東京地方検察庁検察官により「犯罪被害財産等による被害回復金の支給に関する法律」による外国譲与財産支給手続が開始され、被害回復事務管理人からの通知が、検察官が把握している被害者になされたことに鑑み、その支給申請手続を円滑に行うために、申請手続等に協力する趣旨で弁護団が結成されました。詳細は同弁護団まで。

 弁護団連絡先(専用ダイヤル):052-529-1223

 平日10:00~16:00

2 信義則上遅延損害金の利率を年6%の限度でしか認められないとした判決

 藤岡簡易裁判所は、平成20年7月2日、過剰貸付が争われた事案で、原告(債権者)の認識を前提としても過剰貸付であること、他の債権者との間で大幅の債権額カットを含んだ任意整理が成立しているところ、原告の請求(遅延損害金の利率26.28%)を全面認容するとすれば、自己破産・免責等の法的整理へと追い込まれかねない現実的危険があるが、そのようなことはすでに和解をした他の債権者との公平性の面で問題があること等を考慮して、遅延損害金の利率は、信義則上年6%の限度でしか認められないと判示しました。(兵庫県弁護士会HP

3 移送の申立てを却下する旨の判断は地方裁判所の合理的な裁量にゆだねられるとした最高裁決定

 事案は、大阪地裁に提起された、シティズに対する約660万円の過払金返還請求訴訟(争点は期限の利益の喪失の有無等)について、地裁は、約款の簡裁の合意管轄を理由とするシティズの大阪簡裁への移送の申立てを却下する旨の決定をしましたが、大阪高裁はこの決定を取り消し、簡裁への移送決定をしたというものです。

 上記事案について、最高裁判所第二小法廷は、平成20年7月18日、地方裁判所にその管轄区域内の簡易裁判所の管轄に属する訴訟が提起され、被告から同簡易裁判所への移送の申立てがあった場合における同申立てを却下する旨の判断は、地方裁判所の合理的な裁量にゆだねられるとして、原決定を破棄し、地裁が本件訴訟の事案の内容に照らして自庁処理を相当と認め、相手方の移送申立てを却下したのは正当であるとして、原々決定に対する抗告を棄却しました。(最高裁HP

4 定額補修分担金を定める条項を無効とした判決 

 京都地裁は、平成20年7月24日、建物の元賃借人が家主に対して定額補修分担金25万円の返還を求めた事案で、賃貸住宅の賃借人に退去時の修繕費用を事前に負担させる旨の定額補修分担金特約は、消費者である賃借人の義務を加重するもので、賃借人の利益を一方的に害するものであるから、消費者契約法10条により無効である、と判示して定額補修分担金全額の返還を認めました。(NPO法人京都消費者契約ネットワーク)http://kccn.jp/

5 過払金の消滅時効に関する控訴審判決

 神戸地方裁判所は、平成20年8月22日、過払金返還請求権の消滅時効の起算点を、消費貸借取引の終了時又は借主が過払金の発生を認識し、その返還を求める意思を明らかにしたときのいずれか早いほうであると判示しました。

 判決は、継続的な金銭消費貸借取引では、取引が続く限り過払金が増減してその金額が一定しないこと、借主としても過払金の発生や金額を容易に認識できず、貸主に対する弁済を継続することが多いことをその理由に挙げています。

6 ライフに対する過払金返還請求訴訟

(1)  一般更生債権の弁済分(54.298%)の過払金返還を認めた控訴審判決

 大阪地裁は、平成20年8月27日、ライフ(被控訴人)及び管財人は、過払金債権者が多数存在すること及びこれらの過払金債権者から届出があれば更生手続を迅速に進めることができないことを認識していた上で、失権する債権者を減らすための措置を一切とらなかっただけでなく、逆に、カードは従来どおり使用できるとの社告を掲載する等、カード会員に対し取引を継続することができると告知することによって、暗に何らの手続をとる必要もない旨を示したということができることから、被控訴人において、届出のない過払金返還請求権は全面的に失権したと主張することは信義則に反するとして、失権の主張は、本件更生手続における一般更生債権の弁済率54.298%を超える範囲に限って認められると判示しました。(弁護士会保管)

(2) 更生手続開始決定前の過払金全額の返還を認めた判決

 神戸地裁は、平成20年8月21日、継続的な金銭消費貸借取引において、発生した過払金は新たな借入金に充当されるという充当の合意を含んでいるが、その合意は更生手続開始決定の前後を通じて継続しており、開始決定前の過払金は決定後の貸付に充当されると判示して、請求額全額の返還を認めました。

7 あまめしば控訴審における出版社・コメントを執筆した学者との和解成立

 平成20年8月29日、あまめしば控訴審(名古屋高等裁判所民事4部・原審判決・平成19年11月30日・速報№54・4掲載)において、一審原告と一審被告の出版社と学者との間で、一審両被告らが一審原告に対し600万円を支払う内容を含む和解が成立しました。出版社に対しては、原審で一審原告が敗訴しており、出版社が健康食品に関する出版やコメントについて、出版社が責任を認めた和解として注目されます。なお、メーカー、販売会社との間では訴訟が継続しています。