「重要経済安保情報の保護及び活用に関する法律」が2024年5月10日に成立した。

 当会は、同年4月19日に『「重要経済安保情報の保護及び活用に関する法律」案の抱える問題点の解消がなされないまま可決されることに反対する会長声明』を表明した。

 当会は、同声明において、

① 「重要経済安保情報」の内容が抽象的かつ極めて広範であるので、恣意的に指定される危険が高い、にもかかわらず、「重要経済安保情報」の漏えい又は取得行為が処罰されるので、ジャーナリストや市民が情報を取得しようとする場合に萎縮効果が生じ、国民の知る権利が著しく害される

② 適性評価の対象者が民間の技術者・研究者にも広がり、対象者の犯罪歴、情報管理、薬物使用、精神疾患、飲酒節度、信用状態などのセンシティブな情報や、対象者の家族・同居人の情報までもが、内閣総理大臣の下に集積されることになる。調査には対象者本人の同意が要件とされてはいるが、行政機関又は適合事業所の業務のためには本人は事実上同意せざるを得ないであろうことが容易に想像され、プライバシー保護の観点から大いに問題がある

との問題点を指摘した。

 そして、国会審議において、適性評価では個人の性的関係も調査対象になるとの答弁がなされたことから、プライバシー侵害の危険性はより高まったといえる。

 しかし、「重要経済安保情報」の範囲を明記せず、プライバシー保護のための規定もなく、当会が上記会長声明で指摘した問題点が解消されないまま、法律が成立したことは遺憾である。

 ただ、衆議院内閣委員会において、22項目にわたる附帯決議がなされている。

 当会としては、少なくとも、附帯決議の趣旨等を踏まえ、重要経済安保情報が合理的で最小の範囲で指定されるよう、指定の具体的な基準等が示され、それが公開されるほか、対象者のプライバシー等が保障され、国民の知る権利の保障に関する報道又は取材の自由が不当に侵害されないための対策が講じられることを強く求める。

                        2024年(令和6年)5月16日

                         愛知県弁護士会

                            会長   伊 藤 倫 文