本日、日本国憲法が施行されてから75年目の憲法記念日を迎えました。
日本国憲法は、個人の自由と権利を保障するため、憲法によって、政府の恣意的な権力の行使を制限するという立憲主義を基本理念とし、基本的人権の尊重、恒久平和主義、国民主権を基本原理としています。
日本国憲法は、確実に国民に定着し、国民は、この憲法の下、不断の努力によって権利と自由を拡充させ、民主主義社会を実現・発展させるとともに、平和な国家を築き上げてきました。
一昨年から続く新型コロナウイルス感染症の拡大は未だ終息の目処が立たず、貧富の差が拡大し、日々の食事にさえ事欠く方々、さらには、女性、子ども、マイノリティ、高齢者、障がいのある人など社会的に弱者とされる方々の人権が蔑ろにされる事態が多く見られます。また、目を世界に転じてみますと、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻が未だ終息の目処が立たない状況にあります。ロシアによるウクライナ市民への非人道的な行為を目の当たりにしています。
国内外を問わず大変なこととなっている、こんな時こそ、人権を護ることの大切さを国民の皆さまと共有するとともに、当会は、人権を護ることの大切さを啓発していく活動をより推進していきます。
このような最中、憲法改正の議論が急速に進んでいます。
安倍政権発足以降、この傾向が顕著であり、ここ数年、話題となった単語は、「憲法9条改正」「集団的自衛権」「公文書改ざん」「モリカケ問題」「桜を見る会」「検察官定年延長」「日本学術会議会員任命拒否」「臨時国会召集要求無視」「核共有論」「敵基地攻撃能力」「反撃能力」など、日本国憲法を蔑ろにしていると思われるものばかりです。さらに、現在開催されています通常国会では、従来予算委員会の審議中は開会しない運用であった衆議院憲法審査会が毎週のように開催され、緊急事態条項の創設や衆議院議員の任期延長を認めるべきであるとの議論が進んでいます。
あたかもコロナ禍やロシアによるウクライナへの軍事侵攻に紛れるようにして、日本国憲法を改正すべきであるとの議論が急速に進みつつあります。かかる現状は憂慮すべき状況にあると考えています。
全世界が混乱のまっただ中にあるいまこそ、日本国憲法が果たしてきた役割について、確認する必要があります。将来の日本とはどうあるべきなのかを思い描き、将来を担う子どもたち、若者たちが、平和で安心して暮らせるためにはどうしなければならないか、そして全世界が平和で安心して生活するためにどうあるべきか、を十分に検討して、憲法と向き合っていかなければならないと考えています。
愛知県弁護士会は、自由、平和、そして個人の尊重という日本国憲法の価値を希求して、基本的人権の擁護と社会正義の実現のための活動を続けてまいります。
2022年(令和4年)5月3日
愛知県弁護士会 会長 蜂須賀太郎