編・著者 愛知県弁護士会 研修センター運営委員会
法律研究部 改正債権法・新旧適用検討チーム
出 版 社 新日本法規出版
サ イ ズ A5版
頁  数 304頁
定  価 3,850円(税込)
発行年月 2019年11月

解説文

 民法の一部を改正する法律の施行日(2020年4月1日)が、いよいよ間近に迫ってまいりました。私たちは、日々生活し、経済活動を行っていますから、当然のように、施行日をまたぐ法律関係が生じ得ます。その場合、新しい民法に基づいて対応すればよいのでしょうか、あるいは、改正前の民法に基づいた対応が必要になるのでしょうか。
 どちらの民法を適用するのかについての基準は、「改正法附則」に経過措置が定められています。しかし、その基準は法律関係ごとに異なっているなど複雑で、判断に迷う場面も生じます。
 そこで、愛知県弁護士会研修センター運営委員会・法律研究部 改正債権法・新旧適用チームは、民法の重要な改正項目をピックアップし、施行日をまたいだ法律関係が生じた場合、新しい民法が適用されるのか、改正前の民法が適用されるのかについて整理しました。
 本書の構成は、Q&A方式です。民法総則、債権総則、契約、契約各論の4章構成であり、施行日をまたいだ法律関係が生じる59の具体的なケースを設定しました。各出来事と施行日との先後関係を分かりやすくするために図表を用いたことと、いずれの法律が適用されるかについての回答に加え、弁護士の実務経験を踏まえ、新法施行に伴い準備しておくべき事柄や留意点を「実務の目」としてまとめたのが特徴です。
 このように、経過措置に焦点を当てて、具体的なケースに沿って解説を試みた書籍は他には見られません。企業の法務担当者はもとより、弁護士などの法律実務家にお勧めいたします。

【目次】

第1章 総 則

 第1節 法律行為
第1 意思表示
 ケース1 錯誤の効力 施行日前に締結した契約について、施行日後に錯誤を主張する場合の効果
 ケース2 詐欺取消しと第三者 施行日前に締結した契約について、施行日後に詐欺を主張する場合の新旧適用関係
 ケース3 意思表示の到達と契約の成立 承諾の意思表示の発信と意思能力の喪失

第2 代 理
 ケース4 代理人の行為能力 法定代理人が制限行為能力者の場合の法律行為の取消し
 ケース5 復代理人を選任した代理人の責任 施行日後に復代理人を選任した場合の施行日前に選任された代理人の責任

 第2節 消滅時効
 ケース6 消滅時効① 施行日後に支出した必要費の償還請求と消滅時効の期間
 ケース7 消滅時効② 協議を行う旨の合意による時効の完成猶予
 ケース8 消滅時効③ 生命身体に関する不法行為請求権の時効

第2章 債権総則

 第1節 法定利率 
 ケース9 法定利率① 施行日前に締結した契約に、履行時期及び遅延損害金の定めがない場合の法定利率
 ケース10 法定利率② 施行日前に発生した交通事故に基づく損害賠償請求権と中間利息控除

 第2節 債務不履行の責任
 ケース11 明確な履行拒絶意思と填補賠償 施行日前に締結された契約について、施行日後に相手方が履行拒絶意思を明確に表示した場合
 ケース12 債務不履行責任の免責事由 施行日前に締結した契約に関し、施行日後に債務不履行が発生した場合の免責事由
 ケース13 損害賠償の範囲と予見可能性 施行日前に締結した契約に関し、施行日後に債務不履行が発生した場合の損害賠償請求の範囲
 ケース14 代償請求権 施行日前に契約を締結し、施行日後に目的物が滅失した場合の代償請求権

 第3節 債権者代位権・詐害行為取消権
第1 債権者代位権
 ケース15 債権者代位訴訟における訴訟告知 施行日前に発生した被保全債権による債権者代位訴訟提起時の債務者に対する訴訟告知の要否

第2 詐害行為取消権
 ケース16 詐害行為取消権の被保全債権 施行日前の原因により発生した被保全債権による詐害行為取消の可否
 ケース17 相当対価売買の詐害行為取消 施行日前の相当対価での不動産売買を、施行日後に登記した場合の詐害行為取消の可否
 ケース18 偏頗弁済の詐害行為取消 施行日前の被保全債務による偏頗弁済の詐害行為取消の可否
 ケース19 詐害行為取消の効力 施行日後の転得者に対する詐害行為取消の効力

 第4節 多数当事者の債権債務
 ケース20 連帯保証人に対する請求 連帯保証人に対する請求と主債務者に対する債権の消滅時効
 ケース21 共同不法行為者の免除と求償関係 施行日前に発生した交通事故の共同不法行為者について、施行日後に被害者が共同不法行為者の一人と和解をした場合の求償関係

 第5節 保証債務

 ケース22 保証意思宣明公正証書の作成 施行日後に締結する事業のための個人保証について、施行日前に保証人が保証意思を宣明する公正証書を作成する方法

 ケース23 継続的売買契約の根保証 継続的売買契約における代金債務の根保証と取引基本契約書の取扱い
 ケース24 身元引受の効力 施行日前に身元引受書を提出させ、施行日後に本採用された身元引受の効力

 第6節 債権譲渡・債務引受
第1 債権譲渡
 ケース25 譲渡制限特約違反の債権譲渡の効力 施行日前に発生した譲渡制限特約付債権の施行日後の譲渡の効力
 ケース26 譲渡禁止特約違反の債権の悪意の譲受人への譲渡(二重譲渡) 譲渡禁止特約付債権の施行日前後における悪意・重過失の者への二重譲渡の効力
 ケース27 譲渡禁止特約違反の債権の悪意の譲受人への譲渡(次々譲渡) 譲渡禁止特約付債権の施行日前後における悪意・重過失の者への次々譲渡の効力
 ケース28 将来債権の譲受人に対する譲渡制限合意の対抗 施行日前に債権譲渡及び債権譲渡登記がなされた将来債権に対して施行日後に譲渡制限合意をし、その後、債務者に対し債権譲渡通知がなされた場合の譲渡制限合意の対抗の可否

第2 債務引受
 ケース29 免責的債務引受における引受人の求償権 施行日前に債務者と引受人とで契約締結し、施行日後に債権者が承諾した免責的債務引受における引受人の求償権

 第7節 債権の消滅
第1 弁 済
 ケース30 第三者の弁済〔施行日後の弁済〕 施行日前に生じた債務を施行日後に第三者が弁済したところ、その弁済が債務者の意思に反することを債権者が知らなかった場合の第三者の弁済の効力
 ケース31 弁済の充当〔施行日後の弁済〕 施行日前に生じた債務と施行日後に生じた債務を負担する場合に、施行日後に弁済をした者の給付がその債務の全部を消滅させるのに足りないときの弁済の充当
 ケース32 担保保存義務の例外 施行日前に生じた債務につき、施行日後に担保を放棄した場合の免責の是非

第2 相 殺
 ケース33 不法行為債権と相殺禁止 施行日前に生じた不法行為債権を受働債権とする相殺の可否
 ケース34 差押えと相殺 差押え前の原因に基づいて生じた債権を自働債権とする相殺の可否

第3章 契 約

 第1節 契約総則
第1 契約の効力
 ケース35 承諾の延着と契約の成立 隔地者間の契約につき、承諾が延着した場合の契約成立の適否
 ケース36 危険負担 施行日前に締結された契約について、施行日後に、当事者双方に帰責事由なく履行不能となった場合の契約の処理
 ケース37 契約上の地位の移転 施行日前に締結した売買契約についての施行日後の契約上の地位の移転

第2 契約の解除
 ケース38 催告解除と軽微性の抗弁 施行日前に締結された契約について、施行日後に債務者が債務不履行に陥り、債権者が催告及び解除の意思表示をした場合
 ケース39 無催告解除 施行日前に締結された取引基本契約に基づき、施行日前又は施行日後に締結された個別契約について、相手方が、施行日後に履行拒絶意思を明確に表示した場合
 ケース40 債務不履行に基づく無催告解除 施行日前に締結した契約に関し、施行日後に契約目的の達成不可能の事由が発生した場合の無催告解除の可否

 第2節 定型約款
 ケース41 定型約款の合意の効力 施行日前に締結された定型取引に係る契約の、施行日後の効力
 ケース42 定型約款の内容の表示と変更 施行日前に締結された定型約款に基づく契約の、施行日後における新法(内容の表示や変更に関する規定)適用の可否

第4章 契約各論

 第1節 売 買
 ケース43 売買契約において瑕疵ないし契約不適合があった場合の解除 施行日前に締結された売買契約において施行日後に目的物に瑕疵ないし契約不適合が発見された場合における契約解除の可否
 ケース44 特定物売買における危険の移転時期 特定物売買の契約締結後、引渡し前又は引渡し後に目的物が滅失した場合の代金請求の可否
 ケース45 買主の追完請求権 売買契約の目的物に瑕疵ないし契約不適合があった場合における、買主の追完請求の可否
 ケース46 買主の権利行使期間 売買契約の目的物に瑕疵ないし契約不適合があった場合における、買主の売主に対する権利行使期間

 第2節 賃貸借
 ケース47 貸主の損害賠償請求権についての消滅時効 施行日前に締結された賃貸借契約につき、施行日後に用法違反による損傷が生じた場合の貸主の損害賠償請求権の消滅時効
 ケース48 賃借物の一部滅失による賃料の減額 施行日前に締結された賃貸借契約につき、施行日後に賃借物が一部滅失した場合の賃料減額請求権
 ケース49 賃貸借契約の更新 施行日前に締結された賃貸借契約が施行日後に更新された場合の新法適用の有無
 ケース50 賃貸借契約に付随する保証契約 施行日前に締結された賃貸借契約が更新された場合の、賃貸借契約に付随する保証契約に対する新法適用の有無
 ケース51 賃借人による修繕費の償還請求の可否 施行日前からの賃借人によって施行日後に行われた修繕の費用償還請求の可否

 第3節 消費貸借
 ケース52 消費貸借の目的物の期限前返還 施行日前の借入金を施行日後に弁済した場合の新法適用の有無
 ケース53 諾成的消費貸借の解除と借主の損害賠償義務 施行日前に締結された諾成的消費貸借契約につき、施行日後に融資が実行される前に解除した場合の損害賠償義務の有無

 第4節 使用貸借
 ケース54 諾成的使用貸借の解除 施行日前に締結された諾成的使用貸借契約につき、施行日後に解除された場合の目的物引渡請求の可否

 第5節 請 負
 ケース55 請負人の責任① 施行日前に請負契約を締結し、施行日後に引き渡した目的物について、不具合があることが判明した場合の請負人の責任
 ケース56 請負人の責任② 施行日前に請負契約を締結し、施行日後に追加・変更工事契約を締結した場合の請負人の責任

 第6節 委 任
 ケース57 受任者の報酬請求 委任契約が自動更新された場合の新法と旧法の適用関係、受任者に帰責事由があった場合の報酬請求権

 第7節 雇 用
 ケース58 雇用契約の更新 施行日前に締結した期間の定めのある雇用契約が、施行日後に更新された場合について、更新後の雇用契約に適用される法律
 ケース59 期間の定めのない雇用契約と消滅時効の起算点 施行日前に締結された期間の定めのない雇用契約について、施行日後に生じた安全配慮義務違反による損害賠償請求権の消滅時効