◆消費者委員会では、5月12日午後1時30分から、日本弁護士連合会・中部弁護士会連合会の共催で、シンポジウム「カジノ作って本当に大丈夫?~IR関連法(カジノ法)とギャンブル依存症対策を考える~」を開催しました。

 4月27日に、特定複合観光施設区域整備法案(カジノ解禁実施法案)が閣議決定、法案提出がされたタイミングで、市民を含む約100名の参加を得て、大変盛況な会となりました。

◆シンポでは、まず、日弁連カジノ・ギャンブル問題検討WG座長である新里宏二弁護士(仙台弁護士会)より、「カジノ解禁推進法及びカジノ実施法案の問題点について~日弁連などの取組」の報告がありました。

 新里弁護士からは、観光立国の実現のために本当にカジノの解禁が必要なのか?そもそも誰の利益を当て込んでいるのか?カジノを解禁することは財政の改善に資するのか、それだけの高い経済効果を上げられるのか?健全なカジノ事業を実現するための規制の強化と、この法律が立法目的とする高い経済効果とは、両立し得ないのではないか?7日間で3回、28日間で10回までという入場回数制限を設けるというが、これだけ通っていれば、すでに重度の依存症というべきではないか?といった問題が指摘されました。

◆続いて、静岡大学の鳥畑与一教授から、「露呈するカジノ合法化の矛盾-営利優先と依存症対策-」と題する講演がされました。
 推進派は、"IRの収益メカニズムは、施設全体が集客し、カジノ部分が集中的に収益化する仕組みである"というが、カジノ(ギャンブル)の経済的特質は"ゼロサム"の営みであって、顧客の負け=胴元の儲けである。つまり、IR構想の収益エンジンとしてのカジノの収益は顧客の損であることなどが指摘されました。
 また、カジノ合法化の論理は、"カジノ単体であれば違法、しかし、統合型リゾート(IR)なら刑法の違法性を阻却できる(新たな公益が認められるから-法務省の8条件参照-)"というものであるが、しかし、新たな公益などないことが指摘されました。

◆さらに、カジノで約1千万円を失い破産したという50代の元会社経営の男性も登壇。体験談を語ってくれました。「悔やんでも悔やみきれない、もう元には戻らない。」という男性の声は、重く受け止める必要があります。

◆最後は日弁連カジノ・ギャンブル問題検討WG委員である成見暁子弁護士(宮崎県弁護士会)による「ギャンブル依存症対策の現状と課題」の報告です。
 報告の前半では、ギャンブル依存症の症状・特徴、ギャンブル依存症が病気であること、その発症の機序・要因についての医学的知見が重ねられていることなどが紹介され、後半では、依存症対策としての実効的な規制が難しいことが紹介されました。
 「悔やんでも悔やみきれない、もう元には戻らない」、事後的な治療では遅いのです。
 かといって、効果的な予防規制は困難です。当たり前です、ギャンブルの収益は顧客の損、ギャンブルを公認する以上収益を上げなければならない、収益を上げることと規制の強化が両立するわけがありません。

◆新里弁護士は、カジノ問題は、国づくりの在り方を問う問題であることを指摘しました。人を不幸にするビジネスで成長戦略を描くことの是非が問われてるのです。
 残念ながら、カジノ問題に対する社会の関心はまだ高いとはいえません。やりたい人がやるなら問題ない、自分は関係ない、という無関心層がまだまだ多いのです。しかし、それでいいのでしょうか?
 今回のシンポのタイトルは、「カジノ作って本当に大丈夫?」です。
 今回のシンポで指摘されたカジノ解禁法の問題点を知れば、結論の賛否はともかくとして、誰しも、いったんは「カジノ作って本当に大丈夫?」って思うはずです。
 今回のシンポをきっかけとして、「カジノ作って本当に大丈夫?」という問いかけを広めていく必要がある、このことを確認して、シンポは閉会となりました。