「日本国民の大多数は死刑制度に賛成している」という話をよく聞きますが、これは本当でしょうか。確かに、2019年の世論調査では、回答者の約8割が『死刑もやむを得ない』と回答していますが、実はそのうち約4割が「状況が変われば、将来的には、死刑を廃止してもよい」と答えています

 つまり、絶対に死刑を廃止してはいけないという意見は全体の半数もなく、世論も圧倒的に死刑存置を支持しているわけではありません。

 死刑制度廃止委員会では、制度の実態、実際の死刑事件の経緯、世界の議論状況等を勉強し、市民の皆様へ情報提供する活動をしています。

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意外と知らない!?死刑制度を取り巻く状況

 日本に死刑制度があることは誰もが知っているけど、制度を取り巻く状況は意外と知られていません。

 先ほど述べた世論調査のほかにも、たとえば、次のような事情をご存じでしょうか。

・世界195か国のうち、7割は死刑を廃止または停止しており、実際に死刑を執行しているのは54か国のみ。

・経済協力開発機構(OECD)38か国のうち、死刑制度があるのは米国・韓国・日本のみ。米国は半分の州で廃止または停止し、韓国は1997年を最後に執行していない。

・日本が犯罪人引渡条約を締結している相手は上記の米国・韓国のみ。死刑制度の存在が、他の国と条約締結できない一因ではないかと言われている。

・国連、EUは日本に対して死刑廃止を勧告している。

弁護士会のスタンス

 このような状況を踏まえて、日弁連は、2016107日に「死刑制度の廃止を含む刑罰制度全体の改革を求める宣言」を採択しました。

 愛知県弁護士会も、20201215日の臨時総会で、「死刑制度の廃止を求める決議」を賛成多数で可決しました(ただし、会としての決議であって、会員個人の思想・信条を拘束するものではありません)。

 決議の理由は、概ね次のとおりです。

・死刑は命を奪うという重大な人権侵害である

・誤判・えん罪の場合に取返しがつかない

・無期刑などと比べて、死刑に特有の犯罪抑止力があるという事実は証明されていない

・被害者の心情を量刑に反映させ、また、生活を支援することは、死刑の存廃がどうであれ必要なことであり、死刑の存廃は他の要素も総合的に考えて決めるべきである

・死刑廃止の国際的潮流に取り残されてしまう

 この宣言の内容を基本スタンスとして、死刑廃止を実現すべく、死刑制度廃止委員会では、以下のような活動を行っています。

死刑制度廃止委員会の主な活動

1.「死刑廃止を考える日」シンポジウム

 毎年12月ころに、「死刑廃止を考える日」として、愛知県弁護士会館にて、映画上映及び講演会等を内容とするシンポジウムを行っています。

 昨年は、死刑判決が下され再審審理中の「袴田事件」を題材とした映画上映と、袴田事件の再審請求人(袴田巌氏の実姉)及び弁護人の講演会を実施しました。

 本年も12月17日(土)にシンポジウムを実施すべく企画中です。詳細が決まりましたらこのホームページでお知らせしますので、ご確認ください。

(参考資料:昨年度のシンポジウムのチラシ)

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2.死刑に関する勉強会

 毎月1回程度、死刑制度廃止委員会に所属する会員同士で集まって、死刑に関する勉強会を開催しています。

 勉強会の内容は様々であり、死刑判決が下された実際の事件について、その弁護人を務めた弁護士を招いて事件の問題点や弁護手法について議論したり、あるいは、死刑制度の理論的問題について、大学教授を招いて講義を受けたりと、最先端の議論に取り組んでいます。

 その他、随時委員同士で情報交換を行い、死刑に関するニュースや、他の弁護士会の取り組み、おすすめの書籍などを教えあって、日々切磋琢磨しています。

(勉強会の様子)

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3.国会議員との意見交換

 所属政党を問わず、また、死刑廃止派か存置派かを問わず、愛知県選出の国会議員に対し、死刑制度に関するアンケートを行ったり、死刑廃止を求めて面談を行ったりと、コミュニケーションをとっています。

おわりに

 死刑制度廃止委員会では、以上のような活動を通して、市民の皆様一人一人が死刑制度について考え、議論する土台を提供したいと考えております。

 1217日(土)実施予定の「死刑廃止を考える日」シンポジウム等、市民の皆様に向けた情報発信については、随時このホームページで公開しますので、ぜひご確認ください。