令和6年1月1日に能登半島地震が発生してから、すでに1年数ヶ月が経過しました。内閣府非常災害対策本部の発表によれば、令和7年3月11日時点の被害状況は、死者・行方不明者が549名(うち、災害関連死が321名)、半壊以上の住家被害が2万9941棟であり、東日本大震災以降、最大の被害となっています。さらに、令和6年9月には能登豪雨災害が被災地に再び大きな被害をもたらしました。被災者の方々の生活再建への道のりはまだ道半ばです。

このような状況の中で、愛知県弁護士会も、能登半島地震の被災者を支援する活動に取り組んでいます。そのうちのひとつが、被災地で開催される無料相談会への弁護士派遣です。金沢弁護士会や法テラスは、被災地で無料相談会を実施しています。これらの相談会には、全国各地から弁護士が派遣されているのですが、愛知の弁護士もこれに参加し、被災者からの相談に乗っています。

先日、私は、この枠組みで、能登半島の七尾市を訪れました。その日は、2名の被災者の方からゆっくりとお話を伺いました。具体的な内容は控えますが、法律相談に訪れたきっかけとなった案件以外にも、世間話のように状況をお伺いしている中で、罹災証明のことや、災害関連死のことが出てきました。能登半島で暮らしている方々の暮らしの中に、被災による法律問題がたくさん埋まっていることを実感しました。

能登半島地震からの復興は、今後、被災者の生活再建への動きが本格化していく段階に入っていきます。この段階では、一人一人の被災者の状況に応じた、きめ細やかな支援が求められます。いわゆる「災害ケースマネジメント」です。弁護士が被災者向け相談会を通じてできる支援は、能登半島地震の被害規模に比べれば、あまりにも限られています。しかし、たとえ限られた範囲だとしても、基本的人権の擁護と社会正義の実現を使命とする弁護士として、縁のあった被災者の状況に応じて、行政や他の専門家などとも連携しながら、その方をきめ細やかに支援していきたいと考えています。

なお、今回の派遣相談には、ちょうどその時期に私のところで研修をしていた、名古屋大学法科大学院のエクスターンシップ生が同行してくれました。その学生から、報告文を寄稿してもらいました。とても良い視点からの文章だと思いますので、以下、ここで紹介させていただきます。

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 石川県七尾市での「法テラス号」無料法律相談会に同席しました。エクスターンシップの派遣先の弁護士が、ちょうど派遣の期間中に愛知県弁護士会からの応援としてこの相談会を担当することになったため、私も七尾市まで同行しました。

 相談者は、予約の上でいらっしゃった2人1組でした。弁護士が相談者のお二人から話を聞く中で、能登半島地震による被害に関連する新たな話題が複数出てきました。結果的に、お互いが初めに想定していたテーマだけでなく、他の複数の被災関連のテーマについても、弁護士から法的なアドバイスをすることができました。

 相談者の話から、被災による生活や手続の苦労が伝わってくるとともに、相談者が相談を経て――少しだったかもしれなくても――明るい気持ちになられているのを、私は感じ取りました。また、相談者が想定していなかったテーマの話が展開していったことから、法的なアドバイスが可能な不満や悩みを抱える方でも、こういった相談会を利用していない方がそれなりにいるのではないか、と考えました。

 愛知県と七尾市を往復するのは、気軽にできることではありません。お金も時間もかかります。それでも、被災者にとって少しでも相談しやすい環境、身近で話を聞いてもらえる環境をつくるために、被災者相談支援の取り組みが必要だと思います。

 このような貴重な経験をさせていただいたことを、法テラスや担当弁護士、相談者の方々に感謝いたします。

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