「司法修習」・「谷間世代」って何?

 裁判官、検察官、弁護士になるためには、司法試験に合格後、約1年間の研修を受けることが法律で義務付けられています。この研修のことを「司法修習」といいます。また、司法修習を受けている人のことを「司法修習生」といいます。

 司法修習は、全国各地の裁判所、検察庁、法律事務所での実務研修のほか、司法研修所(埼玉県和光市)での研修を、平日午前9時頃から午後5時頃までのフルタイムで受けることになっており、通常の会社員同様の生活を送っています(研修が長引き残業状態になることもあります)。しかも、司法修習生には「修習専念義務」があり、原則として兼業は禁止されているため、休日や平日夜間のアルバイト等も基本的にはできません。

 このように、平日フルタイムで裁判官、検察官、弁護士になるための実務研修をしている司法修習生には、その間の経済的生活保障として、戦後60年以上にわたり、準公務員として給与が支払われていました。

 しかし、2011年11月から制度が変わり、無給となってしまいました。司法修習は無給となっても、修習専念義務により司法修習生が自らお金を稼ぐことはできません。そのため、司法修習生は、約1年という司法修習中の生活費として国から約300万円の貸与、すなわち借金をするか、親族等に生活費の借入や援助をお願いする等しなければ生活できないという、大変不合理な制度の下での研修を強いられることになりました。

 その後、2017年4月には再び法律が改正され、司法修習生に一定の給付がなされるようになりましたが、月額13万5000円と、以前の給与水準には達していない状況です。しかも、2017年の法改正までの6年の間に司法修習を行った司法修習生に対しては、2017年の法改正の際、救済措置はなんら採られず、司法修習生の取り扱いに不平等が生じたままの状態です。

 司法修習が無給だった時期に司法修習生だった新第65期から70期までの人たちを「谷間世代」と呼んでいます。

 谷間世代は、司法修習中に負わざるを得なかった借金返済という経済的負担のみならず、司法試験に合格し、裁判官、検察官、弁護士になるために法律で義務付けられた約1年もの司法修習を無給で行わなければならなかったことによる精神的負担(自分たちは国から切り捨てられた、給与を受けていないため公益的活動に積極的になれない等)を受けています。

⇒【ご参考:聞いてください~谷間世代当事者 心の声~[41796].pdf】 

 そして、この谷間世代は、法曹全体の約4分の1にあたり、これからの司法を担う中心的存在です。そのため、司法修習が無給だったことにより谷間世代に生じた経済的・精神的足かせを事後的に取り除くことで、谷間世代はさらに輝くことができ、ひいては法曹の活躍の幅も量も広げることにつながり、司法機能の強化に役立ちます。

 私たちは、この国の未来の司法をよりよいものとするため、谷間世代への事後的措置を求め、国会議員会館内での集会や地元での市民集会を開催したり、国会議員や市会議員等へ繰り返し陳情を行ったりする等、積極的に活動しています。

国会議員の多くは私たちの活動に肯定的!

 当委員会では、このコロナ禍においても、感染対策を十分行い、ZOOMなどを活用しながら、途切れることなく議員要請を続けています。

 その結果、多くの国会議員の方々にこの問題が認知され、現在では、愛知県選出36名の国会議員中31名もの議員が、谷間世代への事後的是正措置へ向けた応援メッセージを寄せてくれています(2022年6月13日時点)。

 2022年5月18日に東京の国会議員会館で行った議員要請では、昨年4月にも内閣委員会でこの問題を取り上げてくださった吉田統彦議員から、「また委員会で質問しましょう。色々やっていきましょう。」との嬉しい言葉をいただきました。その他何名もの国会議員が時間を取ってくださり、谷間世代当事者の声を聞き、谷間世代の問題を風化させないために超党派で臨んでいくことを約束してくださるなど、当委員会の活動を応援してくれています。

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 (安江伸夫議員)           (柘植芳文議員)     

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 (吉田統彦議員)           (神田憲治議員)

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 (大塚耕平議員)           (古川元久議員)

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 (近藤昭一議員)           (伊藤渉議員)

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 (石井拓議員)            (伊藤孝恵議員)

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 (本村伸子議員)           

 2022年6月14日には、国会議員会館において、『これからの司法を支える谷間世代との院内意見交換会』が開催されました(Zoom配信併用)。同集会は、国会議員本人出席28名、秘書による代理出席41名、一般参加者194名(Zoom出席者含む)と大盛況で、日本弁護士連合会の小林会長も出席しました。

 国会議員からは、「この問題はこの国の司法にかかわる問題。超党派でやっていきましょう」、「制度変更により谷間世代を生み出してしまったことに対し政治家として責任がある。事後的措置により、谷間世代が抱える『ひっかかり』が取れるよう尽力することをお約束します」等、大変力強い挨拶が続きました。

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(院内意見交換会の様子(前方は国会議員席))

 また、この日までに、252名もの国会議員から応援メッセージが寄せられました。これは、全国会議員の3分の1以上です。今後さらに多くの国会議員にご賛同いただけるよう、頑張って参ります。

おわりに 

 貸与を受けた65期は、今年7月で5回目の返済を迎えます。返済が進むほどこの問題の解決は実務上困難になっていくといえ、谷間世代問題の是正は喫緊の課題です。

 これからも、感染予防に十分配慮しながら、改めて運動を盛り上げ、一日も早い法改正を実現できるよう、尽力して参ります。