はじめに

 令和元年6月22日、愛知県弁護士会館5階ホールで、「『少年法』私たちはなぜ年齢引下げに反対するのか~非行少年の実像から考える~」をテーマに、子どもの権利イベントが開催されました。

 一昨年度、昨年度に引き続き、今年度のイベントも、少年法適用年齢の引下げの問題点がテーマでしたが、今年も、会場が一杯になるほどのたくさんの方にご来場いただきました。

第1部 基調講演・基調報告

 第1部では、まず、筑波大学の土井隆義教授から、「少年犯罪の動向と眼差しの構図」と題して基調講演をしていただき、社会学の観点から、現在の若年層が置かれている状況を的確に分析していただくとともに、不満は低下しているものの不安が増大しており、異質な他者を排除する傾向が強まっている社会の中で、少年の社会復帰、ひいては、生きやすい社会を実現するためには、社会とのつながりを保ちつつ矯正教育を進めていく現行少年法の思想とその実践こそが必要であることをご教示いただきました。

第1部 基調講演

 次に、日本弁護士連合会子どもの権利委員会委員の金矢拓弁護士から、現在の少年法制と年齢引下げの議論状況について基調報告をしていただき、法制審議会では、現行少年法の手続や保護処分が有効に機能していることは共通認識となっていることや、年齢引下げに賛成する意見はいずれも説得力に乏しいこと、年齢引下げに伴って生じる弊害に対して刑事政策的措置を講じるというのは本末転倒であることなどをご報告いただきました。

第1部 基調報告

第2部 パネルディスカッション

 第2部では、基調講演をしていただいた土井教授、基調報告をしていただいた金矢弁護士に、裁判官・弁護士として少年事件に長年関わってきた当会の多田元会員(子どもの権利委員会委員)がパネリストとして加わり、当会の高橋直紹会員(子どもの権利委員会委員)の進行で、パネルディスカッションが行われました。

 多田会員から、土井教授の基調講演に触発された熱い発言がされたり(引用された少年の詩はとても感動的でした。)、土井教授から、基調講演の内容も踏まえて、年齢引下げに賛成する意見のほとんどは、少年法制の内容を知らないために出てくるものであり、知ることで意見が変わるといった話がされたりするなど、短い時間ながらも充実した意見交換がされました。

第2部 パネルディスカッション

おわりに

 金矢弁護士の基調報告にもあったとおり、現行少年法の手続や保護処分は有効に機能しているのであり、その対象から18・19歳の少年を外す意味は全くないというべきですが、そのことが世間一般にはまだまだ知られていない中で、何となく年齢引下げに与する立場の方も少なくないと思われます。そのような空気を変えていくためにも、私たち弁護士が様々な取組を続けていくことが大事だということを痛感させられるイベントとなりました。