
本部長就任のご挨拶
令和8年度 愛知県弁護士会 会 長
秘密保護法・共謀罪法対策本部 本部長
長 谷 川 龍 伸
本年度の秘密保護法・共謀罪法対策本部本部長に就任しました。1年間、よろしくお願いいたします。
1 2013年(平成25年)に特定秘密保護法が制定され、2014年(平成26年)に施行されました。これは、防衛、外交、スパイ活動防止、テロ防止の4分野に関する情報のうち、特に秘匿が必要とされるものを「特定秘密」に指定して、情報公開しないことが出来るようにした上、特定秘密を漏洩した者や不正に取得した者に刑罰を科すものです。
また、2017年(平成29年)に「組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律」の一部を改正する法律が成立、施行され、予備罪よりも前の段階の「共謀」を処罰できることとなりました。
これらは、「安全保障」や「テロ対策」の名の下に、国民、市民の知る権利や表現の自由を萎縮させ、侵害するおそれが強いものであり、その廃止を含む抜本的な見直しを図るための活動が必要です。
2 最近では、2025年(令和7年)5月、サイバー攻撃を未然に防ぐとして「能動的サイバー防御法(ACD法)」が成立し、2027年(令和9年)中に本格的な運用が始まる見通しとされています。
これは、政府が平時からネット空間を監視して通信情報を収集・分析し、攻撃元のサーバーへの侵入・無害化を可能にするものでありますが、他方で通信の秘密の制限を容認するものでもあるため、市民に対する権利侵害のおそれが強いものであり、今後も監視していく必要があります。
3 現在、国際情勢においては、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻が起き、ガザ地区におけるイスラエルとハマスとの紛争が続いています。さらに、アメリカとイスラエルがイランに軍事侵攻を行い、こちらも戦闘が続いています。
こうした国際情勢を受けて、日本国内において、「国家情報局」の創設や、「スパイ防止法」の制定など、国家安全保障の名のもとに、国民の権利を侵害する恐れのある立法政策が進められており、一気に戦時体制を構築しようとする動きがあります。
4 当本部は、2025年4月30日、京都大学人文科学研究所附属人文情報学創新センターの安岡孝一教授を講師に迎え、「能動的サイバー防御法~サイバーセキュリティーの技術」について学ぶ勉強会を開催したほか、2026年3月8日、小樽商科大学の荻野富士夫名誉教授を講師にお招きして「スパイ防止法って何??」と題したシンポジウムを開催するなどしました。
また、日弁連は、2026年2月20日、「現在、「スパイ防止法」として制定に向けた動きのあるインテリジェンス機関強化法制及び外国代理人登録制度についての意見書」を発出し、インテリジェンス機関の監視権限とその行使について厳格な制限を定めることや、人権侵害の可能性や制度の必要性等について慎重な審議を行うことなどを求めています。
5 このように、「国家情報局」の創設や「スパイ防止法」の制定などの動きが加速する中、当本部としましては、日弁連とも連携して、これらの立法政策の危険性を広く市民に知らせる活動を強化していく所存です。
本年度も、当本部の活動に対しまして、皆様のご理解とご協力を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。
報 告
『「スパイ防止法」について考える院内学習会』開催される!
秘密保護法・共謀罪法対策本部 事務局長
四 橋 和 久
1 4月27日(月)衆議院第二議員会館において、日本弁護士連合会主催の「スパイ防止法」について考える院内学習会が開催されました。
この学習会は、国家情報会議法案が審議されている中で、今後、インテリジェンス機関の機能強化、外国代理人登録法制、対外情報庁創設といった「スパイ防止法」関連法案が制定される可能性が高いことから、「スパイ防止法」の問題点について考えるため、日弁連の秘密保護法・共謀罪法対策本部(以下「対策本部」といいます)が企画したものです。
2 吉澤宏治日弁連副会長の開会挨拶の後、齋藤裕対策本部長代行から、日弁連が提出した『「スパイ防止法」として制定に向けた動きのあるインテリジェンス機関強化法制及び外国代理人登録制度についての意見書』についての報告がありました(意見書の内容については、前号の対策本部ニュース参照)。
3 メインの講演として、共同通信社編集委員・元立命館大学客員教授の石井暁氏から、『「スパイ防止法」制定後の日本の情報機関 自衛隊秘密情報組織「別班」の実態から想定する』と題した講演がなされました。
石井氏は、ドラマでも話題になった「別班」は、自衛隊幹部が、首相や防衛相にも知らせず、独断で海外に拠点を設けて、身分を偽装した自衛官に情報活動をさせてきたことを説明して、国家情報会議が独断で、国会のチェックもなく、自衛隊が海外で情報活動するのは文民統制を逸脱すると指摘しました。「別班」に所属していた大半の自衛隊員は、別の人格を演じて、海外での違法活動をしていることから、精神的に壊れたことを述べて、情報活動する者への教育、訓練自体に人格破壊・洗脳の危険があることを問題視しました。
また、従前から、公安警察は、政治情報を中心に情報収集をしており、国家情報会議等が設置されると、時の政権の意向に従った情報収集がされるようになる恐れがあることも指摘しました。
4 石井氏の講演の後、海渡雄一対策本部副本部長から、『「スパイ防止法」制定に向けた法案整備の動き』についての報告がなされました。
国家情報会議法案の審議後、来年の通常国会では、外国代理人登録法案や対外情報庁設置法案の審議が見込まれるとのことです。海渡副本部長は、高市早苗首相が、国会答弁で「普通の市民」が調査対象になることは想定し難いと述べたが、身分を偽装しているスパイを知ろうとすれば市民の監視が強まること、外国代理人登録制度については、米英で恣意的とも思える運用が問題になった事例があることを報告されました。
続く石井氏と海渡副本部長とのディスカッションでは、石井氏から、「情報機関が強い国は暗い。暗い監視社会にしてはいけない。戦争をする国家にしてはいけない」との思いが述べられました。
5 本学習会には、国会議員7名が会場で参加され、オンライン参加も含めると200名を超える参加があり、「スパイ防止法」への関心の高さが窺われました。

