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報 告

今を『戦前』にしないために
           ~共謀罪・秘密保護法の危険性を考える~

秘密保護法・共謀罪法対策本部 委員  浮葉 遼

はじめに

 1月19日、東別院ホールにて、小樽商科大学名誉教授の荻野富士夫氏による講演と荻野氏、中谷雄二当対策本部副本部長による対談を行った。150人以上の市民が参加し、大盛況であった。

講演「よみがえる戦時体制」

 荻野氏からは、歴史学者の視点から、治安体制の過去と現在が語られた。

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 「戦争ができる国」の構築には、戦争に対する反対意見を抑圧・排除する仕組みが不可欠である。近代日本では、治安維持法を基軸とする重層的な治安立法(治安警察法・出版法令など)と特高警察・思想検察を主翼とする諸機構による治安体制がこの仕組みを担っていた。
 治安維持法は、制定当初こそ慎重に運用されていたものの、三・一五事件を契機に急速に拡張解釈されるようになった。また、憲兵によって反戦反軍思想の取り締まりが行われ、思想そのものが裁かれるようになった。
 この治安体制によって、戦争を批判する者は悪とされ、国民の表現の自由は抑圧された。1941年、太平洋戦争下では、国民の99%が「戦意」をもっていた。実際には、戦争に反対の人は一定数いたと考えられるが、彼らは戦争に対する批判を内心に留め、行動に移すことができない事態となっていた。
 これらは弁護士の活動にも影響を及ぼしており、治安維持法違反の裁判では、全面的に無罪を争うことは困難であった。せいぜい手続き的な要求をするか、情状酌量を求めるに留まらざるを得なかった。
 こうして近代の戦時体制は形成された。
 そして、現在、共謀罪法・秘密保護法が成立したことによって、再び表現の自由が抑圧され始めている。「戦争ができる国」が構築されつつある。

対談

 荻野氏と中谷副本部長との対談では、濵嶌将周委員がコーディネーターを務め、現在の戦時体制づくりにどのように抗うかが中心的なテーマとなった。

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 荻野氏は、現政権が標榜する「積極的平和主義」が「戦争ができる国」づくりであることを見抜かなければならないとし、そのためには国民が鈍感ではいけない、特高警察が担った役割など近代の戦時体制が形成された歴史を学ぶことが大切だと述べた。
 中谷副本部長は、秘密保護法成立後、情報公開請求によっても明らかに情報が開示されにくくなったことなど実務での体験を紹介した上で、不当な権力の行使に対して市民が「おかしい」と声を上げること、秘密保護法対策弁護団などの各弁護団組織が実際に機能できる体制を整備すること、政権寄りの報道を垂れ流すメディアに情報の流通を任すのでなく、市民が自分たちの情報を流すことのできる市民メディアを持つことを促した。

おわりに

 治安維持法と同様、共謀罪法・秘密保護法も拡張解釈されていき再び戦時体制が形成されるおそれがある。廃止を求めるのみならず、運用を限定させる運動にも力を入れなければならない。