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報 告

共謀罪の弁護活動に関する学習会

会員 本 多 朱 里

1 はじめに

 6月21日に、「共謀罪の弁護活動に関する学習会」が開催され、講師の海渡雄一弁護士(日弁連共謀罪対策本部副本部長)より、共謀罪法(組織犯罪処罰法)の問題点、共謀罪法下の弁護活動等について以下のお話しを頂きました。

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2 講演内容

 ⑴ 共謀罪法の問題点

 共謀罪法の主な問題点は、共謀の処罰は、法益侵害が発生していない段階での処罰となり、刑法体系の根幹を変えるものであること、プライバシー保護のための法的な仕組みや司法による厳しい監視、情報機関に対する監督措置等がなく、このまま同法を用いれば監視社会化が進むこと(国連プライバシー権特別報告者ジョゼフ・カナタチ氏の書簡参照)、である。

 ⑵ 共謀罪で立件させないために

 立件後の弁護活動を考える前に、立件させないための活動が必要である。
 具体的には、同法の廃止を求める活動の継続を通じて同法が悪法であることを国民に認識してもらうこと、同法で立件すれば法律の内容に通じた弁護士集団が待ち構えているという体制作り(現在も共謀罪対策弁護団が存在する)、全国の警察捜査の動向を調査し把握すること、等が必要となる。

 ⑶ 共謀罪法下の弁護活動

 組織犯罪処罰法の最初の適用事例は、暴力団や詐欺集団等で適用され「共謀罪は女性や子どもの安全に役立った」というキャンペーンが張られることが想定されるが、そのような場合であっても、現実に組織犯罪集団が繰り返していた既遂犯罪を立件すべきであり、共謀罪の問題点を指摘する必要がある。
 また、構成要件のうち「組織的犯罪集団」は明確に規定されていないため、今後適用例を注視する必要がある。
 また、組織犯罪処罰法6条の2の「準備行為が行われたとき」について、従来、日弁連は多くの刑事法学者らと同様、「条文構造上、かかる文言は処罰条件を示している」と主張してきたが、当該文言は構成要件であるとの見解を法務省が示した以上、弁護段階では当該文言が構成要件であることを前提に適用を狭くしていく方法を採らざるを得ない。

⑷ 警察捜査について

 現時点において共謀罪の適用事例は一度もないが、警察捜査が監視の域に踏み込むおそれは既に現実化している。具体的には、大分の選挙事務所の監視事案、市民活動家のパソコンを微罪で押収し事務所まで捜索した事案、憲法改正反対署名活動への警察の介入事案、市民の抗議活動に対する刑罰適用事案が挙げられる。

3 所感

 上で述べた以外にも、戦前から戦後にかけての日本や諸外国の刑事政策の動向の紹介があり、共謀罪法が持つ危険性についての理解が深まりました。