本日、いわゆる「共謀罪」規定を含む組織犯罪処罰法改正案(以下、「共謀罪法案」という)が衆院本会議で審議入りした。

 共謀罪法案については、表現の自由や思想・良心の自由を侵害する重大な危険性、捜査権の濫用のおそれ、国家権力が市民生活や団体の活動を監視する社会となりプライバシーを侵害する危険性などが指摘されて、日本弁護士連合会や各地の弁護士会、刑法や憲法の法学研究者の団体、日本ペンクラブ等の多くの団体から、制定に反対する声明、意見が出されていた。
 当会も、2015(平成27)年3月31日に『共謀罪の新設に反対する会長声明』、2017(平成29)年3月14日に『いわゆる「共謀罪」法案を国会に上程することに反対する会長声明』を出してきた。

 しかし、以下のように、指摘されてきた多くの問題点が残されたまま、共謀罪法案は審議入りされた。

 共謀罪の適用される主体が「テロリズム集団その他の組織的犯罪集団」と規定されている点は、正当な目的で活動していた集団であっても、性質が変わったと判断されると、「組織的犯罪集団」に該当することになるだけでなく、共謀罪法案第6条の2第2項によると、「テロリズム集団その他の組織的犯罪集団」に不正権益を得させる等の目的で計画をした場合は、計画をした者が「組織的犯罪集団」に所属していなくても共謀罪が成立することになる。

 政府は、「その計画に基づき資金又は物品の手配、関係場所の下見その他の計画をした犯罪を実行するための準備行為が行われた」ことを要することから、共謀罪ではなく準備罪であると説明したが、裏を返せば、ATMから預金を引き出す行為や日用品の購入、散歩等の日常的な行為であっても、計画に基づく準備行為とみなされれば逮捕されるということであり、捜査機関の判断次第で逮捕できることに変わりはない。また、捜査機関が、上記の日常的な行為が準備行為であることを証明するため、準備行為をした者の自白を強要する蓋然性が高まり、冤罪が発生する危険性も大である。

 共謀罪の対象犯罪を676の犯罪から277の犯罪に減らした点は、政府が以前、国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約(以下、「TOC条約」という)を締結するために、対象犯罪を減らすことはできないと説明していたことと、明らかに矛盾している。対象犯罪を減らすことに問題がないのであれば、共謀罪法案を新設しないでTOC条約を締結することも可能である。市民にとっては、刑罰の対象とされる犯罪が減るのではなく、新たに277もの共謀罪が新設されることになり、立法事実のない犯罪の新設を認めことはできない。

 TOC条約がテロ対策とは無関係であること、日本はテロ防止関連13条約を締結しており、既に充分なテロ対策がなされていることは従前の声明でも述べたが、TOC条約の制定過程において、日本政府がテロ行為をTOC条約の犯罪リストに加えることに反対していた事実も明らかになった。

 以上のように、共謀罪法案は、思想・良心の自由という基本的人権を侵害するおそれが極めて高く、捜査権の濫用を招き、冤罪を生むおそれも高く、テロ対策という名の下、政府が広く市民や団体を監視し、政府に反対する言論を封殺するものとなりかねない。

 よって、当会は、いわゆる「共謀罪」規定を含む組織犯罪処罰法改正案が国会審議によって廃案とされることを強く求める。

          2017(平成29)年4月6日

愛知県弁護士会 会長 池 田 桂 子